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世界が変わる音がした

「青木さんのこと、す、好き、なんだ!」


告白された。すごく嬉しいことだ。好きだと言われて嫌になる人なんてたぶんあんまりいない。素直に受けとめればありがたいことなのだから。


『…あ、はい、ありがとうございます』


だけどこの告白を素直にありがたいと思えないのは私の心がひねくれてるのだろうか。でもさすがにこれは許して欲しい。私だって喜んでたさ、最初は。 でも、でも。


『あの…な、7回目でも私の気持ちは変わらないんで…』


そう、7回目。目の前の3年A組の竹下くんからはもうこれで7回目の告白となる。3回目あたりまでは一途だなぁと思っていたけれど、だんだん怖くなってきた。だってもうそろそろ諦めてくれても…、私は何度言われても変わらないのに。


「ねえ、なんで?そろそろ付き合ってくれないの?もう7回目だよ?僕と付き合ってよ!」


あー、こうなるから嫌なんだよなぁこの人の告白…。ずいっと顔を寄せてくる彼の鼻息は荒くて、今日はどんなふうにして逃げようかなと思った。ああ、いつもなら神楽か妙ちゃんについてきてもらってたのに今日は2人とも用事があってひとりで来てしまったわけだが、完全に間違いだった。


「桃花っ、付き合って!」



え、ちょ、ええ!?
なんかいきなり名前呼びに変わってるし、しかも、あれ、ちょっ、押し倒されてる!?待って待って待ってここ屋上!屋上だから!いやそういう問題じゃなくて何考えてんのこの人っ!あああやっぱり神楽あああ妙ちゃんんんん!


「僕桃花のことが大好きなんだ!」


じゃあこの押し倒すのはやめてください!


「何してんの」


ふいに、この場を一気に冷たくさせる声が響いた。聞き覚えのある声に私は竹下くんの奥を見た。にこにこと可愛らしい笑みで屋上のコンクリートに倒れ込む私たちを見下ろしている。


『か、神威くん!』

「何してんのって聞いてるんだけど」

『たす、たすけ、』

「お前に聞いてるんだよ」

「うわっ!?」


神威くんは私の上に乗っかる竹下くんの首根っこを掴んで持ち上げた。重さはなくなって私も急いで体を起こす。神威くんは竹下くんを持ち上げたまま、もう一度言った。


「何してんの?」

「何だよお前っ、僕が彼女と何してたって関係ないだろ!」

「彼女…?」

『えっ(なぜ睨む!)』


神威くんから冷たい目線が送られてきた。蒼い瞳に私は思わず固まってしまう。なんで睨まれるの私!しかも彼女じゃないですけどもっ!


「ふーん。ま、なんでもいいけど」

『ええ』

「俺の昼寝場所で汚いセックスしたら、殺しちゃうぞ」

「…!」

『(なんつーこと言うんだこいつ…)』


神威くんはとても怖い。さすがの竹下くんもおぼつかない足取りでこの場から逃げていった。私はそんな彼の小さな背中を、屋上の扉が閉まるまで見つめていた。


「まさかあんたがこんなとこでヤっちゃうような変態だったなんてネ」

『ち、違うよ!あれはむしろ襲われそうに!』

「彼氏なんじゃないの」


はしごをのぼって給水塔の上に行く神威くんを私も追いかける。


『彼氏じゃない!7回目の告白!』

「へえ、好かれてるんだー」

『…うんすごく』

「桃花ちゃん彼氏いなかったよね?」

『?いないよ』

「なら付き合っちゃえばよかったのに」

『なんてこと言うの神威くん』

「アハハ」


それに、私の好きな人は……神威くん気付いてないだろうなぁ。てか付き合えばよかったのにとか言われる時点で脈ナシじゃん。しょっく。
ずーんとうなだれる私を神威くんはどこか好奇に満ちた目で見ていたことには気付かず、やっぱりこの恋の報われなさに嘆くしかなかった。


「桃花ちゃん」

『…なに?』

「これからも諦めないんじゃないかな、彼は」

『…かな?』

「7回も告白してくるんだからそりゃあ、ね」

『………』

「そういうやつにはわからせてやらないとだめなんだ」

『何を?』

「桃花ちゃんがもう、他の男のモノだって」

『彼氏作れってこと?簡単に言っちゃうねえ神威くんー』

「まあね」


生憎、そんな相手がいたら私はもう付き合って7回も告白なんてされなかったよ。さみしいわー。
しかも好きな人にこんなこと言われるとかつら。なきそ。


「俺がなってあげてもいいけど、彼氏」

『神威くんが?なんのお冗談かしら』

「本気本気」

『…あの、私あんまりそういうこと言われたら顔が熱くなってきて…』

「なればいいんじゃない?」

『……わ、私のこと好き?』

「付き合って確認すれば?」

『……守ってくれたりする?』

「そりゃあもう」


神威くんがにこりと笑って、その笑顔ひとつで私の世界はすべてが光に満ちあふれた。人はきっとこれを求めて生きているのだろう。そんなことを思ってしまうほどに、私の気持ちは熱くなっていたのだ。


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121006//世界が変わる音がした

◎ゆっぴさま
このたびは40万打記念企画に参加してくださりありがとうございます!
神威の勘違い嫉妬、頑張ったのですがわかりにくい…っ!(泣)
ですがわたしてきには最近の見失っていた神威愛を取り戻しつつあるのでとてもありがたかったです!←
ひさしぶりの神威も楽しかったですし(*´`)
本当にありがとうございました!


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