short | ナノ

02

試合はちょうど始まったところだった。
決勝ということもあって、応援にも熱が入る。
太一はドリブルしながらも、こちらをチラリと見た。
あ、目があった。
私に気付いたからか、太一は少しだけ笑みを浮かべた。

その瞬間、ドクンッ、と心臓の音が聞こえそうなくらい高鳴るのを感じた。

なんでこんなにドキドキしてるんだろう。
相手はあの太一だよ?
きっと、決勝戦だからだ。
私は自分にそう言い聞かせて、太一の姿を眺めていた。

太一はそのままスリーポイントシュートを決めた。
そして、チラッとこっちを見て、あの笑顔を見せるのだ。
それが何回も繰り返され、その度に心臓が高鳴って、顔が赤くなるのを感じた。

試合終了のブザーが鳴り響く中、太一は最後のシュートを放った。



『ありがとうございましたっ!!』

試合は太一が最後に投げたブザービートの分で勝利を納めた。
有言実行な彼は私の自慢の幼馴染。
うん、試合が終わっても心臓がうるさいのも、顔が赤いのも、幼馴染がカッコいいからだ。
…え、カッコいい?
あの、太一が?
いやいやいや、まさかそんなわけ…

「純!」

頭の中でそんな葛藤をしていると、太一に呼ばれた。
挨拶が終わって、そのままこちらに向かってきたらしい。
突然のことに頭が回らず、ただ今まで以上に顔に熱が集まるのを感じた。

「ほらよ。これ、純にやるわ。」

太一はそう言うと腕に付けていたリストバンドを私にポイッと投げてきた。

「わ、なにっ…」
「なぁ、俺、カッコよかったっしょ?純だったら、俺に惚れてもいいよ?」

太一がなんちゃって、と付け加えると、周囲はまたいつもの冗談かよ、と笑い飛ばしていた。


でもね、私は知ってるよ。
太一が”なんちゃって”って言うときは大体本気だってこと。

これからなにかが変わる。
そんな予感がした。


prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -