animals2



「や…も…無理…」

「僕も無理だよ。気持ち良過ぎて止まんない」

正面からなまえを貫く。
口では嫌々言う癖に、粘膜は納まっている僕の中心に絡みついて嬉しそうに締めつけてくる。
しかも、繋ぎ目からは止め処なく溢れてくる蜜。
雌としての本能は、僕を求めている事は明白だった。

人も動物なんだ。
どれだけ理性で取り繕うとしても、それは紛れも無い真実で。
皆、それを隠して生きているだけさ。

だって、そうだろう?

本性が知られてしまえば、獰猛な獣なんて事がバレてしまえば狩りに支障をきたす。

一見狂って暴れている様に見える野獣だって、本当は綿密な計算をして狩りを行っている。
標的をじっくりと観察して、動きを把握し隙を見つけて弱い所に全力で攻撃を仕掛けて仕留める。
そんな風に苦労してやっと手に入れた獲物は大切に自分の巣穴の奥深くにしまわなきゃ。
誰の目にも触れない様に、自分だけでじっくりと味わい、骨の髄まで喰らい尽くす為に。

「なまえ…愛してる…なまえ…」

譫言の様に睦言を呟きながら獣が食事の準備をするみたいに、肉を柔らかく解す様に舌で首筋を何度もなぞった。

そこでとうとう隠していた牙を剥く。
吸血鬼が血を吸う様なそんな上品なものではなくて、骨まで砕く様な禍々しさを孕んで食らいついた。

「ひっ…!」

その柔らかくキメの細かい白い肌に歯を立てれば、君は息を飲む。
薄い皮膜に段々と食い込んでいく感触と、君の鼓動が速くなっていく感覚が心地よくて力を強める。
視線を上げれば瞳に映るのは恐怖に怯えるなまえの姿。それはこの上なく甘美で、恍惚に腰が震える。

「あぁっ…!はぁっ…!」

「本当に可愛い…このままずっとここにいて?僕だけのなまえ…」

最奥を先端で何度も押し潰しながら、全身に舌を這わせて噛み痕をつける。
彼女は最早、言葉にならない悲鳴にも似た喘ぎ声を上げるだけ。そのだらしなく開いた口からは涎が垂れ、綺麗な顔はぐちゃぐちゃになっていた。

それは、この上なく興奮する瞬間で。

なまえといる時は
なまえを抱いている時だけは
御曹司でもなんでもない、ただの僕になる。

…いや、違うな。

"僕"という人格からすら解放される。

全てを忘れさせてくれるんだ。

頭が真っ白になる位に。
その解放感があまりに気持ち良くて癖になる。
そして、夢中で愛しい女の身体を貪った。


「もっと…なまえ…もっと僕に頂戴?」

胎内に一度熱を放った位じゃ治るどころか更に昂るだけだ。
毎晩、夜明けまで抱いても、飢えは満たされなくてもっともっとと求めてしまう。
その白い肌に紅くマーキングをして噛み跡を付けて、子宮に欲望を吐き出す。そして、これ以上ない位に僕の白濁にまみれさせて、匂いをつけないと気が済まない。

「…おあいて…これ以上は…お願いだから…」

何度も達せられて、涙ながらに僕に懇願する君の表情がたまらない。

「駄目。逃がさない」

もう力なんて入らない癖に、身体を捩って逃げようとする君を抑え込む。
 
そのまま、まだ硬さを失わない肉杭を奥まで押し付けて、再び腰を動かし始めた。
 


もし、また彼女が逃げてしまう事があったら…?

そんな事決まってるじゃないか。

何度でも捕まえてみせる。

そして、今度は逃げ出せない様にもっと深くに閉じ込めるだけさ。

 

 
2015.9.17

天野屋 遥か



 

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