▼ vingt
黄金の天使、酔わせるものよ、その瞳の魅惑
僕のものになってくれないか、僕は君が欲しい
僕の苦しみを鎮めるために、僕のものになってほしい
来てはくれないか、ああ女神様
僕は、二人が幸せになれるかけがえのない瞬間を求めている
ジュ・トゥ・ヴ(君が欲しい)
――フランス人は、なんと情熱的なことだろう。愛の国なんて言われるだけあって、有名なシャンソンの「ジュトゥヴ」の歌詞もまたなかなかに刺激的なものだ。
「……うう」
そして「ジュトゥヴ」なんて言葉を俺をイメージしたらしいケーキの名前にする智駿さんも智駿さんだ。
そりゃあフランス語で囁かれた愛の言葉は、日本人にしてみればきらびやかすぎて逆にあまり胸に響かなかったりするだろう。でも、実際に言葉の意味を知って、それをさりげないところで俺に向けられているのを知って。「君が欲しい」とそんな熱い言葉をぶつけられた俺は。
「……っ」
君が欲しい。
……俺、もう智駿さんのものなんだってば。智駿さんのせいでこんないやらしい身体になっちゃってるんだってば。「君が欲しい」とそんな言葉を智駿さんに向けられた、それだけで全身がじんじんとして熱くなって、今にもイッちゃいそうになるくらいに。
「智駿さん……」
くらくらして、ぼーっとして、意識がはっきりとしない。俺が、智駿さんでいっぱいになっているときの感覚。この状態になると、俺は自分の身体を触りたくなる。ムラムラしていなくても、智駿さんに触られたあのときのことを思い出したくて、感じるところを触って、そして一人エッチしだしてしまう。一人エッチってなんだか虚しいけれど、でも、智駿さんの記憶に浸りながらすると幸せだ。
「あっ……あっ……」
こんな風になるときはいつも、頭のなかは智駿さんでいっぱい。別にただ気持ちよくなりたいんじゃなくて、俺は智駿さんに愛されたいんだ。たぶん智駿さんが知ったらびっくりしちゃうと思うけれど、ほんとうにただ、俺は純粋に智駿さんのことが好きなだけ。
「あっ……いくっ……ちはやさんっ……」
「ジュトゥヴ」なんて、そんなこと言われなくても。俺は、智駿さんのもの。心も身体も智駿さんだけに抱かれて、そして永遠に続く夢心地の微睡みのような幸せにいつまでも、浸かっている。
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