「…だから俺は、シズちゃんが大嫌いなんだ」

目の前の男は吐き捨てる様に言う。
皮肉めいた笑顔を満面に浮かばせて、挑発的にその言葉を吐く。
虫ずが走る。
俺だっておまえなんて殺したい。
今すぐにその息の根を止めて、目の前から、いやこの世界から抹消したい。
こんな奴が生きてた所で、世の中最悪だ。つーか此奴が居なくなる事で大半の人間が救われるだろう。そうだ。きっとそうだ。絶対に。

何時もの様に側に設置されたコンビニのごみ箱を片手で引き抜くと(地面に止められていたから)彼奴目掛けて投げる。
だけどもそれ又何時もの様に彼奴はた易く避けると飄々とした面持ちで、この場から逃げる。

逃げる。
追う。
逃げる。
追う。

まるで堂々巡り。
ああ、うぜえ。本当にうぜえ。

路地裏を曲がった所で、彼奴の後ろ姿を見付けた。折原臨也は逃げる事もせずに、背中を向けて立っていた。
ああ、これはもう後ろから殴ってもいいって事だよな?そうだよな?
此処で殺せるなら、うざってえ野次馬も居ねえ事だし好都合だ。正に一石二鳥。
それでもって此処で此奴を葬りされば、再び会って俺の機嫌が悪くなる事もない。

だって俺はー……



「……だからさ、俺は」

不意に彼奴の声が静かな路地裏に響く。
そして嫌な笑顔を張り付かせた顔を、ゆっくりと、振り向かせた。

「シズちゃんが大嫌い、なんだよねえ」




「だって、シズちゃんは俺の事を殺したい程憎んでるんだろ?」

ああ、胸糞悪い。

「…なのに、毎回君は俺を見つける」

煩い。

「どんなに遠くに居ても、視界の隅に入りさえすれば追いかけて来る。殺したい程憎んでるのなら寧ろ無視でもすればいいのに…、」

ムカつく。

「だからさ、俺はシズちゃんの事が大嫌いで――…」



殴りたい。
でも何で俺は止まってるんだろうか。
まるで一時停止した機械の様に、呼吸以外、瞬き以外、まるで動こうとしない。
此奴の言動を理解しそうで、理解したら自分さえ憎んでしまいそうだから。だから、俺の身体は本能的に動かない。

そして彼奴はニコリと笑った。
まるで全てを見透かす様に。


ああ、殺したい。

「大好きなんだよねえ…」





俺は「大嫌い」だ。





から俺は君が嫌いだ
(そんな君も大好きだよ)





何かよく分からないです(笑)



(だから君が嫌いだ)
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