※幻臨
少しだけヤンデレ要素有り
サイケが天使では全然ない
「イザヤくん、大好き」
自分とそっくりな人間
自分と瓜ふたつな存在
ただ唯一違うのは、心と感情
「愛してる」
だから何度もその言葉を吐き気がする程に繰り返し言う。彼の顔が歪む度に、おれは楽しくて愉しくて、仕方がないのだ。
世界にただ確かな
「つがるね、すごくやさしいから心配してくれるの」
無邪気な笑顔を浮かべておれは喋りかける、返事が返って来ない事は分かりきっていたから例え目の前の彼が無言でも、おれはクスクスと笑いを零して俯く彼を見下ろし続けた。
「さびしくないか?食事はだいじょうぶか?…って。ほんとーに心配そうに」
室内は静か、自分の声だけが脳内に彼の鼓膜に浸透する。その心地好さに目を柔らかく細めて頬を撫で上げた。びくりと跳ねる肩を一瞥して屈み込む、だが彼の顔は俯いて見えない。魅了する赤茶けた瞳は床に伏せられたまま上がらない。
「そうやってあたま撫でてくれたり抱きしめてくれるの。なーにも知らないのに、知らないくせに眉なんかさげて」
徐々に声のトーンが下がる、楽しげに笑んでいた口角を吊り上げて頬に触れていた手を下へ移動させ顎を掴む。
「本当に……」
「……サイケ、もうやめろ」
俺が言いかけたところで少し枯れた、だが鼓膜を揺さ振る凛とした声が俯いていた彼の口から漏れた。俯いていた顔が上がり腫れた目が俺の瞳とかちあう。
「………あははっ。やっと顔を上げたね、“臨也君”」
視線が合わさった瞬間、胸が熱くなるのを感じる、段々と邪気のない笑みが剥がれ落ちて歪んだ笑みが顔を支配した。
「…津軽は本当にサイケを心配してるんだよ、そんな事を言うのは」
「あっははは!!何それ?もしかして臨也君、津軽でも庇ってるつもりなの?君が?人間を愛してるだの言って散々蔑み笑ってきた折原臨也がそんな事言うの?はは、あはははははっ…!傑作だねぇ、臨也君」
思わず笑いが込み上げる。先程彼が俺の言葉を遮った様に、馬鹿にするかの如く言葉を発する。普段の舌ったらずな声など嘘みたいに普段ならば彼が得意とするからかった様子でわざとらしげに名前を呼んだ。
「……っそれ、は」
「まあ、別にいいよ?臨也君が津軽を庇ったとこで今の君の現状が変わる訳じゃないからね。でもあんな馬鹿な連中庇うなんてやっぱり笑える話だよねぇ…だって」
掴んでいた顎を無理矢理引き寄せて至近距離まで顔を近付ける。何処か怯えを残した表情に気分が高揚した。続ける内容を知りえてか彼は視線を反らす。
ああ、本当に可愛いな。
「臨也君を監禁してる張本人が俺だっていうのにも気づかずに、俺が一人で大丈夫だとか!本当に見てて滑稽だよ。臨也君もそう思わない?」
「……………」
苦虫を噛み潰した表情で再び黙り込む彼。それは見慣れた光景、だからさして気にせず顎を掴んでいた手を離し更にその下、首に掛けられた首輪の鎖を弄ぶ。ガシャガシャと不規則に室内へと響く音に彼は深々と眉を寄せた。
「まただんまりかぁ…いいけどさ。俺は臨也君が手に入っただけで満足だし」
「……狂ってる」
「あれー?そんな事言っちゃう?まあそれはそうだよねーまさか自分で作った人間でもない俺にこんな事されちゃうなんて、思ってなかったって感じ?。でも仕方ないじゃん。俺は臨也君そのものだもん」
にっこりと笑顔を作って彼を蔑むのは、もう何度目になるのだろうか。そんな事気にならない位に顔を近づけた。世間様は12時を回る頃か、眉を寄せ顔を反らす彼の表情を一瞥して唇を寄せる。
「サイ、ケ……」
小さく開いた口から自分を呼ぶ声が鼓膜に響いた。
―――なんて気持ちがいいのだろうか。
「あいしてるよ、イザヤ君」
二つの影が、重なった。
end
(いつまでも、ずっと)後書きったー
サイケじゃない(笑)色々すみません。少し反省して来ます