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act.02

いつも通り、たわいもない話をしてる私たち。
でも、いつもと違うのは…

「でさー、ヤマトがひでぇんだぜ?」
「…へー。」
「俺の方が運動神経いいっつの!」
「そーだねー。」
「…なんか、返事、適当じゃね?」
「…うん。」

私が必要以上に緊張しているということ。
意識は常に鞄の中にあるチョコレート。
太一には申し訳ないけれど、話は右から左へと筒抜けだったりする。

心配そうに顔を覗き込む太一に"なんでもないよ"と伝え、再び足を進めた。
マンションの前まで辿り着き、分かれる場所まで来た。

「んじゃ、気をつけてな。」

まだ肝心なものを渡せていない。

「た、太一っ!!」

私は太一に無理矢理チョコレートを受け取らせると、そのままマンションの中へと足を進めた。
怖くて、気持ちなんて伝えられない。
それどころか、太一の反応を見ることさえできない。

「純ー!」

少し遅れて名前を呼ばれ、振り向けば、満面の笑みを浮かべる太一がいた。

「ホワイトデー、楽しみにしてろよ!」
「…うんっ!!」


バレンタインデー。
まだ愛を伝えることは出来ないけれど、好きな人を笑顔にすることはできたみたいです。


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