甘い恋をカラメリゼ | ナノ
 huit


「こんなの普通のホテルにあるんですね!」



 窓際でのエッチを楽しんだあと、二人でお風呂に入った。入ってびっくり、このホテルのお風呂は泡風呂ができるみたいだ。単純に楽しそうだなんて思った俺は、見るなりテンションがあがってしまう。

 大きなお風呂で、二人でもゆったり入れるサイズだったけれど、俺たちはいつもと同じように入った。俺が智駿さんの上に俺が乗って抱っこされるような体勢だ。



「あー、すごい、気持ちいー……」



 エッチのあとの程よい気だるさのなか、お風呂でまったりしてるとすごく気分がいい。俺はぽやんとしながら、智駿さんにくったりと寄りかかる。



「あのねー、梓乃くん」

「はいー」

「僕はね、小さな町のケーキ屋さんだったおじいさんに憧れてパティシエになったんだ」



 智駿さんがお湯の中で、俺の指をいじっている。そうしながら智駿さんがぽつりと言った。俺に語るような、でも独り言のような、なんとも言えない声色。



「時代も変わっているしね、おじいさんと全く同じになんてなれないんだけど……自分なりに頑張って、迷って……そうやっていると、そのパティシエを目指していたころの想いを忘れそうになるんだよね」

「……」

「いいんだ、新しい目標が見つかってそれを目指して自分が高みを目指していくことは。でも、はじめの想いを忘れたら、僕の中の大切なものが崩れちゃいそう」



 ちゃぷ、と水面が揺れる。智駿さんが俺の肩口に顔を埋めると、濡れた髪が首筋をくすぐった。俺はゆるりと手で智駿さんの頭に触れて、撫でる。そうすると智駿さんはへへ、と笑って呟いた。



「だからね、ありがと、梓乃くん。梓乃くんと一緒にいると、僕が僕でいられる気がする」



……それは、俺も同じかも。

 俺は向き直って、智駿さんを正面から抱きしめる。もう智駿さんは俺の一部みたいなもので、智駿さんと一緒にいるから俺でいられる、そう思う。



「ん……」



 智駿さんが俺を見上げて微笑んで……唇を重ねてきた。俺の背中を、腰を撫でて優しく口付けてくる。



「んっ……ちはやさん……ん、」

「梓乃くん……」



 ちゅ、ちゅ、というリップ音、それから吐息をこぼす音が浴室のなかに響く。智駿さんが好きって気持ちが溢れてきて、俺の身体がふるふると震えだした。ちゃぷ、とお湯の弾く音が耳を掠める。



「ちはやさん……あ、……」

「ん、梓乃くん……したいの?」

「……つながりたいです」



 さっきエッチをしたばっかりだけど。智駿さんへの想いが溢れてきて、また俺は智駿さんを感じたくなった。エッチがしたいというよりは、智駿さんとひとつになりたい。智駿さんの熱いものを奥の方で感じたい……そんな感じ。

 俺は自分でお尻の穴を智駿さんのものにぴたりとあてる。やっぱりまだ勃っていなかったから、お尻の肉で挟んで腰を揺らして、刺激した。穴が擦れてすごく気持ちよくて、奥の方がひくひくしてくる。



「ちはやさん……挿れてほしいです、ちはやさん……」

「ん、僕も……挿れたくなってきちゃった」

「えへへ……かたくなってきましたね……んんっ……あんっ……」



 お尻で刺激していけば、智駿さんのものも熱くなってきた。智駿さんも俺と同じ気持ちだって思うと嬉しくなって、自然と頬がほころんでいく。そんな、幸せな気持ちのまま腰を下ろしていけば、ぐぐっとなかを押し広げられる感覚と共に智駿さんの熱を感じた。ぞくぞくとして、気持よくて……俺は頬を緩ませながらそれを奥までいざなう。



「あぁっ……」

「さっきしたばっかりだから、柔らかいね、梓乃くん」

「はい……気持ちいいですか?」

「うん……吸い付いてくる」

「ふふ、良かった……」



 ずっぷりと奥まではいって、俺はそのまま智駿さんに抱きついた。そして、またキスをする。

 身体は動かさないで、ひとつになった感覚だけを感じながら、何度も何度もキス。エッチな俺の身体はひとつになっているという事実だけで、キスをしただけでアソコがキュンキュンしちゃうけれど、それでも身体は揺らさなかった。じわじわと下から這い上がってくるこの多幸感に酔いしれたかった。



「智駿さん……ずっと、一緒にいたい、な……」

「なにいってるの、あたりまえでしょ」

「うん……」



 アソコに感じる熱が、ひとつになっているという証拠。俺と智駿さんがひとつになっているって実感させてくれるもの。だから、挿れられるのが大好き。

 ぴちゃ、ぴちゃ、と舌を絡める音が響く。今ではこうしてエッチなことをしてキスをするのが日常になっているけれど……思えば俺と智駿さんが出会ったのは偶然で、恋人になれたのも奇跡みたいなものだと思う。ポップスによくある「60億分の1の確率で出逢った」なんて、考えてみればすごいことなんだ。たとえば俺が智駿さんに出逢わなかった平行世界があったとして、俺は普通に楽しく生きているだろうけれど……それでもそっちの世界のことを考えるとぞっとする。俺は智駿さんに出逢えたこっちの世界線に居ることができて、本当に幸せだと思う。



「ずっと一緒?」

「うん、寿命で死んじゃうときまで」

「そのときは、ブランシュネージュはどうなっていますか?」

「うーん、それこそ僕のおじいさんのお店みたいになっているかも」

「それは、楽しみですね」



 おじいさんになるまで一緒かあ……。ふと考えてみて、すごく幸せな未来だと思う。それと同時に……



「ふ、……うう……」

「えっ、なんで泣いちゃうの!?」

「智駿さんが、死んじゃうときのこと考えて……うー……」

「あと何年先の話? もう、梓乃くん」



 寿命で死んじゃう智駿さんのことを考えてたまらなく寂しくなった。俺のおじいさんが亡くなったときと重ねてしまったというのもある。人が、あっけなく、こんなにあっけなく亡くなってしまうんだ……あの虚しさを、智駿さんとの幸せな未来に重ねたら。

 でも、それまでずっと一緒にいられたら、本当に幸せだろうなって思った。天国に行くときも、智駿さんとの思い出を抱いていけるんだ……そう思うと胸がいっぱいになる。



「智駿さん……元気なうちにいっぱいえっちしましょうね」

「あはは、そうだね」



 腰を浮かせて、落とす。ぱしゃんと水面が揺れる。俺はゆっくりと体を上下させて、いいところを智駿さんのものにこすりつけた。智駿さんは俺のものを握って、ゆるゆるとしごいて刺激してくれる。

 キスをしながら、そうやってゆったりと求め合った。大きくてきらびやかな浴室でそうしていると、穏やかな気持ちになる。俺たちの声と、ちゃぷちゃぷとお湯の揺れる音が、響いていた。



「んっ……ん、ん……」



 ああ、もう、智駿さんとのセックスってなんでこんなに幸せな気持ちになるんだろう。ゆるりとまぶたを開ければ熱の溶けた瞳とぱちりと視線がぶつかって……俺は恍惚と心を蕩けさせて……イってしまった。


prev / next


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -