「誰だ、その女は。うん?」

アジトで寛いでいた時、賞金首狩に行っていたゾンビコンビがアジトに戻ってきて、オイラはすぐに突っ込んだ。何故なら飛段と角都の間にいる若い女が気になったからだ。色白でクリーム色の綺麗な長髪が印象的で、顔立ちもなかなかに綺麗だ。そんな女が何故ゾンビコンビと一緒なのか謎は深まる一方で。
すると飛段が妙に親しげに女へ肩を組み、得意げな笑みを浮かべた。

「いやな、ちっせー国だったから皆殺しにしてやったんだけどよ、賞金首を殺った後で椿を見つけてな。賞金首の一人娘なんだと」
「…で、何で連れてくる必要があるんだよ、うん?」
「は?かわいいからに決まってんだろ」

呆れて物も言えないとはこの事だろう。やれやれ、とため息を吐いた。よく角都が許したもんだと思う。そして名は椿と言うらしい。名を覚える必要もないが。
改めて女の顔を見てオイラは一つ疑問を覚えた。あれ、オイラこの女とどっかで会ったことがある気がするぞ、と。けど、一体どこで会ったのか一切記憶にねえ。それでもどこかで会ったような気がしてならない。

「……それにしても、角都もよく許したな。こんな女、普段ならとっくに殺してるだろ」

ヒルコに入ったサソリの旦那が角都に問いかける。オイラと同じことを考えていたようだ。いくら飛段が気に入っても、それを易々と許す角都ではない。こんな忍でもなさそうな女、不要と判断して殺すのが賢明だろうに。

「ああ、何でもすると言ったからな。それに金も受け取った」

分厚い札束を袖口から覗かせ、オイラも旦那も納得せざるを得なかった。どうやらこの女は暁に連れて行かれることを望んだのだろう。金もあるようで、大金を払う事で暁に連れて行く事を条件にしたのだと目の前の札束だけで理解した。確かに皆殺しにされて、たった一人だけ生き残っちまったのならやむを得なかったのかもしれない。
それにしても……先程から思っていたが、無表情な女だ。ぴくりとも笑わねえ。その時、一瞬ある場面を思い出した。オイラの下で乱雑に抱かれる女。無表情で声も出さず、つまらないから記憶に残っていたのかもしれない。その女は、確かに今目の前にいるこの女と同一人物だと言うこと。オイラが女を抱くのは決まって遊郭だ。つーことは、この女は遊女だったと言うこと。商売とは言え、一度身体の関係を持ったことのある奴がメンバー入りするのはどこか気まずさがある。

「何でもするとは言っても……この子は忍でもないようだし、特に必要なさそうね」
「ああそれなら大丈夫だ。ジャシン教に入会させるつもりだからよ!」
「それこそ不要だろう」
「あぁ!?俺の好きにしていいっつったろーが、角都よォ!」

小南が不要と言ったらメンバー入りするのも難しいだろう。そう思ったところにまさかの飛段のジャシン教へ入会させる宣言。そんな事のために暁入りさせる程無駄なもんはねーと思う。案の定角都に突っ込まれて、キレ始める飛段に呆れて溜め息が出た。

「おい、お前は元々何をしていたんだ。忍じゃねえことは確かだろう?」

サソリの旦那が女に向かって問いかける。女は表情一つ崩さぬまま、真っ直ぐに旦那を見つめて淡々と応え始めた。

「遊女としてずっと働いていた。だから金もあるし、そういうことに抵抗もない。好きに使ってくれて構わない」
「そうか。じゃあデイダラの性欲処理にでも使ったらどうだ?」
「はぁ!?俺が連れてきたんだから、俺のもんだろ!」

旦那の発言にも突っ込みたいが、その前に飛段が喚き出した。小南が「それこそ不要だ……」と呟いていたが、ご最もだろう。それにオイラの性欲処理っていうのも複雑だ。一度交えたことがあるとは言え、この女は抱いてて非常につまらない。感情がないんじゃないかとさえ思う。大体、忍でもないのに親や仲間が殺されて平然といられるのもおかしい。

