ジャッポーネのボンゴレアジト。 ウチは休む暇もなくモスカを作っていた。 さすがに少し疲れたな、と言う所で鳴ったコール音。 先日、出した名前への手紙が無事に届いたようで案の定、電話がかかって来た。 名前の事は好きだったけどそれは幼なじみ、友人として。 それ以上でもそれ以下でもなかった。 そのはずだったのに。 「……」 久しぶりに聞いた名前の声はやっぱり怒ってた。 だけど落ち着く。 イタリアにいた時と同じで変わらず煩いのに、不思議と落ち着けて邪魔にならない。 名前がいないと気が引き締まらないと気付いたのはジャッポーネに来てからだ。 ウチにとって特別だったんだってすぐに分かった。 一人でいるよりも名前が傍にいる方が安らげて、好きだから。 「………」 声が聞きたくて、電話をかけようとしたけれど出来なかった。 いざ、かけようと思っても、何を話せばいいのか分からなくて。 だから書いたんだ、手紙。 気持ちを何か形にしたくてあんたの事、好きだって日本語で綴った。 名前は日本語なんて読めないから届く事はない。 最初から手紙で伝えようなんて思ってないから、それでいい。 文字じゃなく言葉でちゃんと伝えたいから。 「……(ウチが好きだなんて言ったらどう思うんだろうな)」 ≪…ー…スパナ≫ 「……、…?」 ウチから切る事は何となく、したくなくて放置していた受話器から微かに聞こえた声。 手に取ると通話中の文字。 てっきり名前が電話を切ったものだと思っていたけど切ってなかったのか。 「………」 ≪…ー…大好き≫ 「…ー…っ!!」 思わずピタリと身動きが止まった。 聞き間違いなんかじゃない。 確かに大好き、と聞こえてドキドキと鼓動が早くなった。 ………顔、熱い。 「……、あんたには敵わないな。」 名前は電話がまだ通じてるなんて思ってないだろう。 名前に気付かれないように静かに通話を切った。 イタリアに帰ったら一番に名前に会いに行こう。 名前はおかえりって言った後、きっといつもの小言が始まるだろうけど、そんなの関係ない。 きつく抱き締めて、ウチも好きだって伝えよう。 end 2010/05/28 |