やって来ました、ジャッポーネ!
久しぶりのジャッポーネ、しかも仕事も長期休暇ときたら心はうきうき弾んじゃう!

今回、ジャッポーネに来た理由は親友のビアンキに会うため。

リボーンを追ってジャッポーネに行くわ、と言っていたけど本当にイタリアから去ってしまった時は驚いた。
愛はすごい、と言うよりもビアンキってすごい、としか言いようがない。



『…で、並盛に着いたけど沢田さん宅はどこなの』



ジャッポーネに着いて早々、私は迷子になった。
うきうき、るんるんだった気分は急降下。

ビアンキを驚かせたくて沢田さん宅に突撃訪問したいから、どうにか自力で探したいんだけど誰かに聞いた方がいいかなぁ。



『うーん…、誰かいないかなぁ…』



歩き疲れた足を止め途方に暮れていると向こうから三人組の男の子が歩いて来た。

ナイスタイミング!
駆け寄って、さっそく声をかけようとしたら一人の男の子はどこかで見た事がある顔。

あれ?誰だっけ?
見つめると、その男の子も私を見つめていた。

お互いに見つめ合うこと数秒、男の子が口を開いた。



「お前…、名前、か…?」

「えっ、獄寺君、この人と知り合い!?」

「獄寺に知り合いなんて珍しいのなー」

『……ゴクデラ?』



聞き覚えのある苗字に耳をぴくりとさせて男の子を至近距離で見つめる。



「お、おい、近すぎだろ…っ」

『ゴクデラ…』



じぃっと見つめると男の子は顔を赤くして視線を逸らす。
私は気にせず目の前の「ゴクデラ」を記憶の中のビアンキの弟、「獄寺隼人君」と重ねる。

ビアンキのお城に遊びに行った時、ピアノを弾いてる姿を何度か見た事がある。
「ピアノ、上手だね!」って話し掛けたら人見知りなのか顔を赤くさせて、もじもじしてたっけ?

一人でピアノを弾いてる隼人君が何となく寂しそうで気になって私はピアノのすぐ傍に座った。
沈黙が続いたけれど、その場にいたら次第にポロンポロンとピアノの音が聞こえてきた。

音色に驚いて見上げたら隼人君が一生懸命、弾いていて、拍手を送ったら色んな曲を弾いてくれた事が記憶に残ってる。

まるでピアノが生きてるみたいに明るく元気な音。

楽しかったな。



『……』

「……っ」

「ははっ、獄寺、顔、真っ赤だぜ」

「う、うるせぇ!赤くねぇよ!」

『……隼人君?』

「……ッそうだ!い、いい加減に離れろよ」

『わ…っ!?』



肩を掴まれて一定の距離を保たれる。

どちらかと言うと繊細で物静かな印象だった隼人君だけど、今は随分とやんちゃそうだ。
顔は昔を思わせるくらい赤いけど。



「お、おい、名前…」

『呼び捨てしないでよね!私、一応は年上なんだから!ね?』

「……っいいだろ、別に」

『だーめ!というか本当に隼人君?』

「あ…、あぁ…」

『随分、変わったね、昔はあんなに可愛かったのに、さすが男の子の成長期は侮れない…!!』



私の方が背が高かったのにね?と隼人君を見上げると、耳まで赤くさせ視線を逸らす。

不良っぽいのに中身はかなり純情そうだなぁ。
昔は昔で可愛かったけど今も可愛いげあるじゃない。

思わぬ再会にニコニコしていると隼人君は気恥ずかしいのか頭をかいている。
その姿を笑うと隣にいる男の子達が声をかけてきた。



「あ、あのー」

『ん?なぁに?』

「え、えっと、何か用があったんじゃ?」

「さっき、オレ達に声をかけようとしてたっスよね」

『あ!そうだった、そうだった!沢田綱吉君の家を聞こうと思って!』

「えぇ!?オレの家!?」

『え?オレの家、って事は、もしかして君が沢田綱吉君?』

「そ、そうですけど何で…?」

『ビアンキに会いに来たんだ!』

「ビアンキにですか?」

『そう!君の家に居候してるんでしょう?』

「…姉貴に会いに来たのかよ、お前」

『お前じゃなくて名前で呼んでよね、隼人君』

「年上ぶるんじゃねぇよ。お前、姉貴と並んだら絶対に姉妹に見えっぞ」

『それでも年上だもん』

「……チッ」

『舌打ちするんじゃないの!』

「随分と口、煩くなりやがったな」

『隼人君は反抗期、真っ只中って感じだね』



何を言われようがどうって事がない。可愛いもんじゃない。
余裕たっぷりに笑うと、むっとして黙ってしまった。



「……」

『………』



どうやら隼人君は昔を知ってる私のことが嫌みたい。
別にあれこれ沢田君達に言う気はないのにね。

それに話すほど、たくさんの思い出はない。
私はピアノを聴いていて、隼人君はピアノを弾いていただけ。
会話はほとんどなかった。

しばらくビアンキのお城に遊びに行かなくなって、久しぶりに訪問したら隼人君は既に家を出ちゃったから思い出はピアノだけ。

こうして会うのは本当に久しぶりなのに黙ったまま。
少しくらい話してほしいな。

せっかく会えたのに、寂しいじゃない。



「へぇ、イタリアから来たんスか!」

「じゃ、じゃあ…、お姉さんも、もしかして…」

『えっ?なぁに?』

「そ、そのー、ほら、リボーンやビアンキとか……」

『あぁ、違う違う、私はヒットマンじゃないよ』

「そ、そうなんですか!よかった!」

『一般人とは言えないけどね』

「ひぃぃ、余計に怖いんですけどー!!」



沢田君たちと会話を続けていると今まで、ずっと話さなかった隼人君が口を開いた。
だけど隼人君が話しかけたのは私ではなく沢田君だった。



「……じゅ、十代目」

「どうしたの、獄寺君」

「すみません、オレ、先に帰ります。こいつを姉貴に会わせてやってください」

『えっ、隼人君?』

「あ!ちょっ、獄寺君ー!?」

「いきなり、どうしたんだ、あいつ」

『……隼人君も沢田君の家、知ってるんだよね?』

「え…?あ…、は、はい…」

『それじゃ、大丈夫だよね、…うん、よし!』

「……?」

『隼人君と一緒に沢田君の家に行くね!引き止めちゃってごめん!』



あとでねー!と手を振って走って行った隼人君の後を追いかける。
真っ直ぐな道だから迷う事はなく隼人君に追いついて、その勢いのまま背中を叩いた。



「……って!!」

『何で帰っちゃうの、隼人君!』

「おまっ、何で…!!姉貴の所に行って来いっつーの!!」

『一緒に行こうよ』

「嫌だ」

『行こうってば』

「い、や、だ!」



ずんずんと進んで行く隼人君の後ろを歩く。
隼人君の足取りは次第に早くなっていったけど、めげずに後をついて行くと観念したようで振り返ってくれた。



「何でついて来るんだよ…」

『隼人君、帰っちゃうの?』

「帰るに決まってんだろ」

『……お邪魔してもいい?』

「はぁ?」

『隼人君ともお話したいなって思って!せっかく会えたんだもん!』

「……」

『家出してびっくりしたんだよ、会えて嬉しい!』

「……勝手にしろ」

『やった!』



隼人君は参ったと言わんばかりに、深いため息を吐く。

勝手にしろ、と言われたら本当に勝手にしちゃうよ?
だって、そう言うのって好きなようにしていいって事だよね?

今までは後ろをついて歩いていた私だけど気分上々で隼人君の隣を歩いた。

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