「……小波? どうした」
「あっ、何でもありません!」
あわてて姿勢を正す。
「よろしい。では、プレゼントを出しなさい」
「えっ?」
「プレゼント交換用のものだ。用意して来たのだろう? プレゼント交換なら二人でも問題ない」
「は、はい」
ハンドバックの中から、ラッピングされた箱を取り出す。昨日ドレスを買いに行った時に、雑貨店で購入したものだ。でもまさか、氷室先生と交換することになると思わなかった。気に入ってもらえるかな。
「では、私からはこれだ」
氷室先生が差し出した包みは、やけに薄くて平べったい。この大きさと厚みって、本? ……いや、もしかして。
「氷室印基礎解析講座だ。君なら有意義に使ってくれるだろう。冬休み中に一通り読んでおくように」
「はい、頑張ります……」
眼鏡がキラリと光った気がした。先生の表情がいつになく生き生きしている。やっぱり、そういうオチなんだ。
「君のこの包みは……。開けても良いだろうか」
私が選んだものは、ガラスの一輪挿し。一輪挿しなら、普段お花を飾らない人でも気軽に使えるかなって思ったんだ。氷室先生は、どうなのかな。
「ふむ、実に無駄のない洗練されたデザインだ。私の趣味嗜好とも完全に合致する」
「そうですか。気に入ってもらえて良かったです」
「ああ、私の部屋に置いても遜色ない。さっそく花を生けて飾らせてもらう」
シャープなデザインのその一輪挿しは、先生が持つとすごくお洒落なインテリアに見える。先生の部屋はどんな感じなんだろう。塵ひとつなく片付けられていることだけは、確実。
「む、もうこんな時間か。そろそろパーティーもお開きになってしまう。会場に戻ろう」
「はい」
名残惜しいけれど、今年のクリスマスもそろそろお終い。途中までは寂しい思い出しかなかったのに、氷室先生は魔法のようにその思い出を塗り替えてくれた。
「そうだ、忘れていた……小波」
先生は途中で歩を緩め、少し眉間に皺を寄せて目を逸らし、咳払いしてから、こう言った。
「メリークリスマス。シンデレラかどうかは分からないが……純白のドレスを着た今日の君は、見違えるようだった」
その言葉が一番のクリスマスプレゼントになったことは、この聖なる夜に隠された、私だけの秘密。
〜Merry Christmas〜
「あっ、何でもありません!」
あわてて姿勢を正す。
「よろしい。では、プレゼントを出しなさい」
「えっ?」
「プレゼント交換用のものだ。用意して来たのだろう? プレゼント交換なら二人でも問題ない」
「は、はい」
ハンドバックの中から、ラッピングされた箱を取り出す。昨日ドレスを買いに行った時に、雑貨店で購入したものだ。でもまさか、氷室先生と交換することになると思わなかった。気に入ってもらえるかな。
「では、私からはこれだ」
氷室先生が差し出した包みは、やけに薄くて平べったい。この大きさと厚みって、本? ……いや、もしかして。
「氷室印基礎解析講座だ。君なら有意義に使ってくれるだろう。冬休み中に一通り読んでおくように」
「はい、頑張ります……」
眼鏡がキラリと光った気がした。先生の表情がいつになく生き生きしている。やっぱり、そういうオチなんだ。
「君のこの包みは……。開けても良いだろうか」
私が選んだものは、ガラスの一輪挿し。一輪挿しなら、普段お花を飾らない人でも気軽に使えるかなって思ったんだ。氷室先生は、どうなのかな。
「ふむ、実に無駄のない洗練されたデザインだ。私の趣味嗜好とも完全に合致する」
「そうですか。気に入ってもらえて良かったです」
「ああ、私の部屋に置いても遜色ない。さっそく花を生けて飾らせてもらう」
シャープなデザインのその一輪挿しは、先生が持つとすごくお洒落なインテリアに見える。先生の部屋はどんな感じなんだろう。塵ひとつなく片付けられていることだけは、確実。
「む、もうこんな時間か。そろそろパーティーもお開きになってしまう。会場に戻ろう」
「はい」
名残惜しいけれど、今年のクリスマスもそろそろお終い。途中までは寂しい思い出しかなかったのに、氷室先生は魔法のようにその思い出を塗り替えてくれた。
「そうだ、忘れていた……小波」
先生は途中で歩を緩め、少し眉間に皺を寄せて目を逸らし、咳払いしてから、こう言った。
「メリークリスマス。シンデレラかどうかは分からないが……純白のドレスを着た今日の君は、見違えるようだった」
その言葉が一番のクリスマスプレゼントになったことは、この聖なる夜に隠された、私だけの秘密。
〜Merry Christmas〜