17


 二人は別荘になかに戻ると、自然と寝室へ向かっていた。言葉もなく二人は唇を重ねて、何度も重ねて、倒れ込むようにしてベッドの上に崩れ落ちる。

 ラズワードはぼろぼろと泣きながらも、濡れた瞳でハルを見上げた。涙でゆがんで彼の表情がよく見えなかったが、彼も泣いているということはわかる。ぽたぽたと頬に落ちてくる、彼の涙。なんどでも思う。こんなに彼を傷つけて、自分はなんて醜いのだろうと。


「ラズ……」


 ハルはむさぼるようにしてラズワードの首元に顔を埋めた。そして、かぷ、と軽く首を噛んでくる。ラズワードはハルの頭を抱きしめながら、甘い声をあげてのけぞった。

 彼と身体を重ねるのは、これで最後になるだろう。彼に「ラズ」と呼ばれるのも、最後。優しかった彼との時間ももう終わりだ。そう思うと、胸が苦しくてたまらなくなった。


「あ、あぁ、」


 びりびりと頭のなかがしびれるほどの快楽。快楽と共にわきあがる切なさ。零れる吐息にむなしさを感じる。


「はあっ……、あ、……あぁっ……」

「ラズ……」


 するすると服を脱がされてゆく。ラズワードは時折身体を浮かせるようにして、自ら服をほどいていった。あっという間に裸に剥かれて、敏感になった身体をさらけ出す。今この瞬間だけは、この身体はハルのものだ。

 ハルはラズワードの身体を抱きしめるようにしながら、じっとりと愛撫をした。もう二度と触れることのできなくなる身体を堪能するように。胸元、脇、指先……身体の隅々まで舌を這わせる。

 ラズワードは身体を揺すって、ハルの身体に肌を擦り付けた。ずりずりと擦り合わせれば、頭が真っ白になるくらいに気持ちいい。この身体は、ハルのことを覚えている。たくさん触れあったことを覚えているから、触れただけで気持ちよくなってしまう。


「ぁん……あ……あぁあ……」


 くちゅ、と下腹部が湿っぽくなったのを感じた。もう、先走りがでてしまっているらしい。少し触れあっただけでこのとおりだ。どれほど、この身体は彼を愛しているのだろう。心も、身体も、ハルのもとから離れたくないと言っている。

 勃ちあがってしまったものを、ハルが口にふくむ。びくびく、とラズワードの腰が浮き上がった。ハルはラズワードの腰を抱きかかえるようにして、ラズワードを逃がさない。ぬろ、と先端をなめられて、思わずラズワードの腰が跳ねる。


「あぁんっ……!」


 ぬろ、ぬろ、とぬるついて温かな舌がそこを上下する。ラズワードは枕を握りしめるようにして、快楽に耐えた。すぐに果ててしまいそうで恐ろしい。ハルの愛撫のたびに、腰がじんじんしておかしくなりそうになる。


「あッ――あ、……あ」


 じゅっ、とペニスを優しく吸われた。ラズワードは身体をのけぞらせて、声をあげる。ハルは浮き上がった腰をグッと抱き寄せて、ラズワードの恥骨に顔を押し当てるようにしてペニスを口の奥までふくんだ。ペニス全体が口にはいって、耐えがたいほどの刺激が襲い来る。


「ああぁあぁあ……いくっ……も、……いく……」


 だめだ、だめだ。こんなにもすぐにイッたら――……

 後頭部を枕に擦り付けるようにして、快楽を振り払う。しかし、それも虚しく。ぴゅくぴゅく、とペニスを震わせて、ラズワードは果ててしまった。ハルはラズワードのそこからあふれ出た精液を余すことなく吸い取る。


「あ……あ……」

 
 達したばかりで敏感なそこを吸われて、ラズワードは意識もまだらに声をあげる。やがてハルはペニスを解放すると、ラズワードが放った精液を指に絡め取って、ラズワードの後孔に指をいれた。ずにゅ……とそこに圧を感じて、ラズワードが「あぁあ……」とため息と共に甘い声を零す。

 ハルはペニスを扱きながら、ラズワードの秘部をほぐしていった。前と、後ろ、両方に刺激を加えられて、ラズワードはおかしくなりそうになった。甲高い声をあげて腰を揺らして、途中、なんども果て快楽に屈服する。

 ハルの指がラズワードの敏感なところをぐぐっと圧迫した。じゅわ、としみ出すような快楽にラズワードはビクビクッ、と腰を震わせる。枕をぎゅーっと掴んで快楽から逃げようとしても、甘美な熱は迫りくり、ラズワードは果てる。


「ああぁあー……! いくっ……いくッ……!」


 ずるるっ……とハルの指がそこから抜けていった。ぽかん、と熱が冷めたような切なさ。いやだ、もっと。そんなことをぼんやりと考えていると、ぐ、とそこに熱いものがあてられる。


「あ、あ、……」

「ラズ……」


 ずんっ、とそれが奥まではいってくる。


「あぁあああッ――……!」


 脳天を突き抜けるような快楽。いれられた瞬間に、ラズワードは果ててしまった。深い深い絶頂に、何も考えられなくなる。

 ハルはラズワードに多い被さると、パン、パン、と勢いよく腰を打ち付けてきた。ラズワードは全身でハルに抱きついて、振動のたびに弾ける快楽に耐える。


「あ、あ、あ、あ、」

「ラズ、愛してる、愛してる、……ラズ……」

「あっ、おれも、おれも、です、はる、さま……」


 がぶ、と噛みつくようなキスをされた。

 身体を揺すられてキスをしているのが苦しいと感じたが、ハルの頭を抱くようにして必死にキスを続ける。「ん、ん」とくぐもった声をあげて、激しくハルを求めた。

 ああ、ずっとこうしていられたらいいのに。心から、そう思う。

 ハルと出会わなければ、彼を傷つけることもなかった。こんなに苦しい想いをすることもなかった。けれども、ハルと出会わなければ、こんなにも幸せな日々を過ごすことはできなかった。

 彼と出会ったことは間違いではなかったと、そう思いたい。

 ラズワードはぎゅっとハルにしがみつくようにして抱きしめる。この関係に永遠がないとわかってしまったからだ。


「あぁっ、あっ、あっ、あぁあっ!」

「ラズ、ラズ、……はあっ、は、」

 ハルも、ラズワードも、涙でぐしゃぐしゃになりながら、お互いの身体をむさぼった。息ができなくなるくらいにキスをした。何度も何度も果てた。最後のセックスが終わるのが名残惜しくて、終わりなど見えないというように、激しく求め合った。
 
 
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