甘い恋をカラメリゼ | ナノ
 trois


 首輪はどこに売っているかなって、色々探した挙句に俺がたどり着いたのは、何度か連れて来られたアダルトショップだった。ペットショップにいって犬用の首輪を買っても良かったけれど……犬用の首輪を自分がつけるのはなんだかうーんってなんてしまったのだった。智駿さんになら犬扱いされながらひどいことをされても嬉しいけれど、どうせなら「ソレ用」の首輪のほうがいいかなと思った。

 三回目ともなるとそこまで抵抗のないアダルトショップ。俺は堂々と扉を開けて中に入っていく。

 バイブやAVのコーナーを抜けていけば首輪があるところは見つけられた。どうやら分類的に首輪はSMグッズのようで、首輪の周りには鞭やらろうそくやら置いてある。正直こういうのを使ったSMプレイをしてみたいな……と思ったけれど、智駿さんは痛いことは多分やってくれない。俺が智駿さんをSMに目覚めさせればいいのか……なんて思い始めたときだ。



「あっ今日も来てくれたんスね〜!」

「……!?」



 後ろから、声をかけられた。ぎょっとして振り返れば、そこにはどこかでみたことのある男がいる。



「今日は一人なんスね!」

「……あ、」



 男は、このアダルトショップの店員だ。俺が今までこの店に来た時、ずっとレジに入っていた人。まさかの顔を覚えられていたという自体に、俺はカッと顔を熱くなるのを覚えた。



「お兄さんって、いつも買っている奴は彼女に使っているんスか? それとも自分?」

「……っ、え、……あのっ、」

「あ、自分に使っているんスね〜! わかりました、俺がお兄さんにオススメのものを選んであげます」



 ……この店員、なんなんだ。普通アダルトショップとかいうプライバシー重視の店の店員が客に声をかけるか。

 俺はあまりの衝撃に固まっていたけれど、店員は構わずいくつかの首輪を手に取っていく。



「首輪は、適当に選んじゃダメッスよ。肌に合わなくて首が痛くなっちゃったりしたらプレイどころじゃなくなるんで」

「……な、なるほど」

「それからやっぱりデザインも一番自分に似合うものを選ばないとッスね〜! 可愛いって思ってもらわなくちゃ意味が無い」



 非常識に思える店員の行動に唖然としていた俺だけれど、店員としては彼は意外を頼りになりそうだった。彼を振り切るのも面倒だった俺は、そのまま流れに身を任せてみることした。

 店員はじっと俺を見つめては首輪を見つめて、を繰り返す。首輪を俺の横にかざしては首を傾げ、また新しい首輪でそれをやっては、と。



「首輪ってことはSMプレイっスか?」

「え、SMっていうか〜……そんな激しいのじゃなくて……えっと、その、彼氏……がドエスなものでちょっと……」

「ちょっと変わったエッチしようみたいな感じっスかね? じゃああんまりゴツめなのはよくないかなぁ」



 店員はそんなことをいいながら手に持っていた黒い首輪やスタッズのついた首輪を戻していく。そして代わりに可愛らしいデザインのものを手に取って、また俺と見比べる。

 相手のさっぱりとした反応とか、真面目に首輪を選んでいる姿とか、それのおかげでなんだかSMグッズを買うことへの羞恥心が薄れていく。はじめは驚いたけれど彼はいい店員なのかもしれない。



「んー、お兄さんは青系が似合うけどー……そこはあえて暖色で可愛い系いってみまスか」

「えっ、ピンク」

「いやいやピンク、いいと思うっスよ〜! すっごいエッチっス!」



 結局店員が勧めてきたのは、ピンク色の首輪だった。リボンがアクセントについているやたらと可愛いデザインのものだ。

 俺もなんだかよくわからなくなって、勧められるままにその首輪に決定した。店員が手錠も一緒にどうぞ、と言ってきたからのせられて手錠も買ってしまう。店から出てから、なんかすごいものを買ってしまったなと思ったけれど、これで智駿さんが喜んでくれるならいいかと思い直した。



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