彼がボンゴレ一世でなくても、あなたへの忠誠心は揺るがない。
私の命が尽きるまで、あなたの傍にいる。

以前、どこまでもお供します!なんて言ったらジョット様は笑っていたっけ?



『……』



私は昔、ボンゴレ一世、ジョットに拾われた。
記憶に残ってない親に捨てられて生きる事に精一杯だった。
生きるために悪いことだってした。

だけど、そんな汚い私にあなたは見つけて拾ってくれた。

暗い路地裏で一人ぼっちで蹲っていた私においでって言って手を差し伸ばしてくれたから上を見上げた。

一人ぼっちだった私に声をかけてくれたから、その日が青空だったと言う事に気付いた。



『………』



その日から私はジョット様に仕えると決めたんだ。
さすがにマフィアのボスだと知った時は驚いたけれど。

部下になって長い時間、共に過ごした。
いつしか恋心が芽生えたけれど、それは胸の奥に隠した。

だって、ジョット様の傍にいて役に立つ事が私は一番の幸せだから。
今以上を望むなんてしない。望んじゃいけない。

一定の距離。
守護者がいてジョット様もいて、みんなで騒いで、こんな日々がいつまでも続くって思ってた。


なのに……!!



『ジャ、ジャッポーネって一体、どこなんですか、ジョット様…っ』

「そんな事も知らないのか、お前は」

『そんなのいいんです!大体、ボンゴレを引退するなんて聞いてません…っ!!』

「言ってないからな…」

『……っ』

「私は争い事は好まない。ボンゴレは二世の意志に任せる。繁栄させるも滅ぼすも、あの男次第だ。」

『でも…っ』

「お前もよく働いてくれたな、名前…」

『………っ』



グローブを外して大きな手で撫でられる。
目を細めて優しい瞳で私を見つめるジョット様。

こんなの、お別れみたいで嫌だ。
だけど、撫でてくれる手を拒否するなんて出来なくて静かに受け入れていた。



『いつ、発つんですか…?』

「今夜だ」

『えっ?こ、今夜…!?』

「あぁ、ここに長居はしない。」

『……っ』

「何故、そんな顔をする?」

『だ、だって…っ』

「構わない。話してくれ。」

『わ、私……』

「……」

『ジョット様と離れる、なんて…』



あぁ、どうしよう。
困らせたくないのに、悲しくて涙が出てきた。
だけど、何とか声を振り絞り最後まで言葉にすると沈黙が続いた。

一部下がこんな事を言うなんて図々しいにも程がある。
今度はジョット様の意志を継ぐ二世様に仕え支えなければいけないのに。

そんな私の気持ちとは裏腹にジョット様の笑い声が沈黙を破る。



「…っふ」

『な、何で笑っているんですか…!?』

「…っはは、すまない。お前が可愛いことを言うから」

『……!?』

「私が名前を置いて行くとでも思ったか?」

『え…っ!?』

「私の記憶が正しければどこまでもお供します、と言っていたと思うが?」

『ジョット様…っ!それじゃ、傍にいても…ジャッポーネについて行ってもいいんですか!?』

「あぁ…、私の傍にいてくれないと困る、名前」

『……!!』



おいで。
そう言って、あの時のようにジョット様は手を差し出す。

迷いなんてない。
気持ちはもう決まってる。

そっと手を重ねるとジョット様は微笑んで私の手を握ってくれた。

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