骸様に手を引かれるまま桜並木を歩いていると、ある場所に辿り着いた。
どうやら骸様の目的地はここらしい。



「ほら、着きましたよ」

『わぁ…!』



辿り着いた場所にはチューリップがたくさん咲いていた。
手入れの行き届いた花壇には赤いチューリップの他に白や黄色など色とりどりの花が植えられている。
桜とはまた違った春らしさに心が弾む。



「名前にちょっとしたプレゼントです。先日、見つけた場所なんですよ」

『………』

「気に入りませんでしたか?」

『いえ!綺麗です!すごい!』

「桜に拘らなくとも春は綺麗な花がたくさんありますからね、幻覚よりも本物の方がいいと思いまして」

『骸様!』

「はい?」

『今度、ここにピクニックに来ませんか?お弁当を持ってゆっくり過ごしたいです!』

「ピクニック、ですか。クフフ…、えぇ、そうですね。また来ましょう。」

『はい!きっと、みんなも喜びます!』

「………」

『………?』

「……、みんなで、ですか。」

『……?骸様、どうかしましたか?』

「…いえ、何でもありませんよ」



具合でも悪いのかと心配すれば気にしないでください、といつもの微笑みを私に向ける。

気になるものの骸様が手を引くものだから二人でチューリップを見ながら歩く。
しばらくして一休みするためベンチへと座った。



『本当、綺麗ですね!』

「えぇ、とても。…それにしても君も花に興味があるのですね」

『ど、どういう意味ですか、それはっ!』

「そのままの意味ですよ、少し意外だったもので。」

『どうせ、私には花よりお菓子とかの方が合ってるって言いたいんじゃ…っ』

「そこまでは言ってないですよ。ですが花に興味あるのであれば…」

『骸様…?』

「春は赤いチューリップ、夏には向日葵、秋には…そうですね、白の薔薇を君に贈りましょう」

『え…?な、何でですか?』

「僕が君に贈りたいからですよ。受け取ってくれますか?」

『…はい!嬉しいです!』

「……少しは意味を分かって欲しいのですが君にはまだ早いようですね。まったく。」

『……意味?どういうことですか?』

「さぁ。それはまだ名前には内緒です」

『……?』

「どうしても気になるならば花言葉を調べてみなさい」

『花言葉…?』



内緒が気になるから機会があったら調べてみようかな。

骸様の内緒が気になるものの、これからの季節、楽しみが増えて自然と綻んだ。
春夏秋冬、それぞれの季節にしか見れない色んな花があるんだなと改めて思う。

そう思ったらある事に気付いた。



『あっ!』

「どうしたんです?」

『骸様、冬!』

「冬…?」

『はい!春、夏、秋に骸様が私にお花を贈ってくれるなら、冬は私が骸様に花を贈らせてください!』

「……また突然に思いつきますね、名前」

『いいじゃないですか!何かリクエストありますか?』

「…何でもいいんですか?」

『はい!』

「……、それではヤドリギをお願いします」

『……?ヤドリギってクリスマスの?』

「えぇ、何もヤドリギそのものとは言いませんよ。例えばヤドリギをあしらっているリースなどでも構いません。」

『じゃあ、クリスマスツリーも用意してみんなでクリスマスパーティーですね!』

「……、…またみんなですか」

『……?』

「…気にしないでください。」

『えっと、じゃあ、綺麗に飾りつけ出来るといいですよね!ケーキはチョコにしましょうね!ねっ、骸様!』

「そう、ですね……」

『骸様、どうかしました?さっきから少しおかしいというか…、やっぱり具合が悪いんじゃ…っ』

「大丈夫ですよ、これからどうしようかと少々、考えているだけです」

『何をですか?』

「それは秘密です。」

『えーっ!今日は内緒だとか秘密がやけに多いですよ、骸様!』

「名前、君にはいずれ教えますよ…、というよりも知ってもらわなければ…」

『……?』

「…今は気にしなくていいです。…とりあえず、きちんと約束をしましょうか」

『え…?』

「春、夏、秋、僕は君に約束した花を贈ります、そして冬には…」

『私が骸様にヤドリギを…?』

「そういう事です。」



骸様は微笑むと私の小指に自分の小指を絡める。

指きりだ。
きっと指きりなんてしなくても、骸様は約束を守ってくれると思うけれど、絡まる小指を見たら嬉しくなった。



「クフフ、この年になって指きりなんて子どもですかねぇ」

『いいえ!嬉しいです!』

「そうですか?」

『はい!…指きりげんまん!嘘ついたら針千本……って、いうのはちょっと怖いです、ね』

「お互いに破らなければいいのですよ。そのための指きりです」

『……っはい!』

「クフフ、いい返事ですね。さぁ、そろそろ帰りましょう。」

『あ……、はい…!』



行きと同じように手を繋ぎ、私達は歩き出す。
帰りの桜並木も骸様の幻覚で再び花をつけていた。

ふわりふわりと舞う花びらは、とても幻想的。
綺麗と呟くと骸様は返事の代わりに微笑んで繋いでいる手に力を込めた。



『……っ』



そっと手のひらに舞い降りた花びら。
幻覚だけれど、今、確かにここにある花びらに願う。












小指を絡めて約束をしたら一緒に叶えていきましょう?



end



2010/05/24
菜摘様へ
三周年フリリク企画
リクエストありがとうございました!

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