Gと私はボンゴレファミリーに所属していて、同僚という関係だった。 私はGのことがずっと好きで地道な努力をした結果、念願叶って恋人に昇格したのは先月のこと。 付き合い始めって一番、楽しい時期じゃない? なのに私達ときたら全然、恋人らしくない! そりゃあ、Gが所構わずイチャイチャして愛を囁くタイプには思えないけど、いくらなんでも淡泊すぎないかな? だって、二人きりで町に出かけた時、腕にぎゅっと抱き着いたら 「名前、暑苦しいから離れろ」 って言われて私は渋々離れたの。 せっかくのデートなのにテンションが下がって俯いちゃった。 またある時はね。 お茶とお菓子を差し入れしたら最初は休憩するって言って私と話しながら飲んでたんだけど、そのうち書類に目を通し始めたの。 休憩もきちんと取れないくらい忙しいのかなぁって思って、椅子に座るGの傍に寄って書類を見たんだ。 でね、傍に寄っても私をまったく見てくれなかったから後ろからぎゅーって抱き着いちゃったの! ちょっとは見てくれないかなぁって期待してたのにGはなんて言ったと思う? 恋人に抱きつかれて「重い」って言ったんだよ! さすがの私も、その時ばかりはそのまま腕で首を締めそうになっちゃったよ! 「締めそうになっちゃった、じゃねぇだろ!実際にぐいぐい締めただろうが、てめぇは!」 『やだ!Gってば聞いてたのっ!?私は大親友の雨月と話してるのに!』 「目の前で話してりゃ誰でも聞こえるだろ…」 「名前、Gがこうなのは今に始まったことじゃないでござるよ」 『それは分かってる!そういう所が好きなんだから!だけど少しくらいはいいじゃないって思うの!愛情プリーズ!!』 「……っこれ以上、下らねぇことを話すつもりならオレは執務室に戻るからな」 『えーっ、もうっ!?というか下らなくないから!』 立ち上がり扉に向かうGの腕にくっついて引き止める。 それでもGは私をずるずる引きずって扉まで歩く。 こうなってはもうだめ。 Gはどうしても執務室に戻るつもりみたい。 私は諦めてゆっくりと腕から離れたらGは「また後でな」と言い残して部屋を出て行った。 ぱたんと閉じた扉を見ていたら負けた気分になっちゃって肩を落として、ため息。 私とGの会話に先程からほとんど入り込めなかった雨月を見ると、のほほんとお茶を飲んでいた。 「名前とGは本当に仲がいいでござるなぁ」 『今のどこが仲良く見えるの!』 「……?」 ツカツカと歩いて席に座ると雨月はにこにこして笛を吹く。 雨月って戦いの時はキリッとしてるのに今は平和の主張のように、のほほんのんびり。 そんな雨月を見ていたら怒ってるのが馬鹿らしくなっちゃう。 「今日は暖かい良い天気でござるなぁ。」 『……』 雨月の雰囲気にすっかり癒されて椅子に座ると私は独り言のように呟く。 それに気付いた雨月は笛から唇を離すと私の話に耳を傾けてくれた。 『告白は私だったのね』 「……?」 『OKしてくれたけど返事もさっぱりしててさ、Gは私のことが本当に好きなのかなぁ…』 だって、よく考えたらGから好きだって言われたことないんだよ? 本当の本っ当に一度もないんだよ! 私が積極的に気持ちを押しつけたからGは断れなかったのかなぁ。 そう、ぽつりぽつりと呟いて、しゅんとしたら雨月はふっと笑って見せた。 「心配ないでござるよ、名前」 『でも…、さっきのやり取りとか絶対にうざいって思ってるよー…』 「愛らしい、と思ってるはずでは?」 『それは絶対にない。』 「ははっ、きっぱり言うでござるなぁ」 『だって…』 一度、落ちたテンションは下がって行く一方。 うなだれていると見兼ねた雨月は笛を吹き始めた。 『……』 綺麗な音色。 何だかすごく落ち着く。 聞き惚れていると雨月は最後まで吹いてくれた。 笛をテーブルに置くと雨月は静かに息を吸って私に笑いかける。 「…静かでござるな。」 『私だって静かな時はあるもん』 「名前がそんな風だとGも心配になって仕事に集中が出来ないようでござるよ」 『それも絶対にない』 口を尖らせている私とは正反対に雨月はさっきからにこにこしてる。 何でそんなににこにこしてるんだろう? 『雨月、何かいいことあったの?』 「おや?どうしてそう思うのでござる?」 『だって、さっきからにこにこしてばっかり』 「……、それは」 『あ、やっぱりいい事あったの?』 雨月は何かを考えているようで言葉を詰まらせる。 首を傾げて見せると雨月は穏やかな笑みを浮かべた。 「こうして名前と一緒に過ごしているからでござるよ」 『え……っ』 いつもより低い声。 けれど怖いという訳ではなくて、穏やかで優しく耳に響いた。 |