誓いをかわそう

「お嬢ちゃん、俺と組まないか?」

「何言ってるんですか」

ブーメランを構えた田舎臭い男が私に話しかける。

一応貴族出身の私は、ハイヒールをカツリと鳴らして鼻で笑った。

「あと、貴方は誰なの」

少しだけ興味の湧いた私は、ブーメランを構えた男に聞く。

すると男は、待ってましたと言わんばかりに片眉をつり上げた。

「俺はキャプテンブーメランさ」

ふわ、と風が吹いた。
私は、聞き返す。

「キャプテン、ブーメラン……?」

「ああ」

もう1度吹いた風で、ドレスの裾が翻るのと同時に、ふふ、と思わず吹き出す。
いくらなんでも安直すぎる、そんな名前。

「なんで笑うんだよ」

すこし肩を竦めた彼。
まるでユニコーンの様な……とは言い過ぎだが、その姿が少し可愛らしくみえた。

「いや、少しストレートな名前だと思って」

私は、腰に手を当ててブーメランを見る。
するとブーメランは思い出したように私の名前を聞く。

「ああそうだ、お嬢ちゃん、お名前は?」

「私?私はね、クロワッサン」

私が名前を言っている間、ブーメランは私の腰にあるサブマシンガンを見て、「こりゃ随分エグいものを……」とぼやいていた。

やっぱり可愛げがある人だ。
そう思って、3歩彼に近づいて、彼のかさついた唇に指を這わせた。

「貴方と組んでもいいかもしれない」

彼の透き通った目は、私の唇の動きを見つめていた。

彼は、「さあ、契約しようぜ、クロワッサン」と言った。

私の指は彼の唇から離れ、頬を沿うように彼の顔を固定する。

目と目が合った。

ビリと衝撃が走る。
これはもしかしたら、運命の出会いなのかも知れないと思わせるような電撃。

「契約、成立ね、ブーメラン」

私は、ブーメランの額にゆっくりと唇を落とした。

柔らかい風が、2人の髪を揺らしていた。

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