インストールされた超魔法 [ 12 ]

「……ーちゃん!……………ーちゃん!」

「………ん………………あ…あれ??レビィ…ちゃん…?」

「ルーちゃん!解読できたの!!皆の力とヒビキの力を借りてやっとだったけど…やったよ!!」

「……え…ほ、本当に??」

「うん!!」

「………ッレビィちゃん!!!!」
「……わっ!!」


レビィの目には隈ができていた。きっと寝る時間を惜しんで作業をしていたのだろう。
ルーシィはレビィを強く抱きしめ、目に涙を浮かべた。


「レビィちゃん………………ありがとう……本当に…すごいよ…レビィちゃん。」

「…えへへ……でもまだお礼を言うのは早いよ。ルーちゃん!」


解読されたことで、わかったことがいくつもある。
その古文書は、人間兵器を作り出すためのものだった。
弱い魔導士や魔法を使えない人々にも、戦争で戦ってもらうために、古文書の情報を直接体内に送ることができる魔法石をつけ、
理解せずとも書かれた文字を見ていくだけで、膨大な魔力と超魔法の力を植え付けられるようにしていたのだ。
なぜ、そんな危険なものをルーシィの母親が所持していたのかは謎のままだが、植えつけられた超魔法をアンインストールする方法はレビィの力を借りて解読された。

レビィから解読された古文書の情報を受け取ったヒビキは、アーカイブを起動してルーシィにそれを送る。
ルーシィの体の回りにいくつものダウンロードゲージが出現し、ルーシィの意識が遠のいった。






ルーシィは頭の中で、意味を持った言葉と何かの図形が現れては消えていく光景を、呆然と眺めていた。
その消えていく情報の中で、ルーシィは今は亡き母親の姿と声がわずかに浮き上がるのを感じた。



―― ルーシィ あなたなら きっと正規ギルドの魔導士に なっているはず ―――

―― あなたを守ってくれる人達が この本であなたを 元に  ――



(……うん。ママ。私、フェアリーテイルの魔導士になったんだよ。)

(そこはとても温かくて…皆いい人で………本当の家族みたいなんだ。)


消えていく情報の中で、母親の姿も薄れていく。
ルーシィには、その姿がやさしく微笑んでいるように見えた。



「……………ー!………………ーシィ!!」



意識が急浮上し、視界と感覚が戻る。どうやら地面にひざまずいていたらしく体が誰かに支えられている。
顔を見上げると、皆が心配そうにルーシィを見詰めているのが見えた。




「………………………………みんな………ありがとう………」




(…私、ナツに出会えて、フェアリーテイルに入れて、本当によかった。)

(…本当によかったよ。ねぇ…ママ。)










何日も静かに張り詰めていたフェアリーテイルでは、街の人々が何事かと集まるほど急に賑やかになり、宴が一日中行われていた。
終わりそうもない宴の中心で、ルーシィは笑っている。
その笑顔を満足そうに見たナツとハッピーは、しばらくぶりの我が家へと向かった。


「ナツーー。ルーシィに心配がなくなったのはうれしいけど、オイラ一つだけ心残りがあるんだ。」

「…へ?…なんだ??」

「……………何日も同じ部屋でずっと暮らしていたのに……全然進展がなかったことだよ。」

「……???なんの進展だ??」

「………………………………ルーシィとナツに決まってるじゃないか!!
いい感じの時もあったのに!!!……オイラがんばったのに!!!
大体ナツが鈍感で天然でわかってないから駄目なんだよーーー!!ワァァァアン!!」

「……………ハッピー……お前までそんなこと言うのかよ…。」

「……………え?」

「…オレだってなぁ!!初めてだったんだよ!!!……あん時は必死だったけど!
それでも!……一瞬迷ったんだ!!そ、そしたらルーシィの唇やわらかいしっ」

「………え?……え?」

「部屋にいるときも!!ハッピーはずっとぐっすり寝てたから知らねぇだろうけど!
オレなんか心配とか思い出したりとかで全然寝れなかったんだぞ!!!」

「……………………………………………え?」

「どいつもこいつも、オレが無神経だとか天然バカとか言いやがって!!
グレイとフリードには意味も無く殴られるわ、マカオとカナには説教されるわ!! 
………くっそぉぉぉぉぉおおお!!!今日は思う存分寝てやるっっっ!!!」


そして、ナツはよくわからない奇声を上げ、炎を纏いながら走り去っていく。
そんなナツを呆然と見送るハッピーは、コレを誰かに話そうかどうか迷っていた。



………いや、すごくおもしろそうだから、やっぱり一人で楽しもう。



ただ……これから先、いつか二人が"でぇき"た時は、今度はからかったりせずに目いっぱい祝福してあげようと
ハッピーは心から思い、笑ったのだった。





【終】



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