「ここは…」

「っ、その声、なまえ?」

「す、すみません勝手について来ちゃって…」


隠れるつもりは無かったのだけど、誰かと話してるみたいで中々話しかけられなかった。
私に気がついた天馬キャプテンは、まるで誰かを紹介するみたいに横に手を広げる。


「ちょうど良かった! 紹介するよ、この子がカトラ…」

「…ピクちゃん、の、事ですか?」

「え?」


この子、と呼ばれても誰も居ないようなんだけど…。
うーん、と目を凝らす私に、天馬キャプテンは「あっ」と声を漏らす。


「ごめん! カトラって俺にしか見えないんだった…」

「…そう、なんですか…」

「ほ、本当だよ!?」

「えっ信じてますよ!?」

「そっか…ありがとう…」

「本当に信じてますって!」


正直見てみたかったけれど。
会ってみたい、天馬キャプテンが話す「カトラ」さんという方に。本当はそこにいるみたいなんだけど、私には全然見えなかった。
だ、大丈夫…私は天馬キャプテンを信じるって決めたんだから…!
なんだか微妙な空気になったため、話を逸らした。


「あの…ところで、ここ一体どこなんでしょうか」


暗い洞窟の中なのに、エメラルドみたいな緑色が所々で光ってて…とても幻想的。神秘的、とも言えるかな?
足元が見えるのは、奥から強い光が照らしてるからと思われる。日差しでも入ってるの…?
いや、日差しっていうよりもこの光は…


「この奥に、最後の石があるんだって」

「最後の…、?」

「4つ目の石…最後の、希望の欠片。」

「!」


つまり、これで全部揃ったってこと…だよね。ピクちゃんに導かれ、私たちはその後をゆっくりとついてく。
1歩1歩先に進むたびに奥からの光が強くなり、次第に辺りが明るくなった。とても洞窟の中とは思えない明るさだ。


「ピクぅ〜」

「わぁ…!」


思わず声が漏れる。行き止まりになっているそこには、緑色に輝く石が、まるで誰かを待っていたかのように置かれていた。
天馬キャプテンがそれに手を伸ばすと、石は問題なく彼の手に収まる。


「これで、宇宙が救われるんですね…。」


無事に石が集まったこと、そして嬉しそうに頷く天馬キャプテンを見て、私はホッと息を下ろした。
…必要なものは揃った。あとは、決勝の地に行き勝つだけ。

宇宙が救われる可能性に喜ぶ反面、私が居なくともみんなは幸せになれるんじゃないかと、またそんな事を考えてしまっていた。
黒岩監督はソウルが使える人間を、日本もとい地球代表に選んでくれた。それってつまり、ソウルが出せない私ってただ邪魔なだけじゃないかな、…なんて…。
剣城さんや天馬キャプテンもまだだけど、彼らは充分チームに貢献している。それほど存在感がある。勝つためには絶対必要だ。
一方で私といえば、誘拐されたりオウンゴールしたり。何やってるんだろ…。


「なまえ?」

「あっ、はい」

「どうしたの…?」

「えっと、石…初めて見たので…」


感動してました、なんて言ってみれば、天馬キャプテンがぐっと顔を覗き込んでくる。わ、ち、近いんですが…!


「やっぱり気にしてる? オウンゴールの事…」

「えッ、あ、あれ本当にごめんなさい!」

「いや俺はいいんだけど、」

「もうこんな事がないように、次の試合までには何とかします。」


そう言って笑ってみた。上手く笑えていたかな。あまり笑える気分ではなかったけど、きっとこれが正解だ。
試合には勝ったし、誰も気にしていないのならば、今更私が責任感じたってしょうがないんだろうし…なぁ…
なんでこんなに気になってしまうんだろう。
最近いつもそう、過ぎた失敗がすごく気になってしょうがない。無駄に責任を感じてしまう。これじゃまるで、自分が役立たずな理由を探してるようなものだ。
…あれ、待って、それじゃぁ私は…。


「皆さん待ってると思いますし、戻りましょうか」


出来るだけ、何でもないように装った。


「なまえ、俺に…」

「、?」

「…ううん。早く戻ろう」


そう言って来た道を戻る天馬キャプテン。今、何か言いかけたような…まぁ、いっか…。
その後を、無言で私はついて行った。

きっと私が失敗を気にするのも、迷惑をかけてると思うのも、自分が邪魔なんじゃないかって思うのも、そう。
今ようやく気がついた。
何だかんだ言って、望んでるのはこのチームで活躍することじゃない。
私、本当はもう地球代表を―…。


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