きみとの時間7


「ん……」


 ふと波折が目を覚ますと、身体が布団に包まれていた。沙良は波折を抱きしめながら、すうすうと寝ている。あどけないその寝顔をみているときゅんとしてしまって、波折はみじろいだ。もぞもぞと手を沙良の背に回して、ぎゅっとすがりつく。


「……なおり、せんぱい?」

「あっ……ごめん、おこした?」

「ううん、だいじょうぶ……」


 沙良が、へへ、と笑う。思わず波折はとん、と触れるだけのキスをした。そうすると沙良も同じようなキスを何度かしてくる。


「先輩。週末、俺の家きてくれますか」

「うん」

「へへ……駅まで迎えにいきますね。危ないから」

「大丈夫だよ……」

「いいから」


 沙良は半分寝ぼけているのかもしれない。ぼーっとした瞳で波折をみつめて、言葉もどこか舌っ足らず。ぼやぼやとした会話をしたあと、またぱたりと瞼を閉じて眠ってしまう。


「沙良」


 波折は沙良の瞼にキスをする。そして、じっとその寝顔をみつめた。

 今のこの時間が、幸せだなと思うから。時が止まってしまえばいいのに、と思うけれど。そんなに世界は、やさしくない。

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