暴走するジェミニ [ 11 ]
喉の中を自分のものではない冷たいものが通り過ぎる。
熱く乾いた体に与えられた冷たい潤いに本能がもっとほしいと叫び、自然と口が開く。
その数秒後に、再び口の中に願い通りの冷たい水が…
(……水?)
ルーシィは、疑問符を浮かべ目を開けた。口の中に水が注がれていく。
至近距離に誰かの睫と見覚えのあるピンクの髪が見える。
注がれた水を飲み込もうとしながらもルーシィの頭は今の状況を理解し、それを噴出した。
「……ブッハッ!!!!」
「…うわっ!!」
ナツの顔面に思い切り水が返される。
慌ててルーシィから離れたナツは、汚ねぇな!!っと文句を言いながら片手で顔を拭う。
ルーシィは、起き上がりナツの様子を呆然と眺めていた。
「……ナツ……何してるの?」
「…は?お前が吐いたから拭いてんだろが!!」
「違うわよ!!何で私に…くくくくく口移しで!…水を!!そしてなんで上、裸!!?」
「風呂で倒れたの覚えてねぇのか?…オレの服はそこ。」
ナツはルーシィを指差す。指された部分に視線を向けると、ルーシィは愕然とした。
裸の上にナツのベストが乗っているだけだ。そのベストもルーシィが起き上がったことでズルリと下に落ちていこうとしている。
ルーシィは言葉も出せず驚愕で顔を歪め、慌ててシーツを手繰り寄せた。
自分のベストごとシーツに包まろうとするルーシィを眺めながらナツは顔を赤らめ、弁解を始める。
「あーー。勘違いするなよ?…水飲ませただけだからな?」
「……………………」
「……………………」
「………………………見た?」
「見た」
即答されたナツの言葉に弾かれたように手に届くもの全てをナツに投げつけるルーシィ。
それを難なく全てかわしながらナツは落ち着け!!と声を張り上げる。
「どこまで見たのよ!!!全部!??」
「……全部ってどこまでだ!?」
「なにそれ!どういうこと!??あんたの全部ってどこまで!??」
「今まで何回かそうゆう機会あっただろ!?今更少し見た範囲が広がっただけで気にすんな!」
「どこまで広がったのよ!??気にするわよ!気にしなさいよ!」
ナツに物を投げつけるスピードは衰えないものの段々とルーシィは羞恥からくる怒りの形相から涙目になっていく。
自分の身に起きた事態を理解し、手が震える。
投げる物がなくなったと同時にルーシィの手はダラリと下りた。
「うわあぁぁぁん!!もうお嫁にいけないーーー!!!」
「………えぇ!??」
突然泣き始めたルーシィにナツは戸惑い狼狽える。
ナツのバカーーーー!と泣き叫ばれ、ナツは慌ててルーシィを抱き寄せた。
ルーシィの泣きっぷりに、意味はわからないが焦ってゴメン!ゴメンナサイ!と謝り、ルーシィの頭を撫で続けるナツ。
「あんた……ヒック……意味わかって……ック……謝って…んの?」
ルーシィの言葉にナツはピクリと体を緊張させる。
しゃっくりを上げ始めたルーシィの背中をナツは撫でているが、何も答えない。
「やっぱり!…適当に謝らないでよ!」
「じゃ、…泣くなよ!!」
「あんたが泣かせたんじゃない!!」
「オレ??…なんで泣いてんだよ!!?」
「は??わかんないの!??自分の行動を思い返してみなさいよ!」
「ふあぁぁ〜。………アレ?ナツー………………って何してんの!?????」
その時、反省しながら寝てしまっていたハッピーは目が覚めた途端
思いも寄らない光景を目の当たりにして驚愕した。
上半身裸のナツが、シーツに包まっているが肩や足の肌が見えているので裸であろうルーシィを抱きしめている。
その上、ルーシィは泣いている………?
「ナツ!!!オイラにはお互いの気持ちが通じ合ってからだって言ってたくせに!
段階すっ飛ばしてやっちゃったのーーーー!!!???」
「……な、なに言ってんだハッピー…!?」
「しかも無理やりーーー!??毎晩悩んでたからってやり過ぎだよーーー!!!」
「ぅわわわわ!おおお、お、落ち着けハッピー!!」
「ちょっとナツ!私が泣いている訳はちゃんと考えた!??わかったの!!??」
「ちょ、ちょっと待て、それどころじゃねぇ!ハッピー余計なこと口走るなよ!?」
「それどころって何よ!!!純情な乙女の心を踏みにじっておいてそれどころってー!!」
「お、オレはのぼせたルーシィを世話しただけだろ!?感謝されるべきじゃねーのか!??」
「はぁ!??乙女の入浴中に入ってきて私の全部を見たくせにーーーー!!!」
「ナツー!???お風呂でルーシィに何したのーーーー!!!!???」
「ちょちょちょ、ちょ、ちょっと待て!!誤解だ!変な想像するなハッピー!!」
「本当は私をのぼせさせたのもわざとでしょ!?何回言っても出て行かなかったじゃない!
裸見るのもさっきの口移しも、も、ももしかしてそのために私をーーー!」
「おおおお、落ち着けルーシィ!!それはジェミニだ!オレじゃねぇ!!
…いや、オレを転写してたからオレなのか?いや、オレだけどやったのはオレじゃねぇ!」
「何わけわかんないこと言ってるのよ!??そうやって言い逃れるつもり!!?」
「違ぇよ!!!大体、ルーシィの星霊への教育が悪りぃんじゃないか!!
今日はルーシィの星霊のおかげで散々だったんだぞ!!責任とれ!!!」
「変態どスケベな上にそれを人のせいにして逆切れなんて……見損なったよナツー!!!」
「そうよーー!!!この状況で責任は、あんたがとるもんでしょーーー!!」
「オイラ、ナツのためにがんばったのに!!…二人が上手くいくようにがんばったのに!
もうナツの相棒なんてやめる!……ルーシィん家の猫になってやるーーー!!!」
「おおお落ち着け!!頼む!!落ち着いてオレの話を聞いてくれぇえええ!!!」
星霊界では、足をバタつかせ笑い転げる二体の星霊がいた。…双児宮の星霊だ。
「あははー!!」 「あはははは!お、おもしろーーーい!!!」
「ナツのあの慌てっぷり、見たー!?」 「見た見たー!大成功だね!!」
「オーナーでもないのにボクたちを使って得しようとするから痛い目に合うんだよ。」
「たっぷり仕返しできたねー!あーおもしろかったー!」
「………仕返しって何したの?」
「あのねー!…って………レオ!!!??」 「アワワワ!!いつからそこに!?」
「ルーシィをこれ以上混乱させないためにも手出すなって言ったのに…また…ジェミニ…」
「レオは良くても、あのまま終わるなんて…ボクたち不満だったんだ!」
「そうだよー!それにルーシィじゃなくてナツに!」
「それでルーシィが混乱してるじゃないか……わからないのか?ジェミニ…」
「「だだだだって!…ボクたちだってー!そ…そんな目で見ないでよ!レオ!!」」
「……………………………………」
「「……わわ、わかったよ!!……ごごごめんなさい!もうしません!!」」
「……………………………………」
「「!??…………な、何か言ってよレオ!!??」」
「……………………………………」
「…………ピ………………………」
「……………………………………」
「…………ピ……ピピ………………」
「……………………………………」
「「………ピ……ピーリピーリーーーィーーー!!!!」」
【終】
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