もう、最悪だ。
石のスキャン中にエラーが発生してしまったみたいで、私たちは地球に強制送還(?)とやらをさせられた。
それだけだったらまだ良かったんだけど。


「い、ったぁ…っ」

「みんな大丈夫!?」


着地場所が悪かった。どこか知らないけど、着地は見事に失敗。頭から突っ込んだみたいだ。
幸いギャラクシー号は、真空の宇宙でも走行できるぐらいには丈夫に作られている。から、潰れる…ってことは無かったんだけど。
衝撃が半端ない。
自分が人間の形を保っていられたのがすごいと思う程だ。て、いうかみんな大丈夫かな…。
天馬キャプテンが1人1人の様子を確認する中、隣に座っていたさくらさんが声をかけてくれた。


「なまえ、大丈夫?」

「はい…さくらさんは」

「何とかねー…もう気持ちが悪いけど…」

「平らなところで休みたいですね…」


列車。真正面から突っ込んでいったんだろう、若干前のめりになってて尚更気分が悪い。
ただでさえ酔いやすい体質なのに…うう。


「怪我人は居ない…みたいだね」

「気分は最悪だけどな…」

「と、とりあえず外に出よう!」


いつになく低い瞬木さんの声に、天馬キャプテンが何とか明るく振舞う。
みんな相当やられたと見た。口に手を当ててる人もいくらかいる。本当…吐きそう…絶対吐きたくないけど…。
お互い手を貸しあって、おばちゃんや葵さん含め全員が外に降りる。いつの間にか監督も脱出していたみたいだ。
とりあえず、全員の無事が確認できると、ようやく辺りを見渡す。


「少なくともお台場では無さそうだな。」


神童さんが、生い茂る木々を見ながら呟いた。
どこかの森…かな。一瞬ラトニークにも思えたけど、木々のサイズが見慣れたものだ。地球だと思う。
地球の…どこなんだろ…。
遠くを見渡すと海が見える。…島? どこかの孤島…とか?
まぁなんにせよ、ビルとか人目の付くところに落なくて良かった。できればちゃんと着地して欲しかったけれど。
とりあえずここが何処なのか調べないと、って天馬キャプテンが数歩前に歩き出す。と、急に止まった。


「キャプテン?」

「どうしたのー?」


瞬木さんやさくらさんが、天馬キャプテンの隣に並ぶ。けど天馬キャプテンは黙っていた。
あと神童さんとか、信介さんとか…葵さんも? 何か懐かしいものを見るような目になってる。
…?
何だろう。聞こうとしたら、不意に後ろから誰かの声がした。


「やっぱり。君だと思ったよ、天馬」

「!」


誰? 私は知らなかったけど、雷門出身の天馬キャプテン達は知っていたみたい。
天馬キャプテンの名前を呼んだ声を振り返ると、黒くて短い髪の少年が、木の上から私たちを見つめていた。
前髪両サイドの端っこは、白と赤のペイントをしている少年。
彼を見て、天馬キャプテンの顔が綻んだ。


「シュウ…!」



*****

聞く話によると、ここはゴットエデンって言うらしい。
過去に雷門とゼロが戦った所…だよね。お兄ちゃんや白竜さんから(少しだけど)話は聞いてる。


「空から列車が降ってくるからビックリしたよ」

「ごめん…」

「ま、誰も怪我しなくて良かった」


なんて笑うシュウさんは優しそうな性格だ。
彼によると、私たちに会いたがっている人が居るらしく、それで島の中を案内してもらっている今に至る。
柔らかい土の上を歩きながら、信介さんが後ろを振り返りつつ話した。


「久しぶりの地球なんだし、剣城も来れば良かったのに…。」


それを聞いて、葵さんが「しょうがないよー」と返す。
と言うのも、おばちゃんとみのりさんは列車の修復、監督と剣城さんはゆっくり休みたいとの事で、休めそうな場所を探して列車内に残ったのだ。
特に剣城さんは最近調子悪いみたいだったし、無理もない。


「…で、まだ試合は終わってないんだったっけ」

「うん。これから最終決戦なんだけど…」

「そっか…。列車(?)が治るまでは、ここでゆっくりしていってよ」

「ありがとうシュウ…! そうさせてもらう!」


シュウさんに感謝する天馬キャプテン、本当に嬉しそう。

エラーで地球に戻される、なんてまさかの事態にみんなが慌てていたけれど、最終決戦にはまだ時間があるし、すぐに修復してワープすればギリギリ間に合うだろう、とおばちゃんは言っていた。
着地に失敗して少し外装が破損したぐらいだから、修復自体は1日もあれば終わるとみのりさんも言っていたし、まぁ何とかなるんだと思う。

つまり、私たちは、ギャラクシー号の修復が終わるまで…大体今日1日だと思うけど、その間は自由に地球で休めることになった。
まさかこんな戻り方するとは思ってもみなかったけど、久々の空気にどこか心が落ち着く。
すーっと息を吸い込むと、隣を歩いていた真名部さんに尋ねられた。


「どうしたんですか、なまえさん」

「あ、いえ…久しぶりの地球の空気、美味しいなぁって…」

「…? どの星でも呼吸は出来ていましたし、酸素の割合は変わらないと思いますが…」

「そういう事じゃぁないと思うよ、真名部君…」

「?」


うん、まぁ、確かに、真名部さんの言う通り空気そのものは変わらないのだけど。
ここが森、っていうのも関係あるのかな…なんだか心地いい。自分が育った星での、空気。
少し海を渡ればきっと街に出るだろうし、そしたらそこでまた空気は違うんだろうけど。何でだろうな。ここが地球だと思うと、それだけで…ホッとする。
自分が今まで宇宙に行ってたんだなぁ、って今更実感した。まぁ、これからまた戻るんだけど。


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