とけちゃうくらいに
 リビングに戻ると、波折はソファの上で体操座りをしていた。不安だったんだろうな、と思って沙良は足早に彼に近づいていって抱きしめてやる。


「先輩。父さん、何も言ってなかったよ」

「……ほんと?」

「思いっきり関係バレたからこれからちょっと恥ずかしいかもしれないけど」

「大丈夫。……でも、じゃあ、なんで呼ばれたの」

「……」


 問われて、沙良はぴたりと固まる。沙良は洋之のありがたいようでバカな話を話す気にもなれず、無言でローションのボトルを波折の目の前に突き出した。突然そんなものを見せられた波折は当たり前だがぽかんとしている。


「先輩。今日、ローションプレイしよ」

「……う、うん?」

「波折先輩はいつも濡れまくるからローションなくても大丈夫とか言えなくて、これ押し付けられたんです」

「……お父様といったいどんな会話を……」


 波折は恥ずかしがってはいないようだが、親子でする会話の内容に引いているようである。ただ、ローションには興味があるようだ。妙にそわそわとしている。これは早々にヤるべきだ、と沙良は波折の手を引いて立ち上がった。さすがにリビングでやるわけにもいかない。向かう先は、自分の部屋。アブノーマルなプレイにわくわくとしてしまうのは、男の性だろうか。部屋へ向かう足は、自然と早足になっていた。


「……」


 一旦波折を部屋まで連れてきてからローションプレイをするならタオルが必要だと気付いた沙良は、急いで違う部屋からタオルを持ってきた。波折を置いてきた部屋に戻って、沙良はぴたりと固まってしまう。波折が、沙良のベッドの上にうつ伏せになっている。その手には、ローションのボトル。波折がボトルをじーっと見つめては足をぱたぱたとばたつかせている。


(う、うきうきしている……!)


 思った以上に波折はローションプレイを楽しみにしているようだ。さすがの淫乱っぷり。ローションプレイを提案した沙良のほうがなんだか恥ずかしくなってきてしまって、かあっと顔を赤らめる。


「……先輩は、ローションプレイやったことあるんですか?」

「うん。ぬるぬるしてすごくいやらしい気分になれるよ」

「……じゃあ、今日は俺とめっちゃいやらしいことしましょう」

「でも沙良、ローションってちょっとお湯で薄めて使ったりしない?」

「そうなんですか?」

「ううん、そのままでも使えるけど……これでやったらすっごくぬるぬるするね。楽しそう」


 そういえばAVなんかではすごい量のローションを使っている。あれは薄めていたのか……と沙良は自分の知識不足にため息をつく。……そして、波折がローションプレイをやったことがあるというのにカチンときた。あらかた「ご主人様」とやっているのだろう。


「……がんばって先輩のこと、すっごく気持ちよくしますからね」


 「ご主人様」なんかに負けてたまるか。沙良の闘志に、火がつく。

 ベッドに、大きめのバスタオルを敷く。二人で服を脱いで、その上に座った。


「……」


 波折を思い切り気持ちよくしてあげたい……というやる気にあふれてはいる。しかし、いざローションプレイをやるとなるとどうしたらいいんだろう。沙良はボトルを握りしめたまま波折の裸体をじっとみつめ……


「んっ……つめたっ……」


 とりあえず、波折にローションをかけてゆく。波折の鎖骨のあたりにボトルの口をあて、ぎゅっと握りしめる。そうすると、思った以上に粘質の液体が、どぼっと溢れてきた。液体はつるつると波折の身体をすべっていき、肌を濡らしてゆく。沙良はそんな滑り落ちるローションをすくいとって、波折の胸にぬるぬると塗りつけてみた。


「ひゃっ……」


 ひく、ひく、と波折が震えた。触ってみてわかったが、本当にローションは冷たい。これは波折がちょっとかわいそうかな、と思って、広げたローションを温めるように、沙良はくるくると執拗に胸を撫でてやった。お湯で薄めていないローションは、ぬるぬるというよりもねばねばだ。糸をひきながら、沙良の手にもまとわりついてくる。


「んっ……」


 波折を、押し倒す。そうしてみれば、天井のライトが波折の身体を照らし、ローションがてらてらと光った。ぬるぬるとしたローションがべっとりとついた波折の胸。思った以上に……いやらしい。


「……先輩……やらしい」


 波折にローションをどばどばとかけてゆく。やはり冷たいのか、波折はしきりにひく、ひく、とみじろいでいた。さっと手を滑らせて全身にローションをのばしていけば、次第にローションは波折の体温で温まっていって、とろみを増してゆく。身体全体がてらてらと光っている波折は酷く卑猥で、沙良のなかの戸惑いも消えてゆく。ローションプレイのやり方がわからない、だからなんだ。波折をとろっとろにしてやりたい。


「先輩。俺にもローションつけて」

「うん……」

「先輩の身体使ってね」

「……うん」


 沙良が笑うと、波折は期待に満ちた瞳ではにかんだ。起き上がり沙良の膝の上に乗ると、ぎゅっと抱きつく。そして、ぬるぬるになった身体をこすりつけるように、上下に動いた。


「んっ、んっ」

「えろっ……波折先輩……」


 ぬるっ、ぬるっ、と身体がこすれる度にローションの感触が伝わってくる。波折の下腹部まで濡らすローションが、波折のお尻が沙良のふとももに当たるたびにぱちゅぱちゅと音をたてている。波折は脚を沙良の腰にまわし、全身を密着させて、必死にローションを沙良の身体に塗りつけた。


