とある狂人の育成記13

 俺が一等裁判官に任命されたときだ。ジャッジメントスクールの特別講師も兼任することになった。

 全国に散らばる裁判官事務所。ひとつの事務所のなかに、一等裁判官は数名しかいない。一等裁判官ともなれば、魔術のエキスパートということで人々から羨望の眼差しをうけることになる。俺を特別講師としてのは、できたばかりのジャッジメントスクールの入学数を増やすための客寄せということもあるだろう。実際のところ魔女が増えてきたとはいっても、一等裁判官でなければ捕まえることができないというほどに凶悪な魔女などほとんどいない。一等裁判官は力を持て余している、といってもいい。

 俺はジャッジメントスクールの特別講師になれたことをそれはもう、嬉しく思った。魔術の性質と人の本質の関係性のデータを、合法的に大量に入手することができるからだ。そして、ジャッジメントスクールに入学させた波折を、そばでみていることができる。

 ただ、ジャッジメントスクールに入学してくる生徒のデータをみてみると、得意な魔術には偏りがあった。ほとんどの生徒が、防御や治癒の魔術を得意としているのだ。考えてみれば、裁判官になりたい理由なんて、ほとんどの生徒が収入が多いとか見栄をはりたいとか、そんな保守的な理由だ。たとえば医者ならば人を救いたいからといった理由があるかもしれないが、裁判官なんて、せいぜい軽犯罪を犯す魔女を捉える程度の仕事しかしない。攻撃魔術が得意になるほどに強く魔女への嫌悪感を持つ者なんて、なかなかいない。エリート思考の人間が入学してくるジャッジメントスクールで、人間の本質の様々な傾向のデータとる、というのは難しいらしい。

 やはり、ジャッジメントスクールの生徒だけではデータがとれない。もっと攻撃的な人間をみつけて、それの本質を引き出してやらなければ。適当にそこらへんで危うい人間を見つけたら、そいつを魔女にしてやろう。口封じのための術も持っている。


「波折、おまえにちょっと、一仕事」

「なんですか、ご主人様」


 中三になった波折は、もう異常に綺麗だった。ためしにそこらへんのオヤジを引っ掛けてこいと命令してみたら、百発百中でホテルに連れ込めていた。

 攻撃的な性格を持つ人間に、なんとなく目星を付けてみる。そして彼らを波折がたぶらかし、魔術を使わせる。波折を使ってデータを集めてみよう、と俺は考えた。

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