新たな敵が現れる。 振り向くと、そこには小柄なお爺さんが怪しく笑いながら立っていた。 そのお爺さんはまるで敵の証だと言うように黒曜の制服を着ている。 「あの強欲なM・Mが倒されるとは実に気分がいいものですねぇ」 いつの間にか空には私たちを囲むように黄色の小鳥がパタパタと飛んでいた。 小鳥は私達の周りをぐるりと大きく飛んで主の肩へと落ち着いた。 どちらか一つ 「ひぃぃーっ!!また敵ーっ!?」 『……っ』 「誰だ、てめーは!」 「私の名はバーズ。この名の通り鳥を飼うのが趣味でして…」 『と、り…?』 「えぇ、この子達です。可愛いでしょう?」 「随分と余裕があるじゃねぇか!オレがさっさと片付けてやるぜ!」 「おっと、そう急がず…」 「あ゛ぁ…?」 「ウジュジュ、自己紹介も済んだ所でこれを見てください。」 ニタリと不気味な笑顔を向けられ、私たちに緊張が走る。 言われるまま壁に映し出された映像に視線を移すと、そこには見慣れた風景と、ある人物が映っていた。 「きょ、京子ちゃんと…」 『ハルちゃん…っ!?』 「てめぇ、どういう事だ…!!」 「これは私の可愛い鳥達に埋め込まれた小型カメラから送られています」 「何で京子ちゃんとハルが…!!?というか今、後ろに何か…っ」 「おや、気づきましたか?あれは私の忠実な双子の殺し屋なんですよ」 「殺し屋……!?」 「えぇ、凶悪な殺人犯故、刑務所にいる十年間は拘束具が外してもらえなかったんですよ。」 『……!』 「だから、ほぉら。あなたのお友達と遊びたくて仕方ないようです」 京子とハルちゃんの背後で鋭い爪をキラリと光らせている双子の殺し屋。 二人は殺し屋の存在に気づかないようで普段通り。 ハルちゃんは歩きながら参考書を読んで、京子は花と合流して他愛のない会話をしている。 「てめぇ、あいつ等は関係ねぇだろ…!!ここで果てやがれ!」 「おっと、私に攻撃してはいけませんよ」 「アホ女達が人質って訳かよ…ッ!!」 「私の言う事を聞いて頂ければ彼女達には攻撃はしません」 「……っ条件は何だ?」 「そうですねぇ、まずはボンゴレ十代目を殴ってもらいましょうか。」 「え……っ!!」 「じゅ、十代目を…!?」 「もちろん、お仲間全員でですよ。ほら、沢田君、隠れないで出て来てくださいねぇ」 「ひぃぃーっ!!」 「…ー…ッ!!」 『……っ』 ツナくんを殴るなんて事、出来るはずがない。 みんな、そう思ってる。 けれど、選択の余地はないのか、私たちを急かすように双子の殺し屋は攻撃をするため構えた。 「断ってもいいですよ」 「な……!!」 「私のもう一つの趣味は人を驚かすことでして……例えば彼女達の髪が燃え上がったらさぞいい顔をするでしょうねぇ、興奮して鼻血が出そうだ…!!」 「そんな……っ」 「ウジュジュ…!!言ったらやりたくなっちゃいましたよ…!」 「何を言っていやがる!ヘンタイ野郎が!」 『……!』 殺し屋はライターを持ちながら京子とハルちゃんの背後に回る。 もう少しで髪に火がついてしまいそうだけれど、画面の向こうには手の出しようがない。 『…ー…っ』 優しい京子とハルちゃんに怪我をさせたくない。 気がついたら私はバーズさんの前に出ていた。 『待って……!!』 「おや、お嬢さん、どうしましたか」 『燃やすなら、私の髪に、して…』 「ウジュジュ…!!そんな事を言ってもいいんですか?」 『いい。だから、京子とハルちゃんは…っ』 「この私自ら火を点けられるとは嬉しいですねぇ…!!」 「な……っ」 「お、おい!羽依…!!」 「羽依ちゃん!?だ、だめだ!そんな事、やめてくれ!!」 『でも……!!』 「ウジュジュ!?あなた、羽依さんと言うんですか…!」 『……っ』 「だ、だめだ!だめ!!」 『ツ、ツナくんっ!?』 「わ、分かったから!!皆、オレを殴って!!」 ツナくんはそう叫ぶと私を引き寄せてバーズさんから引き離す。 そして、すぐさま山本くんと獄寺くんが私の前に立ちバーズさんを睨んでいた。 「羽依、下がってろ」 「お前が相手をするヘンタイはシャマル一人で十分だろ」 「シャマル先生もだめだ」 「冗談を本気で返すんじゃねぇよ、野球馬鹿」 「…チッ、いい所だったのに。じゃあ、早くボコボコにしてくださいよ」 「は、早く!!オ、オレならだ、大丈夫、だから…!!」 殴ってと言われても、そんな事は出来るはずがない。 だけど、殴らなかったら京子とハルちゃんが危ない目に合う。 ツナくんも京子もハルちゃんも大切な友達。 どちらも傷つけたくなくて、傷つくところなんて見たくない。 一つしか選べない選択肢は私たちを悩ませた。 「は、早く…!!獄寺君、山本、羽依ちゃんも…!!」 『ツナくん…っ』 「ですが…っ」 「じゃ、じゃないと京子ちゃんたちが…っ」 「ツナ……」 「……!!」 『……っ!?』 「なっ、姉貴…!!」 「……!!」 悩んでいた所でツナくんを殴ったのはビアンキさんだった。 吹っ飛ぶほどの勢いだったけれど、加減していたようでそれほど痛いものではなかったらしくツナくん自身、驚いている。 「あ、ありがと、ビアンキ…」 「……嫌われ役は慣れているわ」 「お見事!今のクリアっぷりに免じて次で最後にしてあげましょう」 「えぇーっ!!まだあんのーっ!?」 「えぇ、次は……」 「……っ」 「このナイフで沢田さんを刺してください」 殴る事だって出来なかったのに今度は「ナイフで刺す」なんて出来ない訳がない。 バーズさんはそんな私たちを笑って、再びモニターに注目させた。 |