マイリトルガール(イタチ)

 

「……椿、なのか?」

普段は感情を表に出す事はそうないのだが、予想外の事に驚きすぎて硬直してしまった。椿は青春真っ盛りな年頃の俺の彼女だ。俺と同じくらいの年齢である筈なのだが、目の前にいるのはどう見たって幼稚園児くらいの小さな子ども。くりくりした瞳で俺を見上げるその子どもは、確かに椿と名乗った。

「そうだよ、椿だよ」

にこにこ笑顔を見せる子ども……椿は可愛い以外の言葉が見つからない。正直そこらにいる子どもの中でも群を抜いて抜群に可愛いと思う。俺が椿を好きだからフィルターがかかってると?そういう事ではない。兎に角可愛いそのものだ。そもそも俺は子どもが好きだし、それが大好きな椿とあらば尚の事。しかし問題は、何故こんな姿になってしまったのかという事だろう。

「椿、何故そんなに小さくなってしまったんだ?」
「え?わたしはまえから、このすがたのままだよ?」

きょとんとした顔で首を傾げる椿が可愛すぎて悶えそうだ。そんな姿は絶対誰にも見せたくはないが。柄にもなく困っていると、サソリが現れた。

「あーあの薬、お前が飲んじまったのか」
「あの薬……?どういうことだ」
「今開発中の薬品でな、ミクロサイズにして消滅させるっつーもんなんだが、失敗作だったんだ。腹が立ってそこらの机に置きっぱなしにしちまったんだよ。一見ラムネみてえだから食い意地張った椿が食っちまったんだな」
「……貴様、何故そんな危険な薬を放置した?椿に何かあったらどうするつもりだったんだ」

無意識に写輪眼を開眼しながら問うと、サソリは気まずそうに目を逸らした。

「平気だ、失敗作だからな。一時間もすれば元に戻る。だからそんなに怒るな」
「これが怒らずにいられるか……!って、おい」

サソリは逃げるように去っていった。なんて奴だ、椿を危険な目に遭わせるなんて信じられん。まぁ身体に害がなさそうだし、一時間程度で戻るのなら良かった。しかしこんなに可愛い椿を居間にいさせたら危険が及ぶ事は目に見えている。(主に飛段、デイダラ辺りに弄られるだろう)そんなことがあってはならないと、俺は自室に椿を連れて行った。普段から俺の部屋に来ることはあるが、こんなに小さい子どもの姿だと悪いことをしている気分にさせられる。
部屋に着くと、椿はきゃっきゃとベッドへダイブした。普段ならそのベッドに押し倒してあんな事やこんな事をするところだが、子ども相手にそんなことをする訳にはいかない。我に帰れと頭を振り、椿を見つめた。

「椿、腹が空いてはいないか」
「おなかすいたー!おやつがたべたいな!」

満面の笑みで強請られては断る理由もない。俺は自分の好物である団子を取り出すと、椿に差し出した。椿はすぐに頬張り、美味しいと大喜びした。俺としたことが無意識にも頬が緩んでいる事に気がつき、焦って表情を戻した。いや、椿の前だから別に頬が緩んでいようが構わないか。

「椿は本当にかわいいな」
「えへへー」

褒めれば天使のような笑顔を浮かべる椿を、ずっと見ていたい衝動に駆られる。すると団子を食べ終えた椿は、俺のところへ歩いてきては向かい合わせになるよう膝の上に座った。何だこの可愛い生き物は……!と何度目かの悶えたくなる衝動を必死で堪える。

「ねえ、たかいたかーいってして?」
「ぶっ……」

小首を傾げ、くりくりの瞳に上目遣いでおねだりされては敵わない。危うく鼻血が出るところだった。嫌だろう、鼻血を吹き出すうちはイタチなんて。椿にも嫌われるレベルではなかろうか。
俺は笑顔で了承し、椿を軽々と抱き上げるとお望み通り「たかいたかーい」をした。きゃっきゃと喜ぶ椿を見て、昔サスケにもしたなと過去を思い出す。いや、何より可愛すぎて俺の心臓が持つだろうか。

「きゃーっ、たのしいー!」
「そうか、もう一回してやろう」

繰り返すと再びきゃっきゃと喜ぶ椿。何度かしてやると満足したようで、俺の膝の上で落ち着いた。余程楽しかったようで、ぎゅっと抱きついてきた。つい俺も抱きしめ返してしまう。こんなに小さな姿だが、ふわりと漂う甘い香りにやはり椿なんだなと実感した。
すると突如、ボンっと煙が椿を覆った。何事かと驚いたが、煙が消えると俺の膝の上にいたのは普段通りの椿だった。どうやらもう一時間経過していたらしい。俺の膝の上にいる椿は事態が読み込めておらず、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに焦っていた。

「えっ、イタチ!?私、何でイタチの膝の上に……!?」
「そうか、先程までの記憶はないのだな」
「え……?」
「その姿に戻ったのなら、もう我慢する必要もないな。団子はあげてしまったし、今度は椿を食べさせてもらうとしよう」
「へ?ちょっとそれどういう……!?」

膝の上に乗ったままの椿を、ひょいと抱き上げるとベッドまで連れて行き、そのまま押し倒した。

「椿が余りに可愛すぎたからな……今日は余裕がないが、許してくれ」
「ちょっと意味がわからな…、ん、」

椿が何か言う前に口づけする事で口を塞いだ。

子どもの椿も可愛かったが、やはり俺の下で鳴く椿が一番可愛いなとほくそ笑んだ。



fin




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