甘やかされる
「わぁ!」 心から喜びの声を上げれば、目の前の男は満足げな顔をした。 「気に召したか?」 「はい!とってもっ。」 そう言って、箱の中のキラキラとしたソレを手にした。 私への贈り物を携えてやってきたのは、ホグワーツの理事を務めているルシウス・マルフォイ氏。彼は私の大好きな先輩の旦那様でもある。
「いいんですか?こんなに?」 「かまわん。だいたい、お前が強請ったのではないか。」 「だって本当に持ってきてくれるなんて思ってなかったんですもん。ナルシッサさんに怒られません?」 「まさか。ソレはナルシッサも一緒に選んだからな。問題ない。」 そう言い切った彼に、お礼にと紅茶を差し出せば「ああ、いい香りだ。」と優しく言った。
「しかし、お前ももの好きだな。」 「そんなことないですよ。世の女性の贈り物には最適です。保証します。」 「・・・もう少し色気があってもいいと思うがな、」 「そんなもの何の役に立つんですか?」 フン、と笑えば彼は肩をすくめた。 「ナルシッサが、まだお前は独り身なのか、とぼやいていたぞ。」 そう言われて、私は大好きな先輩の顔を思い浮かべる。 ナルシッサさんは、私の面倒をよく見てくれた。家柄的には明らかにスリザリンの中でも下の方である私にも、優しくしてくれた。 「この年になると、そういう話題を振られても笑い飛ばせませんよね。」 「ほぅ。その気があるのか?それならナルシッサが張り切って仲介役をするぞ?」 「いえ、丁重にお断りしますよ。っていうか、私より先に真っ黒々なお方が先でしょ。」
真っ黒くろ?と、一瞬考えたルシウスはすぐに「ああ、」と理解したらしい。 流石ルシウス先輩。 「セブルスには話をするだけ無駄と言うものだ。」 「諦めるの早いですよ。」 私はそう言いながら、贈り物を物色した。
「いっそのこと、テオ。お前がセブルスにけしかけてはどうだ?」 「はひ?」 「なかなか良いコンビではないか。嫌いではないのだろう?」 「待て待て。なんでそんな話になってるんですか?」 ギョッ、としてルシウス先輩を見れば優雅な微笑みを浮かべて「ん?何か問題でもあるのか?」とでも言いたそう。 いやいや、問題ありまくりですけど。 「スネイプ先輩は、珍種の薬草と美女だったら迷わず薬草を取るような男ですよ!?」 「・・・だろうな、」 「私がけしかけて効果ないです。っていうか、私もスネイプ先輩相手に誘惑する気置きません。」 そうきっぱり言えば、「お前もセブルスにしてみれば充分珍獣だろうに。」と失礼な言葉を吐いた。 誰が珍獣だ。こんな立派なレディに向かって。・・・いや、レディってほど若くないか。
「では参考までに聞くが、お前はどんな男ならyesと言うのだ?」 家に帰ったら、ナルシッサと二人で探してみよう。と、ルシウス先輩は本気かどうかも分からないセリフで私を宥めようとする。 「若いころは、外見も重視してましたけど・・・・やっぱり年取ると中身ですよね。」 「と、いうと?」 「賢くて、頼り甲斐があって、紳士で、」 「欲張りだな。」 「女なんてみんなそんなものですよ。あとは、」 まだあるのか。と、苦笑するルシウス先輩に私は笑った。
「一緒にいて、落ち着く人がいいです。」
その言葉にルシウスが「それはテオの感覚だろうな。」と呟いて「まぁ、探してみよう。よさそうなのがいたら会ってみればいい。」と本気だか冗談だかわからないことを言った。 全寮制のホグワーツで働いている以上、出会いもない私。 良い機会かもしれないな、とあまり期待しないでルシウス先輩に「お願いします。変なの連れてこないでくださいよ。」と頷いておいた。 ルシウス先輩はゆっくり立ち上がる。 「もう帰るんですか?もう少しすれば授業終わりますから、スネイプ先輩も空き時間ですよ?」 「いや、今日は食い意地の張った後輩にケーキを届けに来ただけだからな。」 そう言って、ルシウスは箱一派に詰められたフルーツタルトを一瞥して笑った。 久しぶりに会ったのだから、もう少しゆっくりしていけばいいのに、と思っていればポン、と頭を撫でられる。 「そんな顔をするな。次に来るときはケーキと一緒に見合い写真でも持ってくる。」 「・・・・ナルシッサ先輩にも会いたいです。」 「検討しておこう。」 いつもの少し意地悪な笑みを浮かべた彼は「では」と言って店を出て行ったのだった。
部屋に残された私と、大量のケーキ。 一人じゃとてもじゃないけど食べられないから、夕方にハーミーちゃんが勉強しにきたらおすそ分けしてあげようっと。
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