アリスドラッグ | ナノ


▼ 少しだけ、見えてくる5


――ジジジジジ



「……!」



突然、目の前に逆さまの少年の顔があって、椛は心臓がとまるくらいに驚いた。

どういう状況だ、と思えば、仰向けに寝ている自分を、少年――いや、自分が覗きこんでいるらしい。

血塗れの顔、潰れた片目、手に持ったナイフ。

殺される――そう直感した。



「生キル、ツモリ?」



「え……?」






へら、と笑った彼は、正気ではない。

ぞく、と悪寒が体を貫いたが、椛は唾をのみ、答えてみせる。



「……苦しくても、生きます。彼と一緒に」



彼はしばらくぼーっと椛を見つめる。

やがて……なぜか、シャツを脱ぎ始めた。

わけがわからず、椛がその様子をみていたが……あらわになった、その肌をみて悲鳴をあげそうになった。



「……夢ヲミテイレバ良カッタノニ」





その体には、おびただしい数の傷があった。





――ジジジジジ








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