君の手で


もう一度シャワーを浴びて、二人で布団にもぐった。波折は沙良にぴとりとくっついて、余韻に浸るようにぼーっとしている。沙良は頭を撫でながら、ぎゅっと波折を抱きしめてやった。


「……先輩。俺、先輩を救います。先輩を幸せにします」

「……」


のそりと波折が顔をあげる。波折は沙良の目を見つめると、ふ、と笑った。


「……ありがと」

「……どうしたらいい? 先輩。本当に先輩を「ご主人様」から救う方法は、ないんですか?」

「んー……沙良がちゃんとJS卒業して、将来の夢を叶えたら俺は幸せになれるかも」

「いや、そう言ってくれるのは嬉しいですけど……全然波折先輩の現状は変わらないじゃないですか……」

「そう?」


波折は布団のなかで、沙良の手を自分の手と重ねあわせる。そしてすっと沙良の手を自分の左胸まで持ってきた。沙良の手に、どくんどくんと波折の心臓の鼓動が伝わってくる。


「将来の夢を叶えた君は――魔女を殺す資格を得るでしょ?」

「……え? それがなにか……?」


ぎゅ、と沙良の手の上から波折が自分の左胸を握る。それはまるで、心臓を握りつぶすように。


「……?」


怪訝な顔つきをしている沙良に向かって、波折はただにこりと微笑みを向けた。波折の意図がわからない。沙良はもう一度波折を抱き寄せ、目をとじる。


(先輩のこと、救う方法があるということですか……?)


波折は大切なことを言おうとしない。情報が少なすぎて、沙良に答えを見つけることは、できない。思考を巡らせているうちに……沙良は眠りへ堕ちてしまっていた。
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