午睡の憂鬱/郭嘉 1/2


「たまには外で昼寝というのも良いものだね」

 今日は雲一つない快晴、気持ちの良い風は木々や草を揺らす。絶好の昼寝日和に微睡む。

「はぁ……こんな所で寝て……。風邪引いても知りませんよー?」

 不意に聞こえてくる心地の良い彼女の声。確認のために起き上がると、なまえは居た。

「よかった、夢じゃなかったみたいだ」
「寝ぼけてますね……夢じゃないですよ。……それで、何でこんな所で寝ているんですか?」
「今日は天気が良いものだから、ついふらふらと、ね。と、いうわけで、なまえも一緒にどうかな? とても気持ち良いよ」
「……昼寝を、ですか? いえその前に、というわけってどういうわけですか!」
「あなたと一緒なら良い夢が見られそうだからね」

 質問は気にしないことにして、彼女に手を差し出す。

「さぁ、おいで」
「え!? ……えっと……そ、それじゃあ……」

 そっと手と手が重なる。と、その瞬間に手を引っ張り、なまえの体を腕の中に納め、そのまま草の上に寝転がる。

「えっ? えぇ!?」
「うん、やっぱりいいね。これは良い夢が見られそうだ」
「〜〜っ!?」

 なまえは顔を真っ赤にして、声にならない声を上げている。だが。

「抵抗しないということは、そういうことでいいのかな?」

 今度は何か言いたそうに口をパクパクさせているが、相変わらず顔は真っ赤で、声は出ていない。

「本当になまえは……可愛らしい人だ」

 そう言うと、諦めたのか、それとも真っ赤になった顔を隠したいのか、私の体に顔を埋めてしまった。
 だが、赤くなった耳までは隠せない。
 これ以上何かを言うと逃げてしまいそうなので、ただなまえを抱きしめながら、髪を撫でる。
 私の心臓の音が、聞かれていないといいけれど。


 そして数時間後──


「……落ち着いたのは良いことなのだろうけど……」

 なまえは規則正しい寝息をたてていた。これは信頼されていると喜ぶべきなのか、男として見られていないと悲しむべきなのか。それとも心臓の音を聞かれずに済んだと思うべきなのか。
 どれにしても……。

「私は……全く寝られなかったのだけど、ね……」

 さすがに意中の女性を抱きしめたまま、寝られるはずもなかった。

「でも、良い夢は見られたかな?」

 彼女を抱きしめることが出来た。彼女の温もりを、感じることが出来た。
 だから起こさないように、でも伝わるように。なまえの耳元で囁く。

「幸せな夢を、ありがとう」


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