▼ cinq
「ん……」
妙な、体のだるさを感じて、俺は目を覚ます。そうすると、ちょうど智駿さんがテーブルに飲み物を持ってきていて、俺に微笑みかけてきた。
「あ、梓乃くん。どう? 冷たい飲み物でも飲む?」
「あ、はい……なんだか、喉が渇いちゃいました」
俺はベッドから抜け出して、テーブルのそばまでのそのそと歩いていった。ちょっとだけ、さっきまでの記憶が飛んでしまっていたから、頭がすっきりしない。なんでこんなに喉が渇いて、体も重いのかな……そう疑問に思っていれば、智駿がふふっと笑う。
「いっぱい飲んでいいよ。喉カラカラでしょ? あんなに出したんだから」
「出した……? え、……あっ、」
智駿さんの言葉に……俺は、さっきまでの記憶を一気にたぐり寄せた。おもらし、したんだ。パンツをはいたままおしっこをして、潮吹きをして。ものすごく恥ずかし姿を、智駿さんにみせてしまったんだ。
俺は急に恥ずかしくなって、智駿さんと目が合わせられなくなってしまった。俯いた俺に、智駿さんは楽しそうに話しかける。
「いっぱい恥ずかしいことしたね。女の子の前では、あんなことできないよね」
「で、……できません……! できません、けど……智駿さんの前でも……」
「ふふ、喜んでやっていたくせに。また今度、してあげるね」
「ちょっ……!」
……智駿さん、俺が楓とあんなことになったから怒ってやったんだ。俺を思いっきり辱めて、もう女の子の前に立てないように。
ちらりと智駿さんの表情を窺い見れば、智駿さんは満足そうに頬をゆるめていた。思いっきりおもらしをした俺に引いているどころか、何やら満足している様子。俺に恥ずかしいことをさせて、さらに俺の被虐心を煽って、それで嬉しそうにしているんだから……さすがは、智駿さんだ。真性のサディストだと思う。
「……俺、……たしかにちょっと油断しちゃうことありますけど、絶対に智駿さん以外の人は好きにならないです」
「知ってる」
「知ってるのにオシオキするんです?」
「いやあ、オシオキって燃えるでしょ?」
「なんですかそれ!」
うん、とにかく。俺はちょっとは警戒心を強めよう。智駿さんが俺を疑うことはたぶんないけれど、智駿さんの恋人としての義務だと思う。
俺は「ごめんなさい、もうしません」と言って、智駿さんにキスをする。そうすれば、智駿さんは、「わかってるよ」と微笑んだ。
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