Faith



「ちょっと…おあいて…!止めて!」

連絡もなく私のマンションに現れた彼。
部屋へ通すといきなり壁に押し付けられて唇を塞がれた。

「んんっ…」

強く抱き締められて、深く舌を侵入させられる。強引で、だけども優しく口腔内を撫でるキスは甘くて身体の力が段々と抜けていく。

「やだぁ…」

乱暴にベッドに押し倒されて、組み敷かれた。
身体を捩って拒否しようとするも、男性の力に敵うわけもなくて、するすると服はほどかれてしまう。

「なまえ」

低く欲望を帯びた声で囁かれると、抵抗心が薄れてそれだけで反応してしまう自分。
呼ばれるままに顔を上げれば、鋭く射抜く様な眼差しで見つめる彼の端正な顔が間近にあり、ぐっと心臓が締め付けられた。

おあいては私の幼馴染だ。
家は大きな会社を経営しているその御曹司。
けれども、そんな事を鼻にかける事もなく、彼はいつも真面目で何に対しても一生懸命で周囲からの人望が厚かった。
そんな貴方は自慢の幼馴染で、こんな関係になるまではずっと好意を抱いていた。
平凡なOLと大会社の社長とでは身分が違い過ぎるから、さすがに想いは叶うなんて夢は見ていなかったけれど…

「はぁ……ん…」

おあいては荒々しく剥き出しになった素肌に吸い付いて紅い印を刻む。
胸の双丘は、強く掴まれて形を変えていた。

「やぁっ…ダメ…!」

腰の中に突き立てられた指は縦横無尽に暴れる。
同時に菊門にも舌を埋め込まれ、後ろからも刺激を与えられた。

まるで、飢えた獣が捕えた動物を喰いつくす様に私の身体の隅々までを嬲っていく。
抗う術もなく、私はただ身体を開く事しか出来なかった。

ねぇ、どうして?
貴方が何でこんな事するの?
皆の憧れの完璧な王子様なのに…
それに、婚約者がちゃんといるでしょ?
美人で貴方に釣り合う素晴らしい女性が。

「んぁっ…おあいて…」

下から執拗に肉棒で突き上げられて喘がされる。
ベッドはギシギシと音を立てて、その激しさを物語っていた。
衝撃により内側から麻痺していく身体。

涙が溢れて視界がぼやけ、肌が触れ合う位に傍にいるのに貴方の顔が見えない。

…いいえ、違う。
見たくなかった。
私を抱いている貴方は、とても嬉しそうに嗤ってるから。
まるで、子供が蟻の行列を見つけて踏み潰して遊ぶような残酷な遊戯を楽しんでる表情。


ねぇ、どこで間違っちゃったんだろうね?

薔薇色の頬をした頃から一緒にいたのに…
小さい頃、おあいてのお母さんが亡くなった時もずっと2人で一緒に泣いていた。
その後、時が経つにつれ、お互いの環境が段々と変わって行ってもそれでも結びつきは強かった。
いつも、嬉しい事があると真っ先に私に教えてくれた貴方の笑顔は未だに瞼に焼き付いていて。

手の届かない遠い世界にいってしまったとしても、私にとっては大切な…


「うぁっ…あぁ…あっ…」

私達の繋ぎ目が融け合っていく、心は哀しみで一杯なのに身体は快感に酔いしれている。

いつからだろう?
こんな風に身体だけを結ぶ様になったのは…

あれは、彼が社長の地位をお父さんから引き継いで少し経った頃だろうか。
ある日、突然私の家にやってきた彼に今日と同じ様に突然唇を奪われたのが全ての始まりだった。
それ以来、もう1年以上この関係は続いている。

「あんっ…はぁっん」

腰を強く掴まれて、最奥に大きな衝撃が何度も走る。
彼は一言も睦言を囁くことなく、私を追い詰めた。

「あぁっ…!やだぁ…!」

彼に跨がったまま、身体が大きく跳ねて中にいる彼を締め付ける。

「っ…」

おあいての吐息と共に、胎内にじわりと熱が広がった。
項垂れた私の瞳から零れた涙は彼の肌に染みを作った。



「…酷いよ…どうして?」

行為の後、泣きながら震える声で問いかける。
いつもなら、その背中は何も言わずに部屋を後にするのに…

今日だけは違った。

私の横に身体を沈めて
黙って私の頬を撫でる貴方の指先。
長くて節の張った指は男性特有の美しさ。
温かくて大きな手がそっと包み込む。

正面から見据える大きな瞳は慈しむ様に細められ、口許には笑みが浮かんでいる。
皆の憧れの優しくて紳士的な笑顔のはずなのに…
何か得体の知れないものが背後に忍び寄る気配を感じた。

「なまえ…」

ゆっくりと彼の唇が開いて言葉が紡がれる。

「お前を汚すのが何よりの喜びなんだ」



2015.8.20
天野屋 遥か




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