「お前、いい加減、オレを子ども扱いすんじゃねぇ!!」 『えっ、だって…』 「だって、じゃねぇ!オレはもう子どもじゃねぇんだ!」 『……じゃあ』 「何だよ」 『子ども扱いが嫌なら、どういう扱いをして欲しいの?』 「は……?」 『だって、私は別に子ども扱いしているつもりはないけど、こういう扱い嫌なんでしょう?』 「……」 『だったら、どんな風がいいのかなって…』 「…ー…オレだって男だ」 『うん、分かってる』 「分かってたら一人暮らしの男の家に来るかよ。それとも、何だ?ビアンキの弟だから、大丈夫だってか?」 『えー、隼人君、私にえっちなことしたいの?』 「……ッ!?」 隼人君が言いたい事をズバっと言うと面白いくらいに真っ赤になった。 図星だった?と見つめると、わなわなとしてピアノの椅子から立ち上がる。 「こ、来い!」 『あら、やだ、ベッドに連れ込む気?』 「ち、ちげーよ!何だ、そのわざとらしい言葉遣いは!姉貴の所に行くぞ!!」 『えー、もう?』 「さっさと会ってさっさとイタリアに戻れ!」 『あ、ひどい。せっかく隼人君と会えたのに、もうお別れ?』 「………ひでぇのはどっちだよ」 『ん?』 「…何でもねぇ」 『変なの』 「変なのは昔っからお前の方だ。」 『えーっ!?』 「早く行くぞ!」 『あっ!ま、待ってよー!!』 隼人君に急かされて沢田君の家へ向かう。 こっそりと上がらせてもらいビアンキを驚かすことに大成功! ……したのはいいんだけど隼人君がビアンキを見て、ぶっ倒れてしまった。 一体どうして?と混乱しているとポイズンクッキングのトラウマでビアンキを見ると倒れてしまう、という事を沢田君に教えてもらった。 『沢田君…、これは中々、仲良し姉弟への道のりは長そうだね…』 「はは…っ、まぁ……、うん、そう、ですね…」 「隼人ってば昔からよく倒れるのよ、いつまでも病弱で心配だわ」 『へ、へぇ、それは心配だね…』 「まさか一人暮らしで、ろくなものを食べてないんじゃ…?たまには差し入れしようかしら」 「ビアンキ!!それはやめてあげて…!!獄寺君、死んじゃうよ!」 「あら…、ふふっ、死ぬほど喜んでくれるってことかしら?たまには良い事を言うわね、ツナ」 「違うからー!!」 『あ、はは……隼人君、大丈夫?』 「だ、大丈夫、な訳…ある、か……」 隼人君は振り絞るように言葉を口にして完全に意識を失った。 数時間して隼人君が目覚めると、みんなで話して騒いだ。 その夜は夕飯をご馳走してもらい沢田君の家に泊めてもらった。 次の日からビアンキに並盛を案内してもらったり隼人君たちと遊んだり、とても楽しい日々が続いた。 帰るの、やだなぁと思っていた所でビアンキにある提案をもらい、私は即決。 ビアンキにサプライズの次は隼人君にサプライズ! 一度は帰国し、その数週間後、私は再びジャッポーネにやって来た。 『こんにちはー!!』 「んなっ、名前が何でここに!?お前、帰ったんじゃ…」 『一度は帰ったけど再び舞い戻ってきたよ、イタリアの果てより!』 「どっかで聞いたようなセリフだな、おい。今度は何で来たんだよ」 「私がお願いしたのよ、隼人」 「姉貴……ッ!?」 「安心なさい、ちゃんとゴーグルを装備しているわ」 私の後ろからひょこっと顔を出したのはビアンキ。 ゴーグルをつけているにも関わらず隼人君の怯えよう、よっぽどのトラウマがあるらしい。 ……私が遊びに行かなかった少しの期間で一体、何があったんだろう。 「姉貴!一体、どういうつもりだ!」 「以前から隼人が一人暮らしなんて心配でね、だからと言って私はリボーンの傍を離れる訳にはいかない」 「……」 「だから、親友の名前に頼んだのよ」 「はぁ?」 「いいかしら、隼人、よく聞きなさい」 「な、何だよ…」 『ビアンキ?』 「あぁ、名前、ちょっとすまないわね」 『え…?』 