暴走するジェミニ [ 3 ]

変身に成功した双児宮の星霊に、ルーシィの思考が降り注ぐ水のように流れてくる。
流れてきたたくさんの思考の中でジェミニは気になるものだけに集中した。


ルーシィは……もうレオを怒っていない…少し心配している?

あ。本気で怒ってたんじゃないんだ。

…そうか…やっぱりルーシィはやさしいな…。

いつもボクたちのこと考えてくれてるんだ。

……じゃあ、ちょっとぐらい遊んでも、大丈夫だよね??


ルーシィとなった双児宮の星霊は、カフェテラスからそっと離れる。
充分にルーシィと距離をとった所で、ワクワクしながら何か無いかなーと辺りを見渡した。




あ。グレイだ。


確かグレイって、ちょっとルーシィに気があるんだよね。
……ルーシィは、すごく信頼してるみたいだけど、すぐ脱ぐ変態だって、思ってるみたいだね。

………よぉし。グレイと遊ぼーーー!抱きついちゃえ!


「……グレイッ!!」
「…うわぁ!!……る、ルーシィ!??な、なななんだよ!?」

(わーー!慌ててる!慌ててる!あ、赤くなってる!……おもしろーーい!)

「ルーシィ!?どうしたんだ!?…てかとりあえず離せ!誰かに見られたら勘違いされるだろ!?」
「…………グレイ……私と勘違いされたら…嫌…?」

「……へ???な、なななに言ってんだ!???……嫌ってわけじゃぁ……な…い……け…ど…」
「……本当に?……私…本当は…………ずっと前から…」(脱ぐ癖をどうやったら直せるか考えてるんだよね。)


「……………な゛!!!!!………え!!!??」


「……ううん!なんでもない。グレイいつもありがとう。不器用だけどやさしくて頼りになるグレイと、チームになれて私、本当によかった。
これからも……、一緒にがんばろうね。」


首に腕を絡ませるように抱きつき、少し小首を傾げて微笑むルーシィに熱く見詰められたグレイは顔に血が昇るのを抑えきれず、
そして戸惑い、これは夢か!?と思いながらもルーシィに返事を返す。


「……あ……あぁ……。」


そんなグレイに満面の笑みを返して、呆気なく離れるルーシィ。
そして、ヒラヒラと手を振りながらグレイに背を向け歩き始めた。
それを見送りながらグレイは、夢から醒めない様子でボーっと突っ立っていることしかできないでいた。


(お……おもしろーーい!!すっごい真っ赤だったね!…よぉし次は誰で遊ぼう!)


グレイで味をしめた双児宮の星霊は、次もルーシィの色気(?)で相手を慌てさせたいと考えていた。


(そうだ……)

(あの事件でルーシィにキスしたアイツならきっともっとおもしろい反応を見せてくれるはず!!)


そのアイツの反応を想像して、あまりのおかしさに腹を抱える双児宮の星霊ジェミニ。
そして、ルーシィの記憶を頼りにアイツがいつもいる所へと向かった。



(おかしいなー。…いない。ココもアソコも…ひょっとしてアッチ?)



すぐに見つかると考えていた双児宮の星霊は、あまりに見つからないのと歩き疲れてきていたことで、
もう諦めて別のことで遊ぼうかと考え始めていた。
そして最後にと以前ルーシィがナツとハッピーと魚を釣っていた湖の畔に来てみたが、
そこにもいない。
双児宮の星霊は、疲れて座り込んだ。


(…しょうがないね。ナツは諦めて次はジュビアに宣戦布告でもしに…)

「お。ルーシィ。何してんだ?」
「!??」


背後からかけられた声に思わず飛び上がる双児宮の星霊。慌ててルーシィの思考にチェンジし
行動パターンをルーシィのものへと変更する。


「…ナツ!あんたこそ何やってんのよ?」
「…………あ…れ…?……ルーシィ……だよ…な…」

「(!?)………はぁ??」

「……いや、なんでもねぇ。なんか一瞬……いや、気のせいだ。ルーシィの匂いするしな。」
「なによそれ。てかまた匂いって。私が臭うみたいじゃない。失礼ね!!」
(そうだ、ナツは野性的な勘に優れているんだ。完璧にルーシィにならなきゃ!)


ナツはなんだったんだろと自分の中に一瞬感じた違和感を訝しがりながらルーシィの横に腰を下ろす。


「見ろよルーシィ。今日は大漁だったから魚屋のおっちゃんに持っていって高級魚と取り替えてもらったんだ!
こんな高級な魚めったに食べられないからな!ハッピー喜ぶぞー!!」


ニシシと笑顔を見せ、もう一回釣りまくってもう一匹もらうぞ!と意気込みながら竿を手に持ち、のん気に釣りを始めだしたナツ。
そんなナツを横から眺め、双児宮の星霊はどうやって遊ぼうかと考え始めた。
するとふと、ルーシィが日頃から疑問に思っていながらも確かめようとしなかった考えが浮きあがる。そうだ。…これだ。


「ねぇ。ナツ。私気になることがあるんだけど。」
「んー?なんだよ?」


ナツは視線を湖に向けたままで、釣りに集中しだしたのかルーシィに生返事を返す。
その態度が気に食わない双児宮の星霊は、闘争心を燃やし始めた。


「私とキスしてから、ナツなんともない?」
「……………………へ?」


ナツは、予想外のルーシィの質問に思わずルーシィを顧みた。
気を良くした双児宮の星霊は、追い討ちをかけようとルーシィの思考を言葉にする。


「私は……駄目だってわかってるんだけど、時々思い出してしまってドキドキしたりするんだ。」
「……」

「ナツは思い出したりしないの?やっぱり意識しちゃうのは私だけなのかな。」
「……」

「……ナツは何もなかったみたいに普通に接してくるよね。
私達チームだから、こんなこと考えちゃだめだし、その方がいいって思うときもあるけど…。
私ばっかり意識しちゃって………何も意識されてないのがくやしい。」

「……」

「ナツにとってアレは、どうでもいい、大したことじゃない事だったのかな。」


羞恥心や自尊心や迷いや戸惑い。
それに仲間という関係を崩さないために言わずにいたこと。
でも双児宮の星霊には、本当は聞きたくて堪らなかったルーシィの気持ちがわかる。


(ルーシィがどうしても言えないなら、ボク達が変わりに言ってあげる。)

(ボク達がナツの気持ちを確かめてあげるよ。)


ナツはルーシィの言葉にしばらくは驚くようにルーシィを見つめるだけだったが、
ふと意を決したように真剣な表情に変わり、口を開いた。



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