私の好きな人は同僚のG。
ぶっきらぼうで分かりにくいけど優しくて、いつの間にか好きになっていた。

そして好きになってから、気づいた事がある。



「…少し町に出て来る」

「おい、ジョット、オレも一緒に行くぜ」

「見回りくらい一人で大丈夫だが…」

「心ここにあらずな状態でふらふらほっつき歩いてボスに何かあったらどうするんだよ」

「…そう言われては断れないな。ならば共に来てもらうとするか」

『……』



一世に関して過保護すぎると思うんです。

ボスと右腕だから仕方ないとは思っても、二人きりになれる時が中々なくて最近は悩みの種になりつつある。



「名前、Gと町に見回りに行って来る。留守を頼むぞ」

『…はぁーい』

「どうかしたのか、お前」

『…何でもないよ?』

「……なら、いい。」



留守番、頼むなって机に伏せていた私の頭を撫でGは一世と共に仕事場を後にした。

パタンと閉められた扉を見てGにくしゃりと撫でられた場所を手で触れた。
Gには何て事がない扱いでも、私にとっては特別な扱いに感じてしまう。

だって、Gが大好きだから。
これだけで胸がいっぱいになっちゃって、ため息が出ちゃう。



『……というか、頭を撫でるって子供扱いされてるような』



異性として見られてないんだろうなぁと思ったら、何だか仕事をする気になれない。
だけど、やる気が出ないからと言って仕事はサボれない。

休憩はおしまい。
うーん、と背筋を伸ばして書類に目を通した。


***


集中して机に向かって約二時間。
一世とGはまだ戻って来ない。
いつもより少し遅いなぁ、と未だに開かないドアを見つめた時、調度よく開いた。



『あ!おかえりなさい!』

「あぁ、ただいま。何もなかったか?」

『大丈夫だよ!仕事を終わらせたから一世、確認、お願いね!』

「あぁ。助かった、ありがとう。」



入って来たのは一世。
その隣には、いつもいるはずのGの姿はなかった。

不思議に思って一世の後ろを見てもいない。
どうやら本当に一人らしい。珍しい。



『……』

「Gならば、もうすぐ来るぞ」

『へ…!?な、なんで!?』

「それだけ、きょろきょろと落ち着きなかったら誰でも分かる」

『う……』

「…いや、名前が分かりやすいのかも知れないな」

『そんな事ないもん…』

「ははっ、そう拗ねるな」



一世は穏やかに笑うと、まるで先程のGのように私の頭を撫でた。



『……一世まで私を子供扱いしないで』

「子供扱いなどしていないつもりなんだが」

『だって頭、撫でてるじゃない』

「……こう、調度いい位置にあったものでな。嫌だったか?」

『嫌じゃないけど…』

「…こうして撫でていると思い出すな」

『……?』



何を思い出しているのか、一世はとても優しい笑みを浮かべた。

そんなに優しい顔をするなんて、もしかして好きな人のこと?
あれ…?でも、私で好きな人を思い出すっておかしい話だよね?



『……?ねぇ、何を思い出すの?』

「つい、この間までよく、この屋敷に来てたんだ…」

『……?お客様なの?』

「あぁ、透き通るような瞳、柔らかで艶のある毛並み…」

『け、毛並み…!?』

「あぁ、加えて鈴がなるような声で甘えるんだ、あの白い猫は」

『猫……!?』

「最近、来てくれなくてな。元気にしているといいんだが」

『……』

「とても可愛らしい猫なんだ。雰囲気など名前に似ていて放っておけなくてな」

『そ、そうなんだ?』

「あぁ。今、どこにいるのか心配でたまらない」

『……にゃあ』

「ふ…っ、励ましてくれているのか?可愛いな、名前」

『にゃー…』



試しに猫の鳴き真似をしたら、それはもう優しく微笑まれて頭を撫でられた。

可愛いとか褒めてくれてるのに全然、褒められた気がしないんだけどーっ!!
本人、大まじめ故に子供扱いより酷いよ、一世!!

猫扱いなんてしないで…!



『まさか、さっき出かけたのは見回りついでに探してたんじゃ…』

「Gには内緒だぞ」

『………』

「だが、Gの事だ。もうばれているかも知れないな」

『……』



あぁ、ボンゴレファミリーの将来が不安になってきた…!!
ボスとしての器は申し分ないのに、のほほんしすぎだよー!
そりゃ、一世はやる時はやるし平和が一番だけど!

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