27:ろーぷうぇい
「30分時間をくれ」。
そう呼びかけられたのは、ドルトンさんをなんとしても城へ連れていこうとするウソップさん達の本気を目の当たりにした村人たちがロープウェイを修理するためだった。
城へのロープウェイはもう1本も張られていないはずが、なぜか誰かによって張り直されていたのだという。
「町の青年が偶然見つけたんだ」
「……こんな所からロープがはられていたとは……驚いた……ここは旧Dr.くれはの家じゃないか」
そんなふうに村人たちは目を丸くしながら急いでロープウェイの修理に取り掛かり、早いことに30分も経たないうちにわたしたちはそれに乗り込むことができた。
傷を負ったドルトンさんを放っておけない、と多くの村人たちも一緒に乗り込んだため、かなりギリギリの重量を抱えながら一同は城へと向かい始める。
「フー……ッ、フー……ッ」
傷の痛みに眉根を寄せながら肩で息をするドルトンさんに、無理しないで、とビビさんが駆け寄る。
つい先程仮死状態にまで陥ったのだ。本当なら今もまだベッドで療養しているべきである彼はこうして座っているだけでもひどく辛いことだろう。
「……あの、ドルトンさん」
「ッ……?」
わたしの呼びかけにドルトンさんはちらと視線だけをこちらに向けてくれた。
包帯に滲む赤い血に、思わず眉尻が下がるのがわかる。
「さっきは助けてくれて、本当にありがとうございました。なにか辛いことがあれば、わたしにできることならなんでもするので……すぐ教えてください」
「ああ、そうか、君……。君が無事でよかった」
「はい、ドルトンさんのおかげで……でもそのせいでドルトンさんが」
「いや……雪崩のことなら気にしなくていい。イッシー
「でも……」
言いかけて、すぐに言葉を飲み込んだ。これ以上否定するのは彼の厚意を無下にしかねない。わたしは助けてくれたことについて改めて礼を告げ、深く頭を下げた。
ふとその時、誰かが見ろ、と山の先を指差した。
「城のてっぺんに誰かいるぞ!」
「……! あれは……」
まだかなり遠くてよくは見えないけれど、城の頂上から長く伸びる2本の何か。それが勢いよく縮んでいき……城の先にいた何かを吹っ飛ばしたのだ。
「ルフィさん……」
あれはきっとルフィさんだ。
何をしているのかはわからなかったけれど、雪崩やワポルの魔の手から逃れ無事でいてくれたことに一先ず安堵した。
ルフィさんが無事なら、きっとナミさんやサンジさんも。
皆を乗せたロープウェイがゆっくりと城へ近づくたび、わたしの気持ちは次第に逸る一方だった。