ハロウィンは恐怖?



10月中旬も終わり、下旬に入ったといってもいいこのごろ。
名前の機嫌は最高によかった。
ここ数日見ただけだけど、はっきり言えば恐い。
嬉しそうに黙々と黒い布を縫っているようだけど、それにしては嬉しすぎる。
随分前になるが、家庭科の授業の時だってそうだった。

裁縫の授業とか俺には固っ苦しくて、いつもみたいにサボろうとしていたところを名前に見つかって、そしたら何の憂さ晴らしか知らないけど嫌な笑みを浮かべた似非優等生に腕を捕まれてそのまま家庭科室へと連れて行かれた。

そこで見たものは、何でこんなものを作らないととか言いながら、明らかに不機嫌なオーラを撒き散らしている姿で、名前の周りには人が居なかったのを覚えているのは最近の出来事だ。
そのくらい裁縫が嫌いだと思っていた俺は、あの時の考えが間違いだったのではと思うほどだった

何をしているのかは首を突っ込まないほうが身のためと思って、遠巻きに観察っぽい事をしているのだが、11月に近づくに連れてやはり名前の機嫌はどんどんよくなり、逆に似非優等生の溜息が多くなった。

それだけなら、放っておいてもよかったのだが、名前と仲がよかった男子が慌てて相談しているのを視界に捕らえてしまった。
何が起きようとしているのか、今の俺には理解が出来ない。

そして、理解しないといけない日が来た。

それは10月30日の昼休みのときだった。

多少真面目になった俺でも、やっぱりどこか息抜きが欲しくって屋上でサボっていたら扉が開いて、どうでもよかったが、誰だと思って視線を向けるとそこに居たのは似非優等生とバンド男と外人だった。

名前と結構仲がよくて、有名な3人でもある彼等が集まるなんて珍しいと思って数秒だが見ていると、俺の視線に気付いたように目が会って少し驚いた顔をしていた。


「お前、またサボりかよ」


呆れたようにいう似非優等生の言葉に少しイラつきながら、関係ないだろうと返せば、隣に居た外人が、僕等も今は似たようなもんやでと宥めている。


「・・・・・なぁ」
「あ?」


ずっと黙っていたバンド男が何かを決意したみたいな顔つきで俺に喋りかけてきたから、適当に言葉を返そうと思って返事をしていた。


「お前さ、余裕そうだな」


彼の言葉に何がと思ったけど、もうすぐテストが迫ってきているのを思い出して俺には関係ないと言葉を返すと、正気なのかと大袈裟に俺へと近寄ってきて言葉をもらした。


「関係ないわけないだろ!」
「せやで、君も名前と仲ええんやから」
「もしかして天童・・・・・お前もう用意しているのか?」


バンド男、外人、似非優等生の順に攻められるように言われた言葉に引っ掛かりが見えた。


「なんだよ、用意とか・・・・・」


そう呟いた言葉に、信じられないという顔を惜しみもなく出した3人に殴りたい衝動に駆られたのは間違いではないと思う。


「お前、もしかして忘れているのか?」
「あんなに毎日俺の横で嬉しそうに服を作って、準備万端の名前の姿を見て」
「日本にはそんなに習慣になってないからやろか?」
「な、何がだよ」
「仕方がないオレ様とお前はそこまで仲がよくないが、今は同士だ!危険な目に合いそうな奴が目の前にいて、手を差し出さないのは男として最低だからな」
「まぁ、俺に被害がきても困るし」
「だから、何がだって」


それはな、と真剣な顔つきで一歩俺に近寄って、唾を飲み込んだ彼を見て俺も言葉を発しにくくなった。
そして、そんな緊迫した中で一言だけ言葉を発した。


「明日は何の日か知っているか」


と、真剣に発した。

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