「騒々しいな。何の話だ」

騒ぎを聞きつけたリーダーが登場し、一瞬静まり返るが変わらず飛段は騒ぎ続ける。小南が一喝すると、ようやく少しは黙ったようだ。

「ペイン、飛段と角都が連れてきた遊女の女なのだけれど……忍でもないから不要だと思うの。暁の目的に役立つとは思えないわ」
「……コイツか。しかし連れてきてしまったものは仕方ない。アジトを知られてしまった以上、無闇に解放する訳にもいかない。……女、何か使えそうな能力もないのか」

上から下まで女を観察したリーダーは、投げかけるように問う。あんなに冷酷な目で観察されたら、普通の女は逃げ出すか、泣き出すかするだろうに、この女ときたら一切表情を崩すことがない。まるで何も感じていないようだ。

「感知なら、少し。忍ではないから程度はわからないけど、村でもよくこの能力は利用されてきた」
「感知だけでも出来るのなら良いか……。とりあえず暁にいればいい」
「っしゃ、ならジャシン教に入会しろよ!」

まだ勧誘を諦めていなかった飛段が女に詰め寄る。忍でもない女がそんな宗教に入会したら命はないんじゃなかろうか。リーダーも同様のことを察したようで、制止した。

「待て。この女はデイダラと組ませることにする。どうやら顔見知りのようだからな」
「っ……!?」

リーダーと目が合い、驚いて逸らしてしまった。何故バレてるんだ…!?咄嗟に女の顔を見たが、無表情のままだ。一体何を考えているのかわかったもんじゃねえ。リーダーの言葉に騒ぎ出すのは、もちろん飛段だ。

「はぁ!?顔見知りってどういう事だよ……あぁわかった、どうせ遊郭で知り合ったんだろ。椿が遊女だったらそれしかねえもんなー?」
「う、うるせえな!言っておくが、一回会ったことがあるだけだ、うん」

一回身体の関係を持ちました、の省略だがそこまで言う必要はないだろう。リーダーは決まりだな、と口にすると女に暁の事をざっくりと説明し出した。
オイラは女の身体を改めて眺めた。そういや反応こそは皆無だったが、胸はあったんだよな。つまらないながらに、締まりもいいしなかなかの気持ち良さだったと思う。色も白いし華奢だし、顔や身体はドタイプなんだが……何せ、反応がない。それが最大の欠点だろう。よく遊女が務まっていたと思う。膣の締まりが売りだったのかもしれないが。

「よろしく、デイダラ」
「お、おう……」

説明を受けた女が、オイラに挨拶してきた。いきなり呼び捨てかよ、と思ったがどうでもいいかと突っ込まないでおいた。
そういやコイツはオイラが客として行った事を覚えているんだろうか。一日何人も相手してるんだし覚えてないか。

「ああそうだ、部屋の空きがないからデイダラと相部屋で頼む」
「はぁ!?冗談だろ、うん!」

どうやら本気のようで、リーダーはオイラの反論を聞くまでもなく頼んだぞ、と言い捨てると早々に瞬身でいなくなった。つくづく腹立つリーダーだ、うん。

「それじゃ、後はデイダラに任せて解散しましょう」

小南の一言で一斉に解散となった。それにしてもあんなに喚いてた飛段がよく納得したな、と横目で飛段を見た。

「ああそうだ、お前と組ませることになっても時々は椿を借りに行くからな!」

物かよ、と突っ込みたかったが面倒なのでスルーした。どうやら時々は性欲処理に使わせろという事らしい。オイラには関係ないから構わないが、飛段が部屋に来ると言うのは不快だ。いや、待て。飛段と穴兄弟になるのは断固拒否だな、うん。

「……仕方ねえ、じゃあ部屋に行くか。うん」

特に反応のない女より先に歩き、オイラは部屋まで向かった。



To be continued..




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