彼女の事情



ここは、のどかな公園の一角。

「・・・・・はぁ」
「なんですか鉢屋さん、見て早々に溜息何て失礼にも程があります」
「溜息も吐きたくなるだろ」
「そうでしょうか?」
「名前ってさぁ、何でそういつも昼飯忘れて無いんだよ」
「別に忘れて何ていませんけど」
「へぇ、じゃぁ何で昼飯時に食べるものが何一つなくて、お腹を鳴らすんだ?」
「今日に関してだけではありませんが、逃れられない事情があるんですよ」
「何だよそれ」
「それは・・・・・別に何だっていいじゃないですか。鉢屋さんにいう事でもありません」
「・・・・・んだよ、心配してんだろうが」
「は?何か言いましたか?」
「どうせ財布でも忘れたんだろって言ったんだよ!」
「なんで急に怒られなければならないのか分かりませんが、財布はいつも持っていませんよ」
「・・・・・忘れたんだろ」
「違います。小銭があります」
「財布ないのにか?」
「財布はなくても小銭は持てるでしょ?ほら、現ナマで持ち歩いています」
「名前も女なら、お金は財布に入れろ!!」
「だって財布って場所取るので邪魔で仕方がないんですよね。特に女性の服ってポケット小さいし」
「もういい。で、昼飯は何でなくなるんだよ」
「知りません。私が寝ている間に高確率で消えています」
「誰に」
「起きた時には誰もいませんよ。不思議ですね」

そういいながら寄り添うように寝ている犬たちを撫でている手元に視線を向ける名前だが、三郎は口元を引き攣らせて、余分に持っていたパンを無理矢理渡すと用事があるからと言って帰って行った。



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「おい、ハチ!!」
「んぁ?おー、三郎どうした?飼育小屋に来るなんて珍しいな」
「どうした?じゃねぇよ!」
「なんだよ、何怒ってんだよ」
「うるさい!それよりも、お前の世話している犬達はどうしてる」
「元気だ!」
「そうじゃない!変わったことはないか?あ〜、食事とか」
「食事とかね、変わったことかぁ、んん〜?あ、最近何故か太ってきている気がするんだよなぁ。食事量変わってないのに」
「(やっぱりか)・・・・・はぁ」
「なんで三郎が知ってんだ?」
「うるさい。ちゃんと躾とかしとけバカ!!」
「なんかわかんねぇけど、悪かったな」

そういって顔を伏せた三郎を困ったように頭をボリボリ掻きながら見つめている八左衛門がいた。


(END)
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