暴走するジェミニ [ 5 ]
ルーシィが元に戻り、元気な様子を一目見ようとフェアリーテイルに来ていた獅子宮の星霊。
しかし思わぬ邪魔(?)が入り、すぐに去ることになってしまった。
自身を落ち着かせもう一度ルーシィの元へと思い、カフェテラスに戻る獅子宮の星霊。
が、既にルーシィはいない。
…どこに行ったのか…。星霊界に一度戻りルーシィの場所を把握しようとする。
しかし、星霊界に戻った獅子宮の星霊に思わぬ情報が飛び込んだ。
大変だ。よりによって双児宮の星霊が。
双児宮の星霊にそんな気はなくても、人の心を惑わし混乱を招く力があるのだ、
星霊界の規律を破ることになるかもしれない。
一度規律を破ったものとして、他の星霊にあんな思いをさせることになるのは我慢できない。
獅子宮の星霊は、誰よりも早く動いた。
静かな湖の畔では、終わりが見えないやり取りが続いていた。
ナツを行かせてはいけないと焦り、必死で捕まえようとする双児宮の星霊と
早くルーシィの元へと心が急ぎ、必死でそれを振り切ろうとするナツ。
二人は必死のあまり、お互いを掴み合い、相撲取りのような状況になっていた。
その光景を傍から見るとどう見えるのだろうか。
これが本物のルーシィなら真っ先にナツを取り押さえるところだけど…。
獅子宮の星霊は、そう思いながら二人の腕を強く掴んで思い切り引き剥がした。
「………こんなところで、二人で何してるんだい……?」
「「………げ!!!………ロキ!?」」
「二人揃って、ずいぶんな反応だね?ところでルーシィ…こんなところで何してるんだい?」
「(………ぁわわわ…気付いてる!?どうしよう、怒られる!??)……ろ、ロキ!な、ナツが!
ルーシィにキスしに行こうとしてるのよ!!と、止めないと!!」
「………ん?ルーシィは君じゃないか、何言ってるの?」
「ロキ!!こいつルーシィになってオレを誑かそうとしたんだ!ちゃんと見張っとけよ!!」
「……へぇー。すごいね、ナツ。どうしてルーシィじゃないってわかったの?」
「………え……なんとなく……?」
「「…………」」
根拠はないけど核心を持ってルーシィじゃないと気付いたナツに、二体の星霊は驚きを隠せない。
「ぼ、ボク達は完璧だった!どこでわかったの!?」
「………わかんねぇよ……なんとなくだ!!……それより離せ!!俺は急いでるんだ!!」
「離せるわけないよ!!オーナーを守るのがボク達の役目なんだ!!!」
「ジェミニの行動にも問題があるんだけど。それは今は置いといて、さっき聞いたことが本当なら僕もジェミニの意向に賛成だ。
行かせるわけにはいかないよナツ。」
慌ててナツを再び掴まえる双児宮の星霊とナツの腕を強く掴みなおす獅子宮の星霊に睨まれ、ナツは慌てて弁解を口にする。
「別に無理やりするわけじゃねぇよ!さっきみたいに頼んだらOKしてくれんだろ!?」
「…ぼ、ボク達のことわかっててルーシィの本心を聞き出したんだね!?ヒドイよ!ボク達で試したんだ!!?」
「そっちがルーシィになって変なこと聞くから悪いんじゃねーーか!!」
「……ジェミニ………この責任どうやって、取るつもり?」
獅子宮の星霊が、整った笑顔を作り鋭い視線を双児宮の星霊に投げつけた。
その視線に身震いした双児宮の星霊は、変身していたルーシィの姿を二人から掴まれた腕を必死に振り払おうとするナツへと変えた。
変身した双児宮の星霊に、ナツの思考が降り注ぐ水のように流れてくる。
流れてきたたくさんの思考の中でジェミニは気になるものだけに集中した。
ずっと…ルーシィを見る度に思っていた…?
………もう一回…できたら………
……それとモヤモヤした気持ち……
……これが何かわからなくて……イライラして……
だからもう一回したらわかるかもしれないと……………
(てゆうかこの気持ちって、アレ?…ナツって。)
「…………おまえ、バカか?」
声も姿も自分そっくりの星霊に半眼になり馬鹿にしたような表情でそう言われたナツは怒りより先に心の動揺が襲う。
「っ!!……オレがオレにバカって言うな!何でオレに変身したんだ!??」
「ナツがルーシィにキスしに行く前に、ボク達がキスしに行く。」
「「……ハ???」」
「そしたらルーシィどんな反応するかなー!ナツよりおもしろそう!!!」
「「………何考えてんだジェミニーーー!!??」」
獅子宮の星霊とナツは物凄い形相で、ナツとなった双児宮の星霊の腕を掴む手に力を込める。
こいつを決して行かしてはいけない。
「ロキ!オレの腕掴んでねぇでコイツ抑えるのに協力しろ!」
「だめだレオ!ナツはレオの隙をついて逃げようって考えてる!!」
「………せこいぞジェミニ!オレの考えを勝手に読むなっ!!」
「さっきボクを騙したナツに言われたくないよ!オーナーを守るのがボク達の役目なんだよ!」
「守る!?…お前は遊ぼうとしてんじゃねぇか!!」
二人のやり取りにピクピクと動く青筋が増えていくのを抑えきれない中、獅子宮の星霊は必死に考えた。
この二人のどちらを行かせてもルーシィはナツにキスされることになる…?………非常にまずい状況だ。
今現在ルーシィは不本意だけど、ただでさえナツを意識しているのだ。
そしてナツの気持ちばかり気になり、自分の気持ちがどこにあるのかわかっていないルーシィにナツがキスをしたならば、どうなる??
まだルーシィは、小説の中にある恋しかしらない純情な少女。
意識している最中の男とキスしたら、それが恋だと感じドップリはまってしまうのではないか。
………そんなこと、許せるわけないだろう。
「決めた…。ナツとジェミニが行く前に僕が行く。」
「「………ハ???」」
「ルーシィの唇は僕が勝ち取る!二人には渡さない!!絶対に!!」
「どうしたのレオ!?………ボク達の楽しみをとらないでよ!!?」
「………………………お前らおもしろいだけでやろうとすんな!!!!!!」
それぞれの異なる理由を抱え、ルーシィの元に行きたい三人。
そしてまた、異なる理由を抱え、お互いをルーシィの元に行かせたくない三人。
三人はお互いを掴んだ腕を決して離そうとせず、そのまま攻防を繰り広げ始めた。
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