日差しが眩しくて瞳を開ける。

今日は日曜日。
私は気だるい身体を起こしてうーんと背筋を伸ばす。

もう少し眠りたいと思うけど、せっかくの日曜日だもの。
日曜日は昔からどこかわくわくしていつも早起きしちゃう。

同じベッドで眠ってる恭弥を起こさないように静かに起きて着替える。
お店が開く時間になったら食品を買いに行きたいなぁ、その前に朝食は何にしよう、なんて考えながらコーヒーを入れた。



「ん……」

≪ヒバリッヒバリッ≫

『あ、恭弥、起きた…?』

「名前……」

『もう少し眠ってても大丈夫だよ』

「……何で君は起きてるの」

『目、覚めちゃったから』

「……」

≪ヒバリッヒバリッ≫



ヒバードは起きたばかりの恭弥の周りをパタパタと飛んで、おはようと繰り返し挨拶している。
恭弥は黙ったまま私をじっと見つめていた。

昔なら怒ってる?とビクビクとして冷や汗を流したものだけど今では、ただぼーっとしているだけという事が分かる。
目つきが鋭いから余計に不機嫌に見えるんだよね。



「……おはよう」

『ん、おはよう。コーヒー飲む?それとも、お茶にする?』

「……コーヒー」

『はーい』



学生の頃より少し短い髪、ぴょんと寝癖がついているのに気がついていない。
それを横目にくすくすと笑いながら私はコーヒーを入れた。



『はい、どうぞ』

「ありがと」

『恭弥、今日はお休みだよね?』

「そうだけど。カレンダーを見て分からない?」

『う……、だって時々、日曜日も仕事に行くじゃない!』

「沢田綱吉が煩くてね。」

『ツナじゃ仕方ないよね、今や裏の世界で知る人はいない、ボンゴレ十代目!』

「小動物には不釣り合いだから僕にまで仕事が回ってくるんだよ」

『そう言っても恭弥はちゃんと仕事をこなすんだから優しいよね』

「利害が一致しているだけさ。それよりも、ねぇ、名前も休みだろ」

『うん、休みだよ』

「暇ならそこの書類に記入しといてよ」

『書類?何の?』



テーブルに置いてある封筒。
何で私が書く必要があるんだろう?



『……?』



恭弥を見るとコーヒーを一口、飲んで着替えてる。
慣れているとはいえ堂々と着替えないで欲しいんだけど!目のやり場に困る!

慌てて逸らして書類を封筒から取り出した。



『……な、何これ!?』

「婚姻届。」

『み、見れば分かるってば!どういう事!?』

「結婚しようって言ってるんだけど」

『な、な……けけ、け…』

「結婚。」

『結婚!だ、誰と誰が!?』

「君と僕に決まってるだろ」

『……!!』



後は君が書くだけだよ。
恭弥はさらっと言っているけど私が断るとか、そういう考えはないんだろうか、まったく。



「……」

『………』



……まぁ、断らないけどさ!

不安はあるけど同棲して大分、経つし、何より恭弥と付き合える人物は私しかいないと胸を張って言える。

でも、恭弥と結婚なんて、そんなの考えたことがなかった。
ぼんやりと、これからも傍にいるんだろうな、とは思っていたけど。

恭弥は私のことを、ちゃんと考えてたんだ。



『恭弥……』

「……嫌なのかい」

『………嫌』

「………」

『…ー…な訳ないじゃない』

「……そう」

『…ねぇ、ちょっと待って』

「なに?」

『何で朝っぱらからトンファーを出してるの!?』

「名前が嫌で言葉を止めてたら意地でもOKさせようと思ってね」

『……!!』

「冗談だよ」



冗談に聞こえないから!!

もう少し、間を空けていたらトンファーを首元に突きつけられてたんじゃないかと思うとゾッとする。
容易に想像がつくところがなんか嫌だ。

でも、想像はついても恭弥に暴力された事はない。
周りには容赦なかったからイメージがついちゃってるだけで、私にはちゃんと優しかった。

抱き締めてくれてキスをして愛し合う。
そして腕の中で眠る。

ささいなことで幸せを感じる時間ばかりをくれた。



『ねぇ、恭弥…』

「ん……?」

『……あの、ね』

「……」

『えっと…』

「なに?まだ何か言いたい事あるのかい」

『う、うん…、だから、ね…』

「……?」

『ふつつか者ですが、よろしく…お願いします…』

「………!!」

『何だか、照れちゃうね?…って、恭弥、どうしたの?』



恭弥はベッドに座ったまま、きょとんとした顔で私を見上げてる。

少し頬が赤いのは気のせい?
どうしたの?と首を傾げると今まで一番、柔らかく微笑んで抱き締められた。



『…ー…っ!?』

「……参ったね」

『な、なに…っ?どうしたの…!?』

「……何でもない」

『何でもない訳ないでしょ!何なのよ、もう!』

「……僕、断られるなんて少しも思ってなかったんだよ」

『…でなきゃいきなり婚姻届を渡さないよ』

「だろう。だけど…」

『だけど?』

「……ちゃんと、名前が僕のものになるんだって思ったら」

『……』

「………」

『思ったら、何?』

「………秘密。」

『なっ!ここまで言っておいて!?』

「いいじゃない。」



恭弥は誤魔化すように私の左手の薬指にキスをする。
そして用意してあったらしい指輪をはめて囁いた。

これからも離さないから、と。



end



2009/03/26
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リクエストありがとうございました!

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