表現が15R
限りなく静臨でモブ×臨也。ただ静臨メインなのでモブが空気。臨也が少しスレており静雄は誰これクオリティー化で注意抵抗しなければ
殴られることもない
視界を閉じれば
嫌な笑みをみなくて済む
息をしなければ
早くこの地獄から救われるのか、
粘着質な音が響く、全くもって耳障りであると遮断された真っ暗な視界で折原臨也は思った。両手は本来この様な事での使用はお断りしている学生服のネクタイできつく縛られており、少し動けば痛みが自分を締め付ける。
勿論それは、普段から学ランとアンダーシャツを着込む臨也のネクタイではなく、今正に臨也の上に跨がっているであろう相手のもの。曖昧なのは随分前から臨也は瞼をきつく閉じているから。
慣れっこだった。
一言で言えばそんなもん。
初めて襲われたのは確か中学生の頃。遅い時刻の下校時に襲われた。それからは数えてない、数えるだけ無駄だし、数えるのに時間を費やすのは不愉快窮まりない。
行為が終われば直ぐに忘れたかったから。それでも数は減らない、分かった事は自分の顔が男受けする事と無駄な抵抗をすれば相手を興奮させるし殴られる。どうせ回避が出来ないなら無意味な怪我は作りたくない。
だから最中は声を押し殺して、瞼を閉じて、ただ時が過ぎるのを待つだけ。
何れ終わる、と。
だけど、身体では分かっていても、心がどんどん廃れて行く落としたパズルの様に、ピースがボロボロと落ちる、落ちる、なくなる迄。
――…だから"個人"は嫌いだよ
それでも廃れてゆく心は見られない様に笑みを張り付けさせる。そうしたら中学から本当の笑顔を忘れた。笑おうと思えば笑えるのに、自然に笑みを零す事がなくなった。
ああ、壊れてるんだなと自嘲気味に笑った笑顔も作り物。
でも、高校に入った時
中学の頃から知り合いであった岸谷新羅に紹介された男、そいつと対面した時に、言葉を交えた時に、心の中で何かが弾けた。
逃げて嵌めて騙して、それでも理屈の通じない男を見て、何年振りかの笑顔が、自然と零れた。
その感情が何か分からなかったけど。
そんな充実とは呼べない日常生活を過ごす内にいつの間にか忘れていたんだ。危機管理を。
普段は新羅かドタチンと一緒に帰る放課後、だが何と無く二人を待つ事なく教室を出た。早道だと思い突っ切った人気のない体育倉庫の裏。急に引かれた腕、重力に逆らう様に俺の身体は後ろに倒れた。強かに打ち付ける背中に痛みが走り短い呻きが漏れる。状況を把握する前にヒュルッと何かが風を切る音がして手を一まとめにされた。
中学を卒業して依頼の懐かしいとは決して言いたくない感覚が心を蠢いた。それでも不自然な事に心臓が激しく脈打つ事も恐怖を感じる事もなかった。
ああ、またか。
その感情だけは何も変わらなかった。
分かってる
助けなんてない
そんな期待は持ち合わせてない
きっと体格じゃ敵わないし、瞼を閉じる前に見えた相手の顔は同級生のものでもなかった。きっと三年生だろう。
だからやっぱり無意味な抵抗はしない
筈だった、のに
何でだろう
何でだろう
身体に触れる男の手は相変わらず気持ち悪いもので耳から聞こえる荒い声は耳障りで、でも慣れてる筈なのに、
ドクンドクン、と今になって胸が騒ぎ立てる。吐きそうになるのを必死に堪えながらも頭の中には一人の人物が思い浮かんで涙が出そうになった。
おかしい、おかしいよ。
嫌な気持ちなのはいつも変わらない筈なのに、それ以上に嫌悪と後悔と涙が沸き上がる。
「シ…ズちゃ…、」
ああ、そっか。
俺
――…シズちゃんが好きなんだ
カチャリ、と響く金属音に自分でも驚く程にびくんと大きく身体が跳ねた。嫌な汗が全身を駆け巡る。身体が抵抗しようとする、まるで初めて襲われた時みたいに。
無駄だと分かってるのに、もう自分は汚いと思ってるのに馬鹿みたいに抵抗した。今まで大人しかった俺が急に暴れた事で多少慌てた相手の腹部を足で蹴りあげようとして思い切り顔を殴られる。咥内に広がる鉄の味に眉が自然と寄る。
なにか言ってたがそんな事は関係ない、ただ、これ以上汚れたくなかった。
だけどやっぱりそれは無駄な抵抗で、元から体育会系ではない俺の身体を男は力で押さえ付ける。骨が軋む感覚。
ひたりと男の熱いモノが後ろに宛がわれた。情けない事に涙が目尻に溜まっていてキツク瞼を閉じる。
ホント、馬鹿みた――――
「臨也ァ!!」
鼓膜に響き渡るよく知る声。
思った言葉が掻き消され、慌てる男などには目を向けず、声の発せられた方向を見た。
そんな馬鹿な事、ある訳ない。
なのに、そこに居た。
息を荒げてそこに居た。
一番来て欲しくて、一番来て欲しくない平和島静雄の姿が。
「なん、で……」
ぼつりと言葉が漏れた。
やばいと感じて逃げる男の姿等、もう茅の外でただ逃げる男を急いで追おうとするシズちゃんの足にしがみつき、それを阻止する。咄嗟にそうした。
「……、っ!てめ、逃げ」
「いいから!捕まえなくて!!」
俺がしがみついた事で捕まえに行けなくなった状況にシズちゃんは怒鳴ろうとしたが、それよりも先に俺は声を荒げていた。自分でもびっくりする程に。
失望したかな
いや、そうだよね
男に襲われてる男なんて
しかも捕まえなくていいだなんて
――…きっと呆れてる
だけどシズちゃんは、俺が考えてる事とは真逆な行動を取った。
ほぼ着てるとは思えない肩にシズちゃんのと思われるブレザーが掛けられ、ふんわりと頭に置かれる手。
その瞬間、なにかがはち切れた様に浮かべてはいたものの決して流さなかった涙が壊れた様に溢れ出した。
なん、で…
言葉が反芻する。
「…手前、新羅から着信あったろ」
そんな俺に気付いたかは知らないがシズちゃんは一言そう言う。そう言えば確かに襲われる手前に着信が鳴った、出る間もなく押し倒されたから新羅からかは分からなかったけど。
ふと周りを見れば無造作に放置された携帯があり、シズちゃんがそれを引き寄せて携帯のディスプレイに目を落とす。
つられる様に見れば通話中の文字が映し出されていて口を閉口させる俺をシズちゃんは一瞥してから携帯を耳に押し当てた。
「…新羅だよな?俺だ。ああ、大丈夫…とは言えねぇが、そんじゃこのまんま手前ん家行くから家で待ってろ」
人の携帯で話をする様子を眺めながら、涙は未だ溢れてるが徐々に冷静になる頭で状況を理解する。
つまりは、襲われたあの時、新羅からの着信を出てしまったらしく、新羅は携帯越しから聞こえてくる尋常ではない事に驚き、力の強いシズちゃんに俺を探して貰ったって訳か。
なんでよりによってシズちゃんに…
別に助けなんて
「……悪かったな」
意味が分からない謝罪に俯き加減だった顔を上げてシズちゃんを見る。なんで謝るの?なんでなんでなんで?
馬鹿みたいに息切らして顔だって暑さからか赤くなってる。俺を見つける為に学校中捜したんだって分かる程に。
そうしたら嗚咽と共に口が開く
「…意味、わかんないよ…っなんでシズちゃんが謝んの?君は悪くないのにさぁ…なんで俺なんか助けたんだ…よ、殺したい程憎いなら!見捨てても良かったのに、さ…!」
違う
違う違う
こんな事言いたくなんかないのに
ホントはホントは、
ホントは、―――助けてくれた事が嬉しかった。だから涙が出た。
だけどそんな事言える筈もない、それならいっそ嫌われて、また普段の日常を過ごせばいい、甘えてた。
それなのに
それなのになんでさ、
なんでシズちゃんは俺の事抱きしめてんの?なんで泣きそうな顔をしてんの?
全然わかんないよ…
「……悪い」
「……」
「俺、さ…手前が好きだ…」
「…」
「だから、早く助けられなくて苛立った。だから謝った」
「なに、それ…」
強く抱きしめられたまま、シズちゃんの声が頭に響く。彼が俺を好きだったなんて初めて知った事実。零れたのは自嘲気味に零れた笑顔、だけど作ったものじゃない。自然に出た表情。
そして少し離れたシズちゃんは、先刻殴られて赤く腫れた俺の頬に手を宛てた。
「…これからは、ちゃんと守っから」
なんで、今日はそんなに優しいの?
「ば、か…バカ、シズちゃんなんて大、嫌いだから…俺が汚いの、全然分かってないから言えるんだよ…」
そう言ってもシズちゃんはただ頭を撫でた。更に溢れる涙が恨めしい。抱きしめ返したいのに返せない自分が馬鹿馬鹿しい。
それなのに何だか優しいシズちゃんは俺の事をギュッと抱きしめてへらりと笑った。
「汚くねぇよ…バーカ」
そして唐突に唇に触れた生暖かい感触に、俺はゆっくり目を閉じる、
今だけは甘えてやるよ
本当はずっとずっと
――助けて欲しかった
本当はずっとずっと
――普通の愛が欲しかった
ずっとずっと
君が好きだった。
でも言ってやんないよ、バーカ
助けて欲しかった(…だがアイツはぶん殴る)
(あはは、シズちゃんこわーい)
(手前の変わり様が怖えよ)
end
--後書き--
最後のこのgbgb感…なにも考えてないのがお分かりでしょうね(笑)シズちゃんが無駄に優しい。