▼ six(3)
面倒になってきて、はっきりと言ってやった。そうすれば白柳さんはにやーと憎たらしい顔で笑う。
「おまえ、なっかなか素直に言ってくれないから、改めて言われると嬉しいなあ」
「う、うぜー、もう気が済みましたか、放してもらえません?」
「やなこった」
「なんで!」
口でうっかり言ってしまったからか、妙にドキドキとしてしまって彼と目が合わせられない。これだから嫌だったのに、と思うが、なぜだか少しだけ胸が軽くなる。
俺が少し抵抗を薄めたからだろうか、白柳さんは俺の服を脱がせてきた。彼がこうしてセックスに積極的になることなんてほとんどなかったので、感動してしまって彼に体を委ねてしまう。彼に胸元をちゅ、と吸われると、素直に「あぁっ……」と声が漏れてしまった。
「前はあれだけ俺にべたべたしてきたくせに、急に避け出すからなんかあったのかと思ったよ」
「んっ……白柳さんって、一応そういうの気にするんですね、」
「まあ、放っておいて欲しいのかなって思ったからな、何も言わないでいたけれど」
「じゃあ、なんで急に……」
きゅうっと乳首を摘ままれて、びくっと腰が撓る。ついのけぞってしまった俺の体を白柳さんはぐっと抱き込めて、かり、と耳を噛んできた。そのまま乳首をくりくりとこねられながら、ふ、と息を耳孔に吹きかけられて、たまらなくなってため息が零れる。
「俺だって我慢できなくなるよ、好きなんだし」
「――……っ」
か、と顔が熱くなってうっかり手が出そうになった。頭の中ではもう俺は悲鳴をあげている。久々に白柳さんからストレートにそんなことを言われて、パニック状態だ。
「し、白柳さん……ほんと、どうしたんですか……そういうの、困ります……」
じ、と見つめられて、体から力が抜ける。
ゆっくりと引きずり落とされていく感覚が、少し怖かった。どうせなら無理矢理たたき落としてくれればよかったのに、この男は俺の手を引いて少しずつ俺の心を結び留めようとする。慣れない感覚だから、怖かった。
「は、俺のことを散々困らせたのはどこのどいつだよ。おまえも少しくらい困りやがれ」
「……、クソ野郎」
「ほんと口悪いな。俺の前でも猫被ってくれればいいんだけど」
ぎ、とソファが音を立てる。その瞬間に、唇を奪われた。
俺は、目を閉じていた。なんの抵抗もなく、むしろ嬉しくてたまらなくて、こうして彼のキスを受け入れている自分に辟易する。
俺は自分の中にある白柳さんへの好意に怯えるようになった。まともに恋をした相手というのは白柳さんが初めてだったので、自分の心がなにかに囚われる感覚に、俺は恐怖を感じるようになったのだ。自由で在りたいという自分の夢が、壊れていくような気がしたから。だから、彼と距離を取った。
取った、はずなのに。
「あの……白柳さん……このソファ、硬いから……その……ベッドで……」
どうしても、俺は彼のことが好きらしい。
prev /
next