▼ duex
部屋の鍵はかけた。絶対に家族が入ってくることはない。
はあ、と気合をいれるように息を吐いて、俺はベッドの上に座る。これからやるのは、そう、智駿さんとのエッチに備えた準備。まず智駿さんとエッチをする日が訪れるのかは定かではないけれど、準備しておいて悪いことはないかな、なんて思う。
ネットで軽く調べた、お尻のなかの感じるところ。少し奥の方に、ふかふかしたような感触の部分があって、そこは男にしかない前立腺という部分。そこが、とにかく気持ちいいらしい。
とりあえず俺がやろうとしていることは、ソコにいれられても痛くないように慣らしておくこと。我ながらなんてことをしようとしているんだ、とは思うけれどすべては智駿さんのため。
「……」
下を脱いで、足を開く。それだけで俺は妙な罪悪感を覚えた。監視カメラがあるというわけでもないのにやたらの部屋の中を見渡したりして、本当に、本当に誰にも見られていないことを確認する。そして、ハンドクリームを指につけて……ゆっくりと、そこに指を一本埋めていった。
「……う、」
一本くらいなら、痛みもなく入ってゆく。根元まで入ると、とたんにとんでもない喪失感に襲われて気分が陰鬱としてきた。なんで俺は自分の指で処女(?)喪失してんだ……という、情けないような悲しいような、そんな喪失感だ。でもやるからには目的を達成したい。俺はぐいぐいと指をなかでかき回して前立腺を探してみる。
「……?」
感じるところ……とくに、ない。ふかふかしてる?ようなところはなんとなくあって、ここがもしかして前立腺かと思ったけれど特に気持ちいいというわけでもない。指全体を使って押してみたりしてみたけれど……圧迫感がお腹の方にくるくらい。
……まあ、こんなもんか。
智駿さんともしもエッチするときに気持ちよくなれたら、絶対に幸せなのに。
感じられるようになるのは、難しいかな。地道にここをいじっていればそのうち気持ちよくなるかな。
なかで感じられるようにするのは、たぶんすぐにはできない。できれば次に会うときまでに感じるところにしておきたいとは思ったけれど、とりあえずそれは後回しにしておこう。
まずは、問題なく最後までエッチができるようにしたい。はいらなかったらそもそもエッチができない。それは避けたい。
なんだか引き返せないところまで来ているような気はしたけれど、頑張るぞなんて変にやる気をだしている俺がどこかにいた。
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