幼少期編


いつもと変わらないナマエにそんな場合じゃないだろうと言おうとした瞬間、俺よりも先に口を開いた。


「クソガキの知り合いでも女でもなんでもいいさ。おいクソガキ!彼女だというこの女に助けてもらっても構わないんだぜ」
「っ!!ナマエは関係ない!!」
「最初はマリアムでももうそろそろ酒代くらいの客は取れると思ったが、ちゃんとした女がいるなら話は別だ。テメェの女ならその親である俺がどう扱おうと関係ないだろ。スラムに居るってことは娼婦でもしてるって事だろうしな」


そう言った時からはっきり言えば理性はもうなかった。
こんな奴にマリアムなんか合わせるわけにもいかないと、それにナマエにだって!
ただ気が付けば、腰に刺さっていたナイフを手に走り出して、目の前にいる親父に向かっていた。
叫び声を上げながら刺した先には大量の血を流しているナマエの掌と、貫通して横っ腹から血を流す腰を抜かしている親父の姿だった。


カシム視点終了―



「あ、ああ……ああぁぁぁ」
「落ち着きなさいなカシム君。まったく、せっかくヒーローが来たのに放置するとかやめてもらいたいんだけど」


混乱し、血の付いたナイフを握ったまま後ろに下がるカシムに声を掛けるナマエだが、カシムの耳にはナマエの声は届いていない。


「……なぁカシムよ。テメェは俺に似て、最低のクズヤローだな」


カシムの耳に周りの音が聞こえたのはカシム父が言った言葉だった。
その言葉に脅え、震えるカシムに近寄ろうとするカシム父にナマエは差していた木刀をのど元に突きつけて静止を促した。


「やめてくれませんかね、カシムに近寄るの。後、あんたは人にとやかく言えるような人間ですか?ダメ人間はダメ人間でもどこぞの天パのがマシだっつーの。カシムがあんたに似てるだなんてどこ見て言ってるんだか。カシムは自分の大切な人間を金の道具になんかしねぇよ」
「……ナマエ」


涙目になりながらカシムは必死に泣くのを押え、ナマエを見つめ、ナマエの言葉を聞いていた。


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