張り巡らされた罠 [ 5 ]
「はぁ……はぁ……もーーナツ、……やっと、追いついたー…。」
ナツは木々が生い茂る中、さらに奥へと逃げ込んでいた。
リサーナは肩で息をしながら、一つの木に寄りかかる。
ナツは、大きな岩の上で仰向けで寝そべって空を見上げていた。
「ナツ?……気持ちはわかるけど…逃げちゃだめだよ。」
「………」
ナツは、リサーナの声にピクリとも反応せず、空を見上げたまま。
リサーナは数歩離れた位置で立ち止まり、黙って上からナツの瞳を見詰め続けるがナツがこちらに瞳を向ける気配はなかった。
「女の子はね、言ってくれなきゃわかんないんだよ。」
「………」
「いつか気付いてくれるなんて期待しちゃだめ。どんなに行動で示してもちゃんと言葉にしなきゃ、始まらないんだよ。」
「………」
「…そうやって、そのまま、いつか、…って思ったまま急に会えなくなるかもしれない。
どんなに影でがんばっていても、急に他の誰かが近づいて……取られてしまうかもしれないじゃない。
今までの積み重ねてきたものの意味がなくなるんだよ。そうなったら、きっと……辛いよ。」
リサーナは、遠い目をして言葉を紡ぐ。まるで自分自身に言っているように。
ナツは、空を見続けたままで、リサーナの目に気付かない。
「………わかってる。」
「…本当?……本当…に?………じゃあ」
「わかってるけど、今はまだダメなんだ。全然意識されてないから…」
「バカナツ!気持ちを伝えてから意識させるんじゃない!!」
「………」
「好きなんだって!伝わったらきっと意識してくれるよ!?」
「………リサーナ…。」
ナツはリサーナの言葉にゆっくりと腰を上げ、ようやくリサーナを見た。
そこでリサーナは、ナツがずっと空を見上げていた理由を知る。
「…目に涙…溜めて…何泣いてんのよ。……ミラ姉が見たらまたかわいいって言われちゃうよ。」
「……泣いてねぇ。リサーナこそ何で泣きそうな顔してんだよ。」
「ナツが泣いてるからでしょ。」
「だから泣いてねぇって。」
ナツはそう言いながら起き上がるが、瞳に溜まっていた涙が頬を伝ってしまう。
それを隠すようにナツは両手で力強く頬を叩く。そうすることで気合も入った気がした。
「泣いちゃうほど好きなんだね。ルーシィのこと。」
「………」
「がんばってね。私、ルーシィは絶対ナツのこと好きになってくれると思うよ。」
「………ありがとな。リサーナ。」
リサーナはナツの言葉に柔らかく微笑む。
ナツはそんなリサーナを見て、不意に昔を思い出す。
(そうだ。リサーナはいつもオレに色々なことを教えてくれて…助けてくれていた。)
リサーナにまた会えてよかったとナツは、瞳が再び熱くなるのを感じた。
「じゃあルーシィ、この仕事なんかどうだ?」
「おーー、これおもしろそうだな、よし!これでいこう!な!?」
「…エルザ…グレイ……私今そんな気分じゃ………」
「…どんな気分なんだよ?」
「そうだ、どんな気分なんだルーシィ?」
「……えぇ!?……えっと…………なんだろ……よくわかんないよーー!!!!」
混乱し、うわぁーんと泣き出すルーシィに、エルザとグレイは、そんな時は気分転換に仕事なんだ!と言って、依頼書をミラジェーンに渡す。
依頼書を渡されたミラジェーンはルーシィの様子に心配になり、エルザに耳打ちで話しかける。
「ねぇ、エルザ……。ルーシィどうしちゃったの??」
「うむ……実はな………、今は言えんのだが……うむ……そのうち…わかると思う。」
「………その説明、全然わからないんだけど。」
「………まぁ、…そうゆうことだ。」
「…全然わからないんだけど……、なんか…なんとなくわかったわ。」
ミラジェーンは、思い当たる節があるのか納得していない表情のまま引き下がり、依頼書に判を押す。
「ハッピーがナツを呼びに行っているはずだから、合流でき次第、出発するぞ。」
ミラジェーンから依頼書を受け取ったエルザが振り返ってルーシィに言う。
その言葉にルーシィはカチンと固まった。
「………え!??ナツも行くの!?」
「当たり前だろう。チームなのにナツだけ置いていくのか?」
「いや……そうだけど……でも……」
「急ぐぞ。夕刻までに列車に乗らなければ、間に合わん。」
「え、…ちょっと、待ってエルザ!」
「久しぶりの仕事だな!腕がなるぜ!!」
「グレイ!待って……ちょっとー!?」
エルザとグレイはルーシィを置いて、旅立ちの用意に向かう。
(ナツと………どんな顔してしゃべればいいのかわからないのにー!)
ルーシィは助けを求めて、辺りを見渡し、ミラジェーンと目が合った。
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