あぁ、いつまでこうしてなきゃいけないんだろう?
苦笑いを浮かべながら静かに撫でられていると一世は何か思い出したように声を出した。



『どうしたの?』

「先程、一世まで子供扱いして、と言ったな」

『え?』

「Gだって、別に子供扱いしている訳じゃない」

『な、何でGのことだって分かったの!?』

「見ていれば分かるだろう」

『そんなに私、分かりやすい!?』

「そう慌てるな」

『慌てるよ!』

「大丈夫だ、ボンゴレファミリーは恋愛は自由だ」

『…って、言われても!Gは私のことなんて…っ』

「何とも思っていないならGは構わないと思うぞ」

『で、でも子供扱いじゃ…』

「いいか、名前。Gの態度、あれは…」

「何を話しているんだ、ジョット、名前」

「あぁ、G。別に大した話ではない」

「……」

『G…?』



私達が話しているとGがやって来た。
一言、言うなり黙ってしまったGの視線は私の頭。

私の頭には一世の手が置かれたまま。
それに気づくと一世は慌てて手を離した。



「すまないな、G」

「オレに謝る事じゃねぇだろ」

『あ、そういえば頭に手を置いたままだったね、一世…』

「ったく。お前が撫でるのは、こいつだろうが」

「ん…?あぁ、お前は…」



Gの片手を見ると首ねっこを持たれ捕獲された白い猫。
一世を見ると嬉しそうに、にゃあと短く鳴いた。



「ほら、こいつを探してたんだろう」

「やはりGには分かってたんだな」

「そりゃ野良猫が好きそうな場所ばかり見回りしてりゃあな。最近、こいつが屋敷に来なかったとピンと来たんだ」

「さすがGだな。」

「ほらよ」



Gが猫を下ろすと一世の足元に擦り寄って甘えた。
その様子を見てGは安心したように息をついた。



『G、猫を探してたの?』

「まぁな。屋敷裏の木に登って降りられなくなってたみたいだぜ」

『へぇ…、見つかってよかったね!』

「これでジョットも仕事に身が入るだろ」

『猫と遊んじゃうかもよ』

「……」

『ほら、もう遊んでる』

「…おい、ジョット」

「ん?」

「ん?じゃねぇ、仕事を忘れてねぇか」

「これからやるつもりだ。…あぁ、そうだ、名前」

『なに?』

「ちょっとこっちに来てくれ」

『……?』



どうしたの?と近寄ると一世は私の耳元に唇を近付けて内緒話。

何の話と思いきや、予想もしてなかった言葉が耳に入りびっくりして後退りした。
真っ赤になった私を見ると一世は笑って猫を撫でた。



『……!!』

「おい、ジョット。名前に何を吹き込んだんだよ」

「別に何でもない。Gにちょっとした礼のつもりだ」

「…どういう事だよ」

「それはまたいずれ、な。それよりも名前と一緒にこいつの餌を買って来てくれないか」

「はぁ?」

「オレは手が離せないんだ。頼めるか、名前」

『わ、私ならいいけど…、その…』



控えめにGに視線を向ける。
Gは呆れたように頭をかくと私の手を引いて歩き出す。



『えっ、G!?』

「餌、買いに行くぞ」

「頼むな、G。名前、先程の事を忘れるなよ」

『う、うん…』

「……」



Gと一緒に仕事場を出る。
隣にいるGを見ると少し照れ臭いようで視線を外していた。

私は隣を歩きながら一世との内緒話を思い出す。



Gは名前のことを子供扱いしてるんじゃない。

あれはGなりに特別扱いしているんだ。




一世が言っていたこと、本当なのかな?
ごく自然に繋いだままの手を見ると自惚れちゃう。



『……』

「おい、何、ぼーっとしてるんだ?」

『な、何でもないよ』

「嘘つけ、さっきジョットに何を言われたんだよ」

『えっ!?そ、それは…』



だから、我が侭を言ってやるくらいが調度いいぞ、名前。

頑張れ。




『……っ!』



一世との内緒話の続きを思い出し心臓が大きく鳴った。

いいのかな?
本当に、ちょっとだけ我が侭になってもいい?



「名前?」

『あ、あのね、G』

「ん…?」

『猫のご飯を買ったあと…寄り道しても、いい?』

「寄り道?買い物でもすんのか?」

『えっと、うん…。その…、そんな感じなんだけど、買い物じゃなくてもいい、って、言うか…つまり……』

「つまり?」

『……っ』












そう呟いて、繋いだ手を強く握ったら彼は耳まで真っ赤になった。



「……っ」

『だ、だめ、かな?』

「……んな訳ねぇだろ」

『……!』



end



2011/05/04

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