ビアンキは謝ると私の耳を両手で塞いだ。 聞かれたくない話があるなら私抜きで話せばいいのに。 「愛に歳の差なんて関係ないのよ。」 「なっ!?ちょっと待て!どうして、いきなりそんな話するんだよ…!?」 「名前は隼人の初恋の相手でしょう?」 「な、なん……っ」 「弟の事なら分かるわよ。だから昔、隼人がピアノを弾いてる間は名前を呼びに行かなかったのだから」 「……!!だ、だか…っだからってなぁ!今は別に何とも…っ」 「名前が帰ってからと言うもの、ため息が多かったのは誰かしら?」 「…ー…ッ!!」 「私とリボーンを見てみなさい、隼人と名前の歳の差なんて可愛いものよ」 「………」 「とにかく、名前と上手くやるのよ。…はい、名前、いいわよ」 『話、終わったの…?』 「えぇ、バッチリよ」 『それじゃ、隼人君!今日からよろしくね!』 「な…っ!!それは、どういう意味だよ…!!ま、まさかオレの家に転がり込む気じゃ…」 『へ…?あぁ、違う違う!いくら何でも、そんな迷惑はかけないよ!はい、これ!引越し蕎麦!』 「ひ、引越し、蕎麦……?」 『うん!』 隼人君の隣の部屋を指差すと察したみたいで開いた口が塞がらない。 そんな隼人君をビアンキは面白そうに口角を上げて見て、彼の耳元で何かをぽつりと呟いた。 「期待させたみたいで悪いわね、名前と一緒に住むのはまだ早いわよ、隼人」 「…ー…っ」 「何事も焦らずゆっくり、よ。」 「し、知らねぇよ、ふざけんなっ!!」 「ふざけてないわ。名前と隼人が上手くいけばいいと心から願っているわ」 「姉貴……」 「だってそうでしょう。あなた達が上手くいけば名前は後々、私の義妹。最高じゃない。どこにふざける要素があるというのよ」 「それが本音か、てめぇぇぇ!!」 隼人君の叫び声がマンションに響く。 叫んでぜぇぜぇはぁはぁしている隼人君。 そんな隼人君に今夜は一緒にお蕎麦を食べようね、って笑いかけたら照れくさそうにしていたけれどOKしてくれた。 『やった!』 「んな、喜んでんじゃねぇよ」 『だって、嬉しいんだもん!』 「……」 「それじゃ、私は帰るわね」 『えっ?ビアンキはお蕎麦、食べていかないの?』 「……先は長そうね、隼人」 「うるせぇよ」 『ビアンキ?』 「私には愛するリボーンが待ってるのよ、それにこれからはいつでも会えるでしょう?」 『……!そうだね!それじゃビアンキ、またね!』 「えぇ、またね、名前。隼人の事をよろしく頼むわ」 『うん!任せて!』 「………はぁ」 『……?何で、ため息を吐くの?』 「何でもねぇ。」 『それならいいんだけど…。あっ、そうだ!』 「何だよ」 『引越し記念?ん…、お祝い…?何でもいいや!ピアノ、弾いて欲しいな!』 「何でそうなるんだよ…!!」 『まぁまぁ、いいじゃない!』 「よくねぇよ、ったく、お前は……!!」 口ではそう言っても隼人君はちゃんとピアノを弾いてくれた。 そういう優しいところ、大好き。 『………』 「……」 ねぇねぇ、隼人君! これからはピアノを弾く時は一人で弾かないで私を誘ってね? いつもいつでも、一番、すぐ傍で君の音色を聴きたいの。 『……』 君の隣にいる事が嬉しくて、だけどドキドキして胸が騒がしい。 年下の君に、こんな気持ちになるのはおかしいかな? でも、好きなの。 ピアノの音色も、真剣な横顔も不器用な笑顔も、隼人君の全部が大好き! 『………』 きっと、にぎやかで楽しい毎日になるよね! 私たち、二人一緒なら! 今日からお隣さん! 「おい、次は何を弾いてほしいんだ……って、ちょっと待て、名前?」 『すー……』 「名前!お前、まさか、眠ってるんじゃ…」 『………』 「起きろっつーの!さっさと自分の部屋に戻れ!」 『…ー…ん、う…』 「……っ」 『はやと、くん…』 「…ー…生殺しだろ、ふざけんな…っ!!」 end 2011/05/05 |