張り巡らされた罠 [ 1 ]

エドラスから戻った私たちは、失ったと思われていた"リサーナ"とゆう仲間を取り戻し、
何日も、何日も、歓喜に沸いていた。

みんなとてもうれしそうだった。
だからきっと"リサーナ"とゆう娘はとても良い子。

いや、あのミラさんの妹なんだから良い子に決まってる!
みんながうれしそうで、私も、すごくうれしい。

"リサーナ"とは、これから色々な話をして…仲良くなれそうだな。…楽しくなりそうだな。
でも当分は、皆に囲まれてて、ゆっくりおしゃべりできないんだろうな…。





…と思っていたのに、その"リサーナ"はある日突然、呼び止める皆の声をすり抜けて
カウンターに座っていた私に向かって真っ直ぐに歩いて、…来た。


「…ルーシィ?だったよね。隣に座っても、いいかな?」

「ぇ?…ワタシ??…うん!どうぞ!」


リサーナはうれしそうに金欠でタダの水を飲んでいたルーシィの隣に腰掛ける。
そして、僅かな緊張で口の中が乾き、もう一度水を含みかけたルーシィに向かって、彼女はとんでもないことを言い出した。


「ねぇルーシィ。…いつからナツと恋人…なの?」

「!?………ゴホッ!!!!…ゴホ!ゲホゴホ!!」
「わ!汚いなぁ……もー。」


リサーナは、文句を言いながらもルーシィが咽て吐き出した水を拭いてくれている。
それを横目で見ながらもルーシィは気管に入り込んだ水を追いやるのに必死だった。
………今、リサーナは何て言った?


「で、いつからなの?どっちから?やっぱりルーシィから?」
「げほっ…げほっ!な、なに言って…なんで私がナツと……げほっ…」

「もー。隠さなくていいから!教えてよ!皆いつからか知らないって言うんだもん。」
「は??……げほっ……知らないも何も……げっほ……始まってな…げほっ」

「…………え?…またまた〜!恥ずかしがらなくていいってば!皆が公認してるんだから今更恥ずかしがることでもないでしょ?」
「……み…みんなが…公認って……げほっ…なんで……?」


ルーシィは咽ながらも驚きを隠せない顔で辺りを見渡す。
こちらを見ているものはいない、皆それぞれに誰かと話したり、酒を交わしたり、いつも通りだ。
いつも通りのフェアリーテイルだ。
リサーナはルーシィの様子を見て、笑顔から不安そうな顔へ移り変わる。


「え、本気で言ってる?…ナツに聞いても付き合ってるって言ってたよ?」
「……はあぁぁあ!??」


ルーシィは思わず立ち上がり、リサーナに勢い良く振り返った。
リサーナはルーシィの形相に驚き、若干怯え、戸惑いながらも言葉を紡ぐ。


「……え、だって…………皆も…言ってるよ…?それに、今までナツはずっとハッピー以外誰ともチーム組まなかったのに
ルーシィとはあっさりチーム組んだんでしょ?」

「…そ、そうみたいだけど、………それとは関係ないよ…ね…??」

「…それで皆、ナツがルーシィのこと実際のルーシィ以上に褒めてるって。ナツがやったこともルーシィが倒した風に噂流れてるんでしょ?
皆、最初は本気にしてたんだけど、だんだんナツが好きな子を自慢したくて言ってる事だってわかったんだって。
……今はもう皆ルーシィの話聞いてもまた、ナツかって笑いながら聞き流してるみたい。」

「はぁ!??確かに傭兵ゴリラを小指一本で倒したとか…あったけど…いや…そうゆう意味じゃないと思う!!
…それはおもしろがって言ってるのよ!そうよ!きっとそう!!」

「それに皆、ルーシィが来てからナツが楽しそうに仕事してるって言ってたし…、血の気多くて頻繁に皆と喧嘩してたのに落ち着いたって。
ルーシィがいるからだって。グレイとの喧嘩も減って、グレイは少し物足りなくて自分からわざと嗾けるようになったって言ってたよ。」

「…え?…そうなの?…いや、偶然じゃ……」

「それからグレイは、時々ルーシィの家にこっそり遊びに行っても絶対、ナツがいるって言ってたよ。
ナツがいると胸糞悪いからそのまま家に上がらずに帰ってしまうけど、ナツはルーシィの家にほぼ毎日行ってるんじゃないかって。」

「………」

「…あ、これは否定しないんだ?」

「………えっと、でもね…リサーナ……」

「…それにナツはルーシィの下着全部知ってるってー………あ、落ち着いて、これはハッピー情報なんだけど。………本当なんだ、ルーシィ顔、真っ赤!」


アハハハ!とかわいい声で笑うリサーナにルーシィは言いたいことはたくさんあるのに
言葉が出ず、口をパクパクさせることしかできなかった。


「そうゆうことをほかにも色々聞いてね、それで、ナツに聞いてみたの。皆がこう言ってたよってルーシィと付き合ってるのって。そしたら…」


リサーナはナツの声音を真似て、ルーシィにその時のことを伝えようとする。
ルーシィは、リサーナの物真似を見ながら血の気が引き、口元が引き攣るのを感じた。


「………………今日って…………………エイプリルフールだったっけ……?」
「…へ?違うよ?…………ルーシィ?」

「じゃあ、これは夢!??本当は私、眠ってるんじゃ!?達の悪い魔導士におかしな夢を見る魔法をかけられてるんだわ!?」
「……???……ルーシィ、帰ってきてー!……おーい!」

「そうとしか考えられない!!……は、早く起きてー!早くー!!こんな夢見るなんて私恥ずかしすぎるーーー!!!早く起きてよー!!!」
「………アハハ、ナツの言ってた通りだ、ルーシィっておもしろいね。」


混乱して慌てふためくルーシィにリサーナは苦笑いになる。
そこへ、突然ナツが二人の話に割って入ってきた。


「リサーナ、皆が呼んでるぞー?」
「あ、ナツ。…なになに〜?私を追い出して二人になろーって魂胆??」

「……ちげぇよ!!リサーナを呼びに来ただけだろ!」
「ふふ、顔赤いよナツ?……相変わらずだなぁ、もーー。」


リサーナは、しょうがないわねと大きく顔に書いたような含み笑いで席を立つ。
ナツは、リサーナがカウンターから離れていくのを見送ってから未だ一人で慌てふためいているルーシィをチラリと横目で見た。

そして、ルーシィの様子を伺いながらリサーナが座っていた場所にそっと腰を下ろした。



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