『拝啓、こんにちは。手紙を差し上げるのは初めてですね。直接だと又殴られそうなので今回は手紙に納めました。実を言うと貴方様に大切なお話があるのです。今まで隠していたのですが私は』





「…貴方の事が好きなんです、よし。我ながら完璧完璧、敬具っと…」

「あのさー…」

「く、ふふふふ…っこれ見たらシズちゃんどんな反応するかな。楽しみだなぁ楽しみだなぁ楽しみだなぁ」

「…はあ、臨也ー?」

「ん?なに、新羅?」


やたらニヤニヤとした笑みと不気味な笑いを零す見た目は眉目秀麗とも言える青年、今はただの変質者―折原臨也を眼鏡のブリッジを指で上げながら呆れた様に岸谷新羅は声を掛けた。
つい先刻、学校帰りその侭押しかけた臨也は途中でコンビニに寄った際に買ったシンプルなレターセットと新羅の家にあったボールペンを取ると、机上に広げて一人何やら書き始めて今の状況になる。


「なにやってんの」

「シズちゃんへのラブレター」

「ぶふっ」

「うわっ、汚いなぁ」


聞きたくもなかったが取り敢えず聞いてみれば薄ら笑いで返された言葉に新羅は飲んでいた麦茶を盛大に吹き出して噎せた。
そんな新羅を臨也は横目で見ては眉根を下げて溜め息をつく。
いやいや、その反応は間違ってる


「なんでそんなもの…」

「からかう為に決まってるじゃないか、別に好きで書いてる訳じゃないからね」

「自宅で書けばいいのに」


帰れ、と言いそうになるのをなんとか押さえ込んでも遠回しにそれに似た言葉を新羅が紡げば「家だと妹達が、ね」と臨也は返した。
そして書き終えたそれを丁寧に折り畳みレターセットに付いていた同じ色合いの封筒に入れ込み笑みを深める。


「どんな反応するかな」

「…うん、間違いなく臨也は殺されるね。今までありがとう。ちゃんと成仏してくれよ」

「あはは、最初に新羅を呪い殺してやるよ」

「僕はセルティという名の嫁がいるから無理だな。遠慮する」

「新羅の妄想って時々痛いよね」


ずきり、と何か突き刺さった気がした新羅は深々と溜め息をついた。
そして暫しの間を置いた後いつになく真剣な表情で臨也を見る、正確には封筒を。


「まあ、その話は置いといて。流石にそれは洒落にならないからやめといた方がいいと思うよ。これ忠告」

「は?なんで?」

「臨也の為を思って言ってるんだからね。後、理由は俺の口から言えないなぁ」

「なにそれ…」


訝しげに見てくる臨也の視線を無視して新羅はもう一人の友人の姿を思い浮かべて何度目かの溜め息を吐いた。
―気付いてないのは本人達だけか。いや臨也だけなのかな。

そこで壁に立て掛けた時計を見上げ時刻を確認する。


「さて、もうそろそ帰る時間だよー」

「未だ理由が」

「はいはい、片付け片付け。そろそろ愛しのセルティが帰ってくるんだ。私とセルティの愛の時間に臨也は」

「邪魔だと言いたいんだろう、ホント友達なくすよ、君」

「あははは、臨也に言われたくない」


急かすように臨也の鞄を持ち上げて向ければ気に食わなさそうに顔を顰る。そんな臨也のことは全く気にせずに腕を掴んで無理矢理立ち上がらせては鞄を持たせた。


「はあ、分かった。帰ればいいんでしょー帰れば」

「そうそう、玄関行った行った」

「…絶対友達なくすタイプだ」

「ああ、言っとくけどホントにさっきの手軽を静雄に渡さない方がいいからね?友達の誼みで言ってるんだからちゃんと聞くことー」


はいはーい、と気怠げに返される返事からはちゃんと分かってるのかと思いながらも臨也を漸く玄関まで追いやれば新羅は胸を撫で下ろす。
少しだけ経ってからガチャンと音がすると同時に臨也は外に出た。


「じゃあね、」
「うん」


それだけ告げられて一言だけ返事を返せばドアがまた音を響かせて閉じるのを確認して新羅はリビングに戻る。
黒生地のソファに座り込み随分前に入れた珈琲のカップを手に取り喉に流し込めば生暖かい苦味が咥内に広がった。
そして困った様に笑みを浮かべる。


「あれじゃ、絶対渡すよなあ。どうなることか…」


心配でもない、他人事のようで、でも何処か楽しむように新羅は呟いた。あの仲の悪い関係がどう壊れるか、楽しみじゃないと言えば嘘になる。
丁度珈琲カップを机上に戻したとこで再び玄関からドアが開く音がした。

新羅は表情に笑みを深々と刻んだ。




「おかえり、セルティ!」






啓、この手紙
(どうなったかはまた別のお話、)





end

静雄が出ないとかいう(笑)
途中から文章が死んだ



(拝啓、この手紙)
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