十二月二十四日、今日はクリスマスイヴ。
そして明日はついにクリスマス!

今年のクリスマスは仲間とパーティーをする予定だから今から楽しみ。
ボスであり恋人である大切な骸様にはもちろん、みんなにもプレゼントを用意した。

…喜んでくれるといいな。



『早く明日にならないかなぁ』



荒れ果てた廃墟でも住めば都。
今ではすっかり我が家となった黒曜センターの自室で明日の事を思いながら、うきうきしていると、ふいにノックする音が聞こえ首を傾げる。

こんな時間に誰だろう?
声をかけると犬と千種が顔を覗かせた。



『どうしたの?』

「おっ、いたいた、やっぱ部屋にいたびょん」

「………」



目を輝かせた犬に神妙な面持ちの千種。
何かあったにしても真逆の表情をした二人からは想像がつかない。

でも、犬が張り切ってるのに千種は浮かない顔をしてるのは、犬がろくでもない事を考えているんじゃないかとピンと来た。
警戒しつつも私はここに来た用件を聞いてしまう。



『…何か用?』

「これ!これを見ろびょん!」

『これって…?』

「見て分かるだろ!サンタ服だびょん」

『それは分かるけど…』



犬が見せてきたのはサンタクロースの服。
ふわふわのファーがついた赤い帽子付き。

見た所、ワンピースタイプのもので女性用らしい。



『犬が何でこんなの持ってるの?』

「お前にサンタ役をやってもらおうと思ったんだ!今夜、これを着て骸さんの枕元にプレゼントを置いてほしいびょん!」

『こういうのはクロームの方が似合うんじゃない?それに骸様の枕元にこっそり置くだけなら、わざわざ着替えなくても…』

「あんなブス女に似合う訳ねぇだろ!それに雰囲気ってのが大事なんだよ!」

『雰囲気ねぇ……、というかブスじゃないよ、可愛いじゃん!明日、普通に渡すんじゃだめなの?』

「普通に渡すんじゃ面白くないだろ!」

『…じゃあ、犬がサンタさん役すれば?』

「オレはこんな女の服、着れねぇびょん!」

『ま、まぁ、それはそうだけど……』

「って事で今夜、これを骸さんの部屋にこっそり置いてくれびょん!あとついでのついでに、本っ当についでにブス女にもな!」

『えっ?あっ、ちょ!犬……!!』



捲くし立てて話すと先程から一切、喋らない千種を置いて犬は出て行ってしまった。
千種に視線を向けると眼鏡をくいっと指先でかけ直し、ため息を吐いた。



「バカ犬…」

『ねぇ、もしかして本当はクロームにプレゼントを渡したいだけ?』

「……多分。普段が普段だから直接、渡すの嫌なんだと思う」

『…私もそう思った。まぁ、あの二人が仲良くなるきっかけになるならサンタさん役やろうかな』

「じゃあ、これ…」

『何これ?』

「オレからも骸様達に…。」

『ふふっ、了解!私の分も今夜、プレゼントしちゃおうっと!着替えるのは夜中まで待たなきゃ!』

「名前…」

『どうしたの?』

「これ」

『へ?』

「……、……」

『もしかして私にもプレゼント…?』

「…当たり前。」

『……っありがとう、千種!今夜、千種の所にもサンタさん、来るからね!』

「ん……」



千種の所にもサンタさんが来る。
その意味を察してくれたのか、千種は静かに微笑んだ。
他愛もない話をしていると、またもや私の部屋のドアをノックする音が響いた。



『はーい』

「まだ起きていたのですか、名前……と、千種もここでしたか」

「はい…、もう戻ります…」

「クフフ、そう気を遣わずに」

「いえ、もう遅いですから…」



おやすみなさい、そう言って千種が部屋を出て行く代わりに骸様が入って来た。
私をじっと見つめる骸様。
何かあったのかな?



『骸様?どうしたんですか?』

「いえ、少し顔を見たくなりましてね…」

『え…?』

「…何でもありませんよ。クフフ、もう遅いんですから眠りなさい。夜更かししてはいけませんよ」

『し、しませんよ!夜更かしなんて…!』

「もう十分、夜更かしの時間ですが?」

『う……っ』

「さぁ、休みなさい、名前」

『お、おやすみなさい、骸様…』



唇にちゅっとキスを落とし私の頭をくしゃりと撫でた骸様は満足そうに微笑む。
怪しまれるといけないから形だけ眠るふりをしてベッドに入ると骸様は自室へ戻っていった。



『……』



ごめんなさい、骸様。
今日だけは言い付け守らず夜更かししちゃいます…!!

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