「あんっ、あんっ」


 目の前で、恍惚をした表情を浮かべる波折がぴょんぴょんと跳ねている。たまらなく興奮する。ぬるぬるとした感触が気持ちいいのか波折ははあ、はあ、と息を荒げながら沙良に身体を擦りつけてきて、すでにペニスも勃ちあがっていた。ローションなのか先走りなのかわからないぬるぬるで下腹部もびっちょり。まだ始まって間もないというのに、二人は全身どろどろになっていた。


「先輩。もっとつけて」

「あっ……」


 沙良がぱたりとタオルの上に仰向けに倒れる。沙良を跨ぐ体勢となった波折は、いじわるに微笑んだ沙良に見上げられてぞくぞくしてしまって、ぴんと乳首をたたせていた。


「あっ……あふっ……」


 波折が沙良の身体に股間を擦り付けるように身体を前後に動かす。波折の睾丸がぐにぐにと形を変えながら沙良の身体の上をすべってゆく。動く度にずくんずくんと下から甘い電流が走ってきて、波折は腰をがくがくとさせながら身体を動かしていた。


「あっ……はぁっ……あぁ……」


 顔を蕩けさせ、のけぞって。そんな波折がゆらゆらと自分の上で動いている光景は、絶景だ。動く度にぺちんぺちんと波折のペニスがあたってくるのも可愛らしい。次第に波折はアソコだけの刺激じゃ物足りなくなったのかぱたりと沙良の上に倒れこんで、全身を使って沙良の身体にローションを塗りたくり始めた。乳首やペニスをぐりぐりと沙良の身体に押し付けながら、身体を動かしてゆく。


「あんっ……あんっ……さらぁ……」

「先輩、どうしたの」

「からだ、熱い……なか、ぐちゅぐちゅして……そともなかも、どろどろにして……!」


 波折の懇願に、沙良はふっと笑う。手を伸ばし、自分の上に乗っかる波折のお尻をぐっと掴む。そしてローションでびちょびちょになったお尻の穴に、遠慮なしに指を突っ込んだ。


「あぁんっ……!」


 ぬるぬるのおかげで、いつもよりもすんなりとはいる。両手の指をぬぷぬぷといれてみても、抵抗なく波折のお尻の穴は受け入れた。


「んー、いつもよりも柔らかい」

「あぁっ……掻き回してっ……」


 言われなくても、と沙良は両手の指をを交互に抜き差しする。くちゅくちゅと音をたてて高速で抜いたりだしたり。ローションも一緒にはいったりでたりするものだから、まるで愛液が溢れ出しているようだ。ぬぷぬぷと出し入れをしまくって、そうしたら今度は指をなかに突っ込んでぶるぶると震わせてやる。びしゃびしゃっとローションを飛ばしながら、激しく波折のなかで指を震わせる。ついでに片手でマシュマロみたいに柔らかい波折のお尻を揉みしだいて、とにかく波折のお尻をどろっどろにしてやった。


「はぁんっ……あんっ、あんっ……!」


 波折は顔もとろっとろに蕩けさせている。ひくひくっ、ひくひくっ、となかが痙攣しているから相当気持ちいいのだろう。波折も自ら身体を揺すって、上半身を沙良に擦り付けオナニーをする。とくに、やっぱり乳首が好きなようだ。ぬるぬるの乳首を沙良の胸に押し付けて、乳首を転がすようにゆっさゆっさと身体を揺らす。甘い声をあげながら自分のうえでとろとろに善がっている波折はそれはもういやらしい。


「あっ、あぁっ、」


 指でたくさんくちゅくちゅしたあと、沙良は身体を反転させて波折の中にペニスを突っ込んだ。にゅるんっと、いつもとは違う感覚で中まではいってゆく。奥までいれると、びちょびちょの波折の下腹部全体と触れ合って、いやらしい気分になった。


「いつもより、柔らかいですね」

「あぅっ……さら……」

「ん、はい。波折先輩……」


 なんだか寂しげに波折が手を伸ばしてきたものだから、沙良はぎゅっと彼を抱きしめてあげた。そうすれば、ぬるぬるの全身が触れ合って……まるで溶け合っているような錯覚を覚える。そのまま身体をゆすると、ぬるんっ、ぬるんっ、とローションで肌が滑って気持ちいい。波折のアソコもとろっとろに蕩けていたからいつも以上に興奮して、沙良は腰を振る速度を速めてゆく。


「あっ、ふぁっ、はぁんっ……」

「先輩……とろっとろ……可愛い……」

「とけちゃう……さらっ……あぁんっ……」

「ほんとうに、一つになっているみたい、ですね」


 ぱちゅぱちゅと激しい水音が響く。波折のなかが熱い。ぎゅーっとなかが締まってきて、まるで生き物のようだ。ぐちゅぐちゅと波折の好きなところを擦りあげてやれば波折は沙良に抱きつきながら仰け反ってゆく。


「あーっ……きもちいいっ……! イっちゃう……イっちゃうーっ!」

「先輩っ……中出ししますよ……!」

「中出ししてっ……おなかいっぱいにして……! あぁんっ……!」


 沙良がパンッと一際強く腰を打ち付け、なかにびゅるるっと精を放ってやると、波折は幸せそうに目を閉じて、中出しされる感覚を堪能していた。うっとりとしてはーはーと息をしている波折に、沙良はかぶりつくようにキスをする。


「ん……」


 気持ちいい。一つになりながらキスをして、全身に粘膜のような液体を纏って。いつもよりも一体になっているという感じがしてたまらない。

 二人は射精を終えてからも、しばらくひとつになったまま、キスをしていた